2009年12月28日月曜日

知識は中学以上に必要

本日は仕事納めでした。

1年間あっという間でしたが,特に12月はやることが多く,あっという間に過ぎ去ってしまったような気がします。

仕事にプライベートにあっちこっちと飛び回り,企画会議の資料作りや発表のリハーサル,そしていろいろな人と忘年会で飲む。

そんなこんなでなかなか時間が取れず,やっと昨日から年賀状の作成に取り掛かることができました。

地元へも帰らなければならないので,明日中には何とか年賀状の作成を終えようかと思っております。


さて,そんな忙しい日常の中,理科教材制作上で気になることも,やはり出てきております。

今は,中学校の仕事がメインですが,中学校の仕事といえど,知識は中学校内容以上に持ち合わせていなければなりません。

つまり,中学校の仕事であれば,最低でも高校レベルの知識を持って原稿作成や校正をするべきでしょう。

しかしながら,不思議なことに,中学校の仕事をしていると,中学校レベルの知識で校正をしてしまっているということに気づきました。

高校の仕事をしているときは当たり前のように気づく間違いも,中学校の仕事では意外と気づかないのです。不思議です。

例えば,「反射」の話を例にあげます。

高校では,まばたき反射は中脳を,唾液の分泌は延髄をそれぞれ反射中枢とすることを習います。

しかし中学では,脊髄反射しか習いません。

つまり,中学では,目などの顔に近い部位を反射の例として載せることはなく,熱いものに指が触れたときなどの例のみを示します。

そんなことは分かっているのに,中学の教材やテストではそこまでの内容に触れないので,反射を示す模式図の感覚器官などで目や耳などが例として載っていても,意外と気づかないのです。

校正をするときは,すべてに疑いを持って見るべきです。

しかしその際には,その校正している内容以上の知識を持って校正を行うようにしていくべきでしょう。

特に教材では,それを使用する生徒自身に,正誤の判断基準がない可能性が多々ありますので,より繊細な注意が必要だと思います。

2009年12月21日月曜日

firestrage

先週も,怒涛のように時間ばかりが過ぎていきました。

長い会議に日帰り出張,飲み会に使用での遠出。それらの影響で実務をやる時間が取れず,日曜日も仕事で潰れる…。

仕事納めまで,まだまだ怒涛の忙しさが続きます。


さて,そんな更新が滞りがちな毎日ですが,今日は制作に関する話題として,ファイル転送サービスについて記します。


最近は大容量ファイルが送受信できるメールサーバも増えましたし,フリーメールとして有名なGmailでは,1回に20MBもの容量のデータを送信することができます。

しかし,そんな大容量データをやり取りする時代になっても,企業では容量制限をしているところが多々あります。

そんな私の勤めている会社でも,1回のメール送受信容量は最大5MBという制限がかけられており,PDFデータを大量にやり取りする昨今では,仕事に大きな支障をきたしております。

