2014年12月3日水曜日

図版の単価と予算立て

理科の仕事をしていると,図版が必ずつきまといます。

その図版について,どれくらいの単価設定をしたらよいのでしょうか。

もちろん予算というのもありますし,実際にイラストレーターさんが作業に費やす時間というのもあります。

私がこの業界に入ったころは,まだロットリングで手描きされているイラストレーターさんもいましたが,AdobeのIllustratorも普及し始め,ベジェデータでの図版作成が急激に増え始めていました。

あれから15年も経ち,イラストレーターさんもIllustratorの操作も慣れ,さらに素材となるパーツもたくさん蓄えられているようで,かなりの短時間で作図ができるようになった印象です。

とはいえ,いくらパーツ流用がきくからといって,劇的に制作時間が短くなるわけではなく,時間がかかるものはやっぱり時間がかかります。

そのため,予算がないからといって,適正でない価格設定は,やはりいかがなものかとも思います。

私の場合は,素人ながら自分である程度までは作図できるので,私だったらこれくらいの時間で作成できるかな…という目安がもてます。

そのため,その目安をもとに予算立てを行います。


では,実際に,1点作図するのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか。

試しに,簡単な図版の例として,回路図と試験管を作ってみました。

まずは回路図です。


約3分40秒で作れました。


続いて,試験管です。


約6分20秒で作れました。

とりあえず,サイズ等の制限なしに適当に作りましたが,サイズの指定があったり文字があったりしても,5分〜10分でできるでしょう。

こんな感じでイメージして,私の場合は15分刻みで,この図はどれくらいの時間でできそうかな…という想定をし,単価設定をします。

なので,この回路図と試験管であれば,15分の単価で予算立てをいたします。

皆さんはいかがでしょうか。
参考になれば幸いです。

2014年11月15日土曜日

立方体の切断で空間把握力を鍛える

小学校の教科書改訂を来年に控え,小学生向け教材の執筆・編集等に関わっている方は,忙しい時期を過ごしていると思います。

私は…といいますと,それほど小学校教材の制作に携わっていないので,8月頃までは忙しかったのもの,今はやや落ち着いています。

しかしながら,周りの小学生向け教材の編集に携わっている人の多くは,まだまだ忙しい時期を過ごしているようです。

皆様,「無理をせずに」といいたいところですが,改訂期はどうしても無理をしなければならない状況になると思いますので,体調管理だけはくれぐれも怠らないようにしてください。


さて,私の性格上,仕事が忙しくなればなるほど,やりたいことが増えてきてしまい,仕事時間以外でも無理をしてしまいます。

理科や数学の仕事をしていると,「空間把握力」というキーワードが必ず出てきます。
しかし,紙の教材では,どうしても限界を感じずにはいられません。

何か自分にできないことはないかなぁ…とずっと考えていたのですが,ふと仕事が落ち着いてきた9月頃,「立方体の切断」を絡めてできそうなアイデアが浮かびました。

アイデアが浮かんだが吉日,寝る時間を削りまくって,一気にコンテンツを作ってみました。

動画を用いて,「立方体の切断」を勉強するサイトです。
https://sites.google.com/site/nuchancube/home

よかったら,覗いてみてください。

「立方体の切断の3Dコンテンツ」や「立方体の切断のペーパークラフト」もあります。

2014年4月2日水曜日

化学式用 英数字フォント

2月末に公開した「計算式用 英数字フォント」に続き,Wordで使える「化学式用 英数字フォント」を作成しました。
https://sites.google.com/site/fontforchemical/

商品として見栄えの質が高い化学系書籍や問題集などをつくるのであれば,InDesignなどのDTPソフトを使用すれば,綺麗な化学式や化学反応式は表現できます。

また,最近はInDesignで原稿を書かれる教材系のライターさんや教材系の編集者さんも一部いますので,著者レベルから間違いのない綺麗な化学式や化学反応式を表現される方もいます。しかし,そのような稀な方は,全体として1%にも満たないでしょう。

もちろん,教育現場である学校の先生や塾・予備校の先生にいたっては,InDesignを使用している人はほぼ皆無だと思われます。

私が知る限りですと,パソコンを使用してテストやプリントを作ったり,出版社からの依頼で原稿を書かれたりしている先生方の多くは,Windowsに標準搭載のフォントを用いて,Wordや一太郎の基本機能だけで原稿を書かれています。それが一般的な感覚でしょう。

もしかしたら,Wordで化学式を表現するためのアドオンを入れている方もいるかも知れませんが,現状出会ったことがございません。

そんな環境のなか,ちょこっとでも普段の使い勝手のまま,Wordで化学式や化学反応式を表現できる何かがあればいいのになぁ…と,かつて思ったことがありました。

そんな中,計算式用 英数字フォント を作成し,これを応用すれば化学式用にも展開できるかも…と思い,化学式用 英数字フォント を作成してみました。

完璧なものが出来たとはいえませんが,それでも「Wordの基本機能でそこそこ綺麗に化学式や化学反応式,示性式や構造式の一部を表現する」という目的は達成できたかな…といったところです。