そんなときに便利なのが,ファイル転送サービスと呼ばれるものです。

ファイルをサーバにアップしておき,そのサーバのアドレス等を送信先に連絡して,送信先の人がサーバからダウンロードするという方式です。

これならば,メールはテキストデータだけになりますので,容量が大きくなることはありません。

無料で提供されているサービスも多く,宅ふぁいる便などが有名でしょう。

しかし,宅ふぁいる便の送信できる容量は,通常会員で50MB,プレミアム会員で100MBまでです。

仕事で50MBを超えるデータを送信することはめったにありませんが,ないとも限りません。

そこで,インターネットで「ファイル転送サービス」などで検索してみると,100MBを超えるものもあることがわかります。

特に,1回に2GBもの大容量のファイルを送信できるサービスもあり,驚きます。

そんなサービスの中で私が重宝して使用しているのが,firestrage(http://firestorage.jp/)です。

使い勝手がよく,ダウンロードする際の手間も,メールに貼り付けたURLをクリックするだけと簡単です。

データ容量が大きすぎてメールに添付できず,データをばらして送信したり,CD-Rなどに保存して宅配便で送ったりという話を今でも聞きます。

しかし,現在のブロードバンド環境は,少し探せばいろいろな手段があります。

ちょこっと探す手間をかければ,その先の制作期間がぐっと短くもなります。

そのようなわけで,試しにfirestrageでも使用してみてはいかがでしょうか。

2009年12月13日日曜日

Google日本語入力

Googleが日本語入力システムのbeta版,「Google日本語入力」を発表しました。
フリーの日本語入力システムですが,Googleが作ったものなので期待が持てます。
インターネット上でも絶賛の嵐です。
というわけで,会社のPCにインストールしてみて,実際の業務で使用してみました。
使った印象は,「素晴らしい!」の一言です。
Googleの検索などで蓄積された語彙が変換候補に含まれているため,IMEでは辞書登録しなければ変換されなかった用語なども,変換候補にあがってきます。
100%ではありませんが,この選択候補が豊富なことが,仕事ではかなり有利にはたらくことを実感しました。
IMEでは,長めの用語などを入力している際に,間違えて入力してしまったり,間違えて変換してしまったりして,そのまま入稿ということがこれまでときどきありました。
しかし,数文字入力した段階で,その用語が選択候補に出てくるので,それを選択すれば誤入力の心配がなくなります。
これは本当に助かります。
誤字・脱字のミスは,この「Google日本語入力」によって減る確率が上がる気がしてきました。
お勧めです!!

2009年12月10日木曜日

漢字の閉じ開き

2009年も,あと1か月を切りました。

忘年会の季節です。

これから呑む機会が山ほどあり,残業ができない日々が増えます。

そのため,忘年会のない日に仕事を固め打ちしなければならず,なかなか大変です。

というわけで,明日は忘年会。

来週は2度,再来週は今のところ1回ですが,クリスマスもあるのでどうなることやら…。

ブログの更新が最近滞りがちですが,さらに滞りがちになりそうです。

がんばらなければ…。


さて,今日は,漢字の閉じ開きについて少しだけ。


媒体によって漢字の閉じ開きをどうするかという基準は様々で,学参にも独特のルールがあります。

基本的には出版社ごとにある程度基準があるので,それにのっとって制作していると思われます。

しかし学参には,教科書準拠というものがあり,教科書準拠の場合は,各教科書会社にあわせて漢字の閉じ開きを統一します。

さて,そうはいっても,ある程度の基準はあるでしょう。

中学生教材なら,とりあえずは常用漢字以外はひらがな,またはカタカナにすることです。

しかし,用語については微妙です。

たとえば,哺乳類の場合「哺」は常用外なので,上記のルールにのっとると「ほ乳類」と表記することとなります。

しかし中学生教材では,「ホニュウ類」と表記されているのを多くみかけます。

同様に「爬虫類」も,「は虫類」ではなく「ハチュウ類」が圧倒的に多くみられます。

これはやはり,各前者(ほ乳類・は虫類)よりも各後者(ホニュウ類・ハチュウ類)のほうが,生徒にとって読みやすいなどの理由からでしょう。

しかし個人的には,「哺乳類」「爬虫類」とし,ルビを振らせたいと思っています。

小学生ならともかく,中学生であれば,常用外であろうと,それなりの漢字を読ませてもよいのではないかと思っております。

将来的にどうせ読むことになるのであれば,学参であろうとなかろうと,専門用語については最初から漢字表記に振れさせたほうがよいのではないかと,私は考えます。


さて,このような用語が常用漢字かどうかではなく,意味的な観点であえて開いているという漢字もあります。

「体」「働く」「持つ」などです。

「体」は人偏なので,ヒトのからだが想像されます。
そのため,ヒト以外は「からだ」と開いているものを多くみかけます。

「働く」も人偏なので,同じくヒトが想像されます。
そのため,ヒト以外の働きについては「はたらく」と開いているものを多くみかけます。

「持つ」は手偏なので,ヒトの手での動作が想像されます。
そこで,「機能を持っている」などのヒト意外の動作における「持つ」の場合,開いて「もつ」になっているものが多くみられます。


これらの考え方が本当なのかどうなのか微妙ですが,教育的観点から考えて,それが本当によいのかどうか,正直なところ疑問です。

しかし,郷に入っては郷に従えではないですが,とりあえず学参における多数派ルールにあわせているのが現状です。



このような学参における漢字の閉じ開きには様々ありますので,ここではすべて挙げ切れません。

しかしながら,リストにするしないは別としても,学参の中では一般に開くものについて,頭に入れておく必要はあるでしょう。


そのためにも,まずは教科書を調べてみる。そして,体に染み込むまで校正を繰り返したり,校正をしながらリストを作ったりするのが近道でしょう。

2009年12月6日日曜日

プリントアウトして確認

現在は,原稿のほとんどがMS WordなどのPCデータで上がってきます。

理科教材の場合は図版も多いので,プリントアウトしたものに図版が貼られて原稿が上がってくることもありますが,図版もWord上に貼り付けられて原稿が上がってくることも多々あります。

そんなとき,原稿チェックや修正をPC上で行ってしまうことも多々あるでしょう。

しかし,パソコンの画面でチェックするのは,プリントアウトして紙面上でチェックするのに比べて,誤字脱字などのミスを見逃す確率が大きくなってしまうのは私だけでしょうか。

また,パソコン上で原稿を修正していしまうと,紙面上で手書きで修正を入れている場合に比べて,変換ミスをおかすなどの新たなミスをしてしまうこともあります。

これは,紙面上でチェックしているときは客観的に原稿を見られるのに対し,パソコン上では客観的になれないからかもしれません。

それではパソコン上でチェックするのをやめればよいかというと,よりよい原稿にしていこうとすると,なかなか手書きチェックだけでは修正しきれない場合もあります。

そうなると,やっぱりパソコン上である程度の修正をする必要があります。

そこで,パソコン上で原稿修正をしっかり行ったと思った場合であっても,最終的にはプリントアウトをして,再度,紙面上でチェックを行えばよいのです。

このときのチェックは軽い素読み程度でも良いかもしれません。

いずれにしても,客観的に原稿を見るという行動をしないと,意外とミスを拾いきれなくなります。

初校でももちろん修正はできるから,ここで一手間かけなくてもよいと思う方もいるかもしれませんが,チェックをおろそかにしたがために,そこで拾えたかもしれないミスを最後まで拾えずに校了してしまわないとも言い切れません。

やはり,できる危機管理はやれるときにやっておくべきだと思います。



さて,補足ですが,上記の文章を入力中,「確率」を「確立」と誤変換しており,危うく見逃すところでしたので,リストアップしておきます。

2009年12月1日火曜日

同音異義語

昨日に引き続き,漢字関する話題です。

本日,小学校教材の企画を立てているときに,「てこのつり合い」のところで,「支点」が出てきました。

そこでふと思い出しました。

そういえば,以前「支点」が「支店」になっている校正紙を見たことがあるなぁ…と。

さすがに気づきましたが,字面が何となく似ているため,組版入力の方が気づかずに初校が上がってくるということがあります。

例を挙げたらいろいろとありますので,今まで出てきた同音異義語などの間違いについては,思い出したらその都度取り上げていこうと思います。

また,リストアップしておくと,その字面を見たときに目が留まります。

時間を作ってリストを作りたいものです。

さて,いま思い出したものを,少しだけ上げておきましょう。

小数⇔少数
重要⇔重量
移行⇔移項

と,3つ上げて見ましたが,やはりすぐには出てきませんね。

リストアップの必要性を改めて感じました。

2009年11月30日月曜日

形と読みが似ている漢字

理科教材にときどき出てくる材料に,発泡スチロールや発泡ポリスチレンという用語があります。

この「発泡」を「発砲」とされている誤字をよく見かけ,つい今日も,ある新聞を読んでいたところ,その記事の中の「発泡ポリスチレン」が,すべて「発砲ポリスチレン」になっていました。