複雑な構造式は表現できませんが,ご興味のある方はご利用してみていただければ幸いです。

2014年3月11日火曜日

環境にないフォント

最近,フォント環境に関する話題を耳にする機会がちらほらあったので,編集現場とDTP現場やデザイン現場におけるフォントについて,書いてみようと思います。

誌面デザインをする際に,InDesingデータをデザイナーに渡してデザイン案を出してもらうというケースがあります。その際に,本文フォントがすべてゴシック体に置き換わる場合があります。

この原因は,基本的にフォントがMac環境(Windowsでも同じです)に無いと,デフォルトのフォント(小塚とかヒラギノとか)に置き換えられることによります。


しかし,よく編集現場で,「一般的なフォントしか使っていないのに,どうしてフォントが無いのだろう」という声も聞きます。

このケースの多くが,合成フォントによる影響だと想像できます。

合成フォントを設定したInDesignデータを開くと,合成フォントに利用されたフォントが1つでも無いと,その合成フォントがすべてデフォルトに置き換えられます。

例えば,「リュウミンR,新ゴR,ヒラギノ角ゴW3」を使って合成フォントを作ったとします。
最も使われる標準のフォントですが,最近ではWindowsでDTPを行っているところもあります。
しかしWindowsでは,ヒラギノが標準搭載されていないので,この合成フォントは環境に無いフォントとなり,すべてデフォルトで置き換えられてしまいます。

もちろん,標準的でないフォントを用いて合成フォントを作っていると,こうなるケースはさらに増えます。


また,同じ名前でも,モリサワのフォントではStd,Pro,Pro5,Pro6,Pro6Nなどのバージョンがあるので,これらも該当するバージョンを持っていないと,環境に無いフォントとみなされてしまいます。

ところで,最近の若い編集者は,モリサワパスポートなどの年間契約しか知らない人も多いのですが,パスポートを導入していない人も多いということを,まずは押さえておくべきでしょう。

そもそもフォントは買い切りが基本で,パスポートは比較的新しいサービスです。
モリサワの例でいうと,モリサワパスポートが開始したのは2005年からです。
それ以前は,みんな必要なフォントをMacの台数分購入していました。金額にすればかなりの額だったと思います。

フォントの歴史を見れば,OCFからCIDになり,そして2002年にOTFが発売となりました。
写研などの汎用機からMacに切り替え,フォントもOCF→CIDと高い費用を捻出して買い足してきたDTP各社も,InDesign+OTFが主流となると,再度費用を捻出してOTFをを買い揃えました。

そして2002年〜2004年にかけてOTFをMacの台数分購入したのに,いくら年間5万円で全フォント使用できるといっても日常使用するフォントは限られているわけで,滅多に使用しない多くのフォントのために,わざわざお金を毎年払うというのは理にかないません。

(感覚的には,購入済みのフォントに対して,わざわざお金を払い続けているとなるでしょう。)

しかし2005年以降,Macの台数を増やす際であれば,必要なフォントを一式購入するよりもパスポートのほうがハードルが低いので,パスポートにしようというようになってきました。
とはいえ,Macの台数が変わっていないのであれば,パスポートにする意味は皆無です。

なお,個人のデザイナーやイラストレーターさんなどは,投資としてOTFを初期から導入する人もいましたが,しばらくはOCFやCIDを使い続けている人も多々いました。

今ではOTFを持っている個人のデザイナーやイラストレーターさんも多くいますが,いまだにOCFを使用している人もいると聞きます。

以上を踏まえると,たとえば「リュウミンR,新ゴR」のみを使っているといっても,何も知らずにパスポートに入っている「リュウミンR Pro6,新ゴR Pro6」を使っており,そのデータを「リュウミンR Pro,新ゴR Pro」しか持っていないデザイナーさんに渡せば,バージョンが異なるのでデフォルトのゴシック体に置き換わってしまいます。
(もちろん,気を利かせて変換してくださる方もいらっしゃいます。)


何も知らずに現状の環境だけを学んで仕事をしていると,このようなケースに遭遇して二度手間,三度手間となってしまいます。しかし歴史を少し知っておくだけで,効率よく,そして気分よく,よりよいものが仕上がっていくと思います。

2014年2月27日木曜日

計算式用 英数字フォント

さて,久し振りの投稿です。
前回の投稿が昨年の11月21日なので,かれこれ3か月振りです。

さて,今は理科だけでなく,数学の編集もしております。
理科の場合はWordを使用した原稿が多いのですが,数学は手書きの人も多いですね。

Wordで計算式を入力するのはなかなか大変なのと,入力に気を取られて原稿を間違うリスクも考えると,手書きで書いたほうがよいというのもすごく実感しております。

とはいっても,Wordで綺麗に簡単に計算式を入力したいなという声は,数学の編集をしているとときどき耳に届きますし,私のようにパソコンで原稿を書くほうが好きなタイプにとっては,何とかして綺麗な数式を入力してやろうと,多少頑張ってしまう場合もございます。

でも,どうしたら簡単に,そして綺麗に計算式を入力できないものか。
そうだ,あんなフォントがあったら,絶対綺麗に入力できる。
とはいっても,そんなフォントはあるわけ無いしなぁ…ということで,オリジナルのフォントをデザインし,そしてフォントにしてしまいました。

以下のサイトで配布しているので,よければご利用してみてください。
「計算式用 英数字フォント」
https://sites.google.com/site/fontforword/