漢字の形が似ていて読みが同じ,または読みが似ているという文字は,校正漏れをしやすい典型です。

しかし,中学理科にしぼれば,そのような形と読みが似ている漢字というのは,それほど多くありません。

ですので,まずはそのような校正漏れしやすい文字というのをリストアップしておくとよいかと思います。

そういう私も,現段階では用意できておりませんので,今後用意していきたいと思っております。

さて,そんな漢字の中ですぐに思いつくものといえば,先に述べた「発泡と発砲」が私の中では筆頭ですが,次点として「物質と物資」というのがあります。

これは変換ミスではなく,入力ミスの可能性が高いですね。

特に組版さんや入力さんは,内容を理解せずに原稿通りに入力するので,手書き文字の「質」が「資」に見えてしまう可能性もあります。

また,そのように間違えて上がってきたものを私たちが原稿と照合する際に,頭の中で「物質」だと思いこんで照合してしまうと,「資」が「質」に見えてしまう確率も高くなりますので,意識して注意する必要があります。

このような埋もれてしまいがちなものは,何度校正しても見逃してしまいますので,リストアップは必須でしょう。

さて,このほかにも,今ブログを書いていて出てきた「確率」も「確立」と間違っているのを校正段階で見かけますし,「並行」と「平行」のミスもときどき見かけますので,あわせてご紹介いたします。

2009年11月25日水曜日

写研データのコンバート

新年度商品の製作は一段落し,現在は企画立案・企画会議などの日々が続いております。

なかなか企画も煮詰まらず,何度も何度も検討をくり返しては練り直し,直した企画を会議で叩いて,さらに練り直す。

時間はあっという間に過ぎて行きます。


さて,そんな新企画とは関係なく,教科書改訂になれば,現在あるラインナップの商品をどうしていくかということも合わせて検討していかなければなりません。

単純に改訂するだけではなく,よりよくするためにはどうするか。そういう検討もなかなか大変です。


さて,内容が一番大事ではありますが,制作作業にも一つの問題点があります。

それが,写研で制作したものを,どうしていくかということです。


現在の商品を写研で組んでいただいた制作会社の中には,写研をすでに持っていないというところも多々あります。

そのため,それらの制作会社で制作した商品の改訂については,他社で写研で改訂していくか,他のソフトに移し変えるしかありません。

しかし,現在社内では,少なくとも新規商品については,InDesignにしていくという方針があります。

そのため,写研で制作した商品においても,改訂する際には,InDesignを用います。


そんなときどうするか。一番単純なのは,テキストデータだけ利用して,InDesignで組みなおすということです。

しかし,写研といえども,すでに校了してあるデータがあるのに,一から組みなおすのは大変です。

では,どうするか。

写研データからInDesignにコンバートできないでしょうか。


そんなことを考えている会社がありました。


ここでは特に会社名やURLは示しませんが,「写研データをコンバート」というフレーズで検索をしてみてください。

すぐにヒットすると思います。

まだ実際にお願いはしていませんが,改訂に先立ち試してみようかと思っております。

2009年11月16日月曜日

助詞と動詞が同じ文字

本日,校正漏れが見つかりました。

本刷り前だったので被害はありませんが,少々ショックですね。

組版オペレーターの修正ミスと私のチェック漏れが原因でした。

初校で赤入れして,再校でその赤入れが正しく修正されず,再校で再度赤入れして三校が出たときに,そこでさらに正しく修正されておらず,その修正ミスに気づきませんでした。

該当箇所は図版だったので,入稿時のテキストデータを完璧にということは難しい部分ではありました。

しかしながら,とりあえずは赤入れ通りに修正してほしいなぁ…と思いますね。

私もキーボードでテキスト入力しているときに打ち間違い等はやってしまいます。
このブログでも,気をつけてはいるものの,ときどきミスがあります。

なかなか人のやることなので,いつも完璧にとはいきませんが,同じところを2度とも修正ミスされてしまうと,なかなか悲しいものを感じます。

三校で外部校正出しをすればよいかもしれませんが,普段は三校まで外部には出しません。

初校・再校で2人ずつ,編集を依頼している人と私も含めれば,初校・再校で8回のチェックが入ります。

そこで気づいた2度のミスを,2度までも修正ミスされてしまった挙句,三校では私しかチェックしていなかたので,私が照合でチェック漏れをしてしまったがために,そのまま先の工程へ進めてしまいました。


何にせよ,自分の不注意ですので,少々悔しいですね。


該当箇所というのは,助詞「の」とある動詞の頭文字「の」がくり返されているところで,1個余分に「の」が入っていました。

その動詞が漢字であれば気づきやすいのでしょうが,漢字をひらがなに開いているために,見逃してしまったようです。


教材というのは漢字を開いたり閉じたりという制限が多くつきまといます。

特に中学生教材というのは,文字もそこそこ多いのに,漢字を開くものがたくさんあります。

「の」に限らず,「が」「は」などから始まる名詞や動詞などが助詞に続く場合も同じです。

気をつけてチェックはしているものの,いくつも「の」「は」「が」がくり返されていると,見ている間にだんだん目がおかしくなりそうなときがあります。

このようなケースでヒヤッとしたことは今回が初めてではなく,過去に何度もありますので,校正漏れの起こる可能性としては高いほうかと思います。

校正のチェック観点として,この点もしっかり押さえておいたほうがよいと改めて思いました。

2009年11月10日火曜日

ハイフン

教材に限らず,電話番号や郵便番号などで,ハイフンを使うことがあると思います。

特に出版物を作っていれば,奥付に郵便番号や住所,電話番号を載せることは多いでしょう。

そんなとき,ここで使用されるハイフンが気になりませんか。

特に,次のような1バイトのハイフンが使用されていると,数字の天地中央より下がっているため,大変格好悪く私は感じます。(以下,リュウミンRです)



だからといって,天地中央である2バイトのマイナスを使用するのも,全角なので,やや違和感があります。



じゃあ,1バイトのハイフンのまま,天地中央になるように,2Hほど上げてみましょう。



天地中央にしてみたものの,やはり短すぎでしょうか。
あまり格好よいとは言えないような気がします。



では,OpenTypeFontであれば異体字というものがあるので,その異体字を試してみましょう。

まずは1バイトのハイフンの異体字で,バランスのよさそうなものを選んでみました。



今度は2バイトのマイナスの異体字で,前後のアキが調節されたバランスのよさそうなものがないかと選んで見ました。



「1byteハイフン異体字2」はそれなりに好きですが,ほんの少し数字とくっつきすぎでしょうか。
「2byteマイナス異体字」は少し数字にくっつきすぎで,あまり好きではありません。

バランスのよいアキを入れるには,やはりカーニングですかね。

試しに,「2byteマイナス異体字」にカーニング125をかけて8分アキを入れてみたところ,なかなかよさそうな感じになりました。



しかし,どうせカーニングをかけるなら,異体字を使用しなくてもよいのかなと,単純に2バイトのマイナスで,前後にカーニング-125をかけて,アキをほどよく詰めてみました。



これが私としては,いちばん見栄えがよいように感じます。
(「1byteハイフン異体字2」もなかなか好きですが…)

たいしたことではないようにも見えますが,このような少しずつのこだわりの積み重ねが,紙面の見やすさをつくるのだと,私は思っております。

2009年11月5日木曜日

l と I

lとI。これは,1バイトで入力したアルファベットです。

前が小文字のエル,後ろが大文字のアイです。

WEB上でも見分けがつきにくいですが,書籍上でもフォントによっては違いが分からない場合が多々あります。

内容を読めばどちらかというのはほとんど分かるのですが,学参の場合は,多少は気を使ったほうがよいかと思います。

例えば,元素記号をゴシック系で表現するときがあります。

私は中ゴBBBを好んで使うので,試しに小文字のエルと大文字のアイを表すと,次のようになります。



違いがほとんどわかりませんね。


元素記号は中ゴBBBでやるんだと決めたんだから,これでいいじゃないかと思う方もいるかもしれません。

また,小文字のエルだけで表される元素記号もありませんから,1文字でエルだかアイだか分からないのが出てきたら,アイに決まっているとおっしゃる方もいるかもしれません。

しかし,違いが分かりにくいという事実は変わりません。

じゃあ,変えましょう。

別に中ゴBBBじゃなくてもいいじゃないですか。

大文字のアイだけリュウミンMにしてしまいましょう。



これならパッと見て大文字のアイだと分かりますし,ヨウ素だって一目で分かるじゃないですか。

では,リュウミンMの大文字アイと中ゴBBBの小文字エルの入ったイオン反応式を試しに作ってみましょう。



すごく見やすくなったように思えませんか。

なお,数字はリュウミンM,+と-はじゅん101,矢印は中ゴBBBを加工した画像といった感じで,個人的なこだわりも入っています。

美しい化学反応式の表現については,また別の機会で取り上げようと思いますが,化学反応式がきれいに紙面上で表されていると,紙面がびしっとしまった感じがします。

というわけで,まずは大文字アイと小文字エルの違いを出すことから始めてみてはいかがでしょうか。

2009年11月2日月曜日

燃料電池電気自動車

10月30日(土)に,幕張メッセで行われている,東京モーターショー2009に行ってきました。

2007年にも行ったため,そのときと比較する形での見物となりましたが,やはり不況の影響はかなり出ていたようです。

まず,規模が前回に比べて,かなり小さくなっていました。

展示スペースも大幅に縮小された印象もありましたが,それ以上に輸入車のブースがほとんどないということに寂しさを感じました。

また,何とかホールの空きスペースを埋めようと,自動車メーカーやパーツメーカーなどのブースだけでは足りなかったためか,親子向けのイベント会場であったり,FMブースであったりと,本筋とは違うブースが目立ったのも,かえって寂しく感じました。


さて,今回のモーターショーは,ハイブリッドカーや電気自動車などによってエコを謳っているメーカーが多かったのですが,個人的にはいわゆるスポーツカーのほうが好きなので,前回の日産GT-Rがメインだったのにくらべて,少々盛り上がりに欠けました。

ところで,ホンダのFCXクラリティやトヨタのFCHVなどの燃料電池電気自動車も展示されていたようですが(この2台はあまりしっかり見ていませんでした…),この「燃料電池電気自動車」の表現が,数年前までは「燃料電池自動車」といわれることが多かったように思います。

しかし現在は,「電池」ということばを入れて「燃料電池電気自動車」,略して「FCEV」です。

理由はさだかではないですが,何となくトヨタとホンダ以外が「ハイブリッドカー」ではなく「電気自動車」の開発に重点を置いているため,「燃料電池自動車」も実質は「電気自動車」の1つであるため,「電気」ということばを入れたのかもしれません。

いずれにしましても,調べてはいませんが,教科書等で「燃料電池電気自動車」となっている可能性が高いので,それにあわせて「燃料電池電気自動車」で統一するようにしたほうがよいかと思います。

2009年10月27日火曜日

△=三角

理科教材というよりも数学の話かもしれませんが,今日は「△」の話題です。

教材では,「△ABC」という場合などによく用いられます。

この「△」のフォントによるデザインに,違和感を覚えます。

私はモリサワのリュウミンRを使用することが多いので, 試しにすべてリュウミンRの14Qで○△□と△ABCと入力してみると,次のようになります。



△が平たい二等辺三角形となり,格好悪くないでしょうか。

では,リュウミンRのまま,何とかして△を正三角形にしてみたいと思います。

左右の大きさを□にそろえると,△を15Qにして130%長体をかけるとよいようです。

ただし,ベースラインが上によってしまったので,0.7H下げました。



しかし,長体をかけたことによって,△の底辺の線の太さが130%の太さになってしまい,やや違和感が出てしまいました。

では,思い切って△のみ小塚明朝Rにしてみましょう。
ただし,ベースラインがリュウミンと違うため,○と□にあうように0.4H下げました。



さっきよりはよくなったような気がしませんか。


では,△だけ小塚明朝Rにするのもややこしくなるので,○△□の3つとも小塚明朝Rにしてしまったらどうでしょうか。



特に違和感がないように思えますが,小塚明朝のベースラインがリュウミンよりはやや上なのでしょうか,リュウミンのABCよりもやや上がって見えます。

どうせなら,○△□の3つとも,やや下げたほうがよいかもしれません。
試しに,0.5H下げてみました。



なかなかバランスがよいのではないでしょうか。


では,小塚明朝は使わずに正三角形の画像を作って本文に埋め込んだらどうでしょうか。



これでも問題ないですかね。しかし,画像を埋め込んだときのベースラインの調整等でいらぬ仕事やミスが増えないとも言いかねませんので,最適とはいいかねません。


とりあえず,今回試したものの中では,○△□を小塚明朝にして0.5H下げたものが最もよいでしょうか。

先日も話題に上げましたが,現在は合成フォントができるので,○△□を最初から小塚明朝で組みあがるような設定にしておくとよいかと思います。


さて,今回は○△□の3つでしたが,まだほかにも「×」というやっかいな存在があります。

こちらについては,また別の機会にお話しします。

2009年10月25日日曜日

移行措置スケジュール

新学習指導要領の移行措置が今年(平成21年度)から始まっていますが,念のため記しておきます。


中学校理科の移行措置はなかなか複雑で,意外と現場の先生方や父兄の方が理解していないということも多いようです。

もちろん教材を制作している私などはしっかり理解しているつもりではありますが,移行措置が細かすぎてときどき混乱を起こしてしまいます。


それでは,順番にあげていきましょう。



●平成21年度

1年生と3年生で移行措置が始まりました。

1年生では,「種子をつくらない植物のなかま」などの追加事項のほか,学年間移動で3年生で習うことになった「力のつり合い」などが削除になりました。

3年生では,「仕事とエネルギー」などの追加事項が始まりました。


●平成22年度

1年生と3年生の移行措置は平成21年度のままで,2年生(平成21年度は1年生)にも移行措置が始まります。

2年生の移行措置の内容は,「電流が電子の流れであること」などの追加のほか,3年生から「酸化と還元」や「化学変化と熱」が移動してくるなどもあります。


●平成23年度

3年生において,さらなる移行措置があります。

平成22年度までは3年生で履修していた「酸化と還元」や「化学変化と熱」が削除されたり,1年生から移動してきた「力のつり合い」などが追加されたりと,また複雑な移行措置となります。



さて,おさえておきたいことの1つは,平成22年度の3年生と平成23年度の3年生が違うということです。

移行措置によって平成21年度に入学した生徒は,一応新学習指導要領での学習となっていますが,同時に移行措置が行われているそれより上の学年の生徒は,完全な新学習指導要領ではありません。

このあたりを現場の先生方などが意外とわかっていない可能性があります。


また,教材制作の立場でいうと,微妙な部分が多々見え隠れします。


例えば,「酸・アルカリ・中和」が1年生から3年生に移動しました。

では,「気体の性質」で二酸化炭素が水に溶けて酸性を示したり,アンモニアが水に溶けてアルカリ性を示すというところの表現はどうしたらよいのでしょうか。

酸性・アルカリ性については小学生でも習っているため,中和という言葉さえ使わなければよいのでしょうか。

また,BTB溶液は使ってよいのでしょうか。1年で行う2分野の光合成と呼吸の実験などでもBTB溶液は使いますので,そういうところとの整合性とはどうしたらよいのでしょうか。


「化学変化と熱」が2年生に下りてきますが,そこで「エネルギー」という言葉は使ってよいのでしょうか。

「エネルギー」の概念は3年生で初めて学習することになるはずです。ということは,新指導要領の「化学変化と熱」では,「熱が出入りする」という表現とし,「熱エネルギーが出入りする」はダメなのでしょうか。

しかし,1年生の光合成などでは「光のエネルギー」というような表現も使いますので,「○○エネルギー」ではなく「○○のエネルギー」という表現なら大丈夫なのでしょうか。


こんな微妙な部分の疑問が多々あります。

平成24年度の新教科書が出るまでは,文部科学省が意図しているところは正直分かりません。
しかし,教科書が出る前に教材作りをしなければならない場面は多々出てきます。

そのため,結局は私なりの解釈で進めていかなければなりませんが,それにしても悩ましい問題ばかりです。

2009年10月24日土曜日

言葉の使い方の間違い

ここのところ忙しい日々が続いており,更新が滞ってしまいました。

さて,忙しいとはいっても,通勤時間が長いため,毎日往復で2時間くらいは,電車の中で読書などに時間を使うことができます。

まあ,朝は電車の中で寝てしまっていることも多いので,実質は1時間くらいなのですが…。


そんな前置きはいいのですが,今週ある有名な小説を読み終えました。
有名とはいっても最近出たものではなく,少し前のものです。


その小説を読んでいて気になったことがありました。



最近,正しい意味で言葉が用いられなくなったという話題がメディアで時々取り上げられます。
その小説でも,間違った用法である言葉が使用されていました。


そのことばが「煮詰まる」です。


「煮詰まる」とは,「議論・交渉が結論の段階に近づく(三省堂 Web Dictionary)」という意味です。
これを,「行き詰まる 意味:先へ行けなくなる,進退に窮する(三省堂 Web Dictionary)」と間違えて使用していました。

それも,気づいた限りでは2か所ありました。


編集という仕事上,そのような間違いに違和感を覚えるというのもありますが,最近はこのような間違いをする人が多いようです。


また,この間違いに違和感を覚えた人はいないかとインターネットで調べてみると,同じ小説内で「力不足」を「役不足」と間違えて使用している箇所もあったと指摘している人がいました。

これは私も普段間違えて使ってしまいそうになる言葉であったため,見逃してしまったようです。


さて,言葉というのは時代とともに変わるもので,現在は正しいとされている言葉も,かつては違う意味で用いられていたというものは多々あります。

この「煮詰まる」や「役不足」も,何十年もしたら「行き詰まる」や「力不足」と同じ意味で用いられるようになってしまっているかもしれません。

しかし,現在はまだ,違う意味の言葉です。

教材においては,決して間違った意味で使用してはなりませんので,もし著者の方が間違って用いてしまっていたら,修正する必要があります。


では,小説はどうなのでしょうか。ふと,疑問を覚えました。

小説などの編集をしたことがないのでわかりませんが,やはり著者の原稿が最優先なのでしょうか。
それとも,たまたま編集者や校正者が気づかずに校了してしまっただけなのでしょうか。

何とも言えませんが,やはり教材に限らず,書籍や雑誌などの文字媒体では,現在での正しい用法で制作すべきだと思います。


私も日常生活では間違った用法で言葉を使っているものはないとは言い切れませんし,必ずあると思います。
しかし教材制作者である以上,生活でも極力正しい用法を使うような意識を持っていないと,校正の際も気づきません。

そのような意味でも,普段から用法を間違いやすいといわれる言葉は,意識してリストアップしておいたほうがよいかと思います。

2009年10月20日火曜日

合成フォント

フォントメーカーのモリサワのサイトに,「じょうずなワニのつかまえ方」というのがあります。

http://www.morisawa.co.jp/font/techo/crocodile/

上記URL中の説明文を引用すると,次のように書かれています。


引用ここから***

1986年『じょうずなワニのつかまえ方』(ダイヤグラムグループ著、バベル・インターナショナル訳)初版が、株式会社主婦の友社から出版されました。
「いまは無用の知識でもいつか必ず役に立つ!」という内容で、モリサワをはじめとする国内の主要なフォントベンダーのいろいろな書体を駆使し、項目ごとに書体・級数を変えて組んだ、文字の見本帳としての機能もありました。
現在、再編集され扶桑社文庫より文庫本が刊行されています。
この度、その『じょうずなワニのつかまえ方』があらゆるモリサワフォントを駆使して再編集されWeb初登場!

引用ここまで***


この「じょうずなワニのつかまえ方」を見ることで,モリサワのフォントの適当な使い方が見られます。


さて,この「じょうずなワニのつかまえ方」を見ると,ひらがなと漢字が違うフォントになっているものなど,一見面倒くさそうなことをしているなと感じるかもしれません。

しかし現在のDTPソフトではそのようなことは簡単で,InDesignでは合成フォントといって,「漢字は中ゴBBB,ひらがなはリュウミンR」などというように,フォントを組み合わせて「本文」などとフォントの組み合わせを設定することもできます。

以前わたしも,化学式などでは,数字はリュウミンM,アルファベットは中ゴBBBなどとして「化学式」フォントを設定して作業をしていたこともありました。

教材制作では内容が最も重要ですが,フォントへのこだわりをもつのも面白いかと思います。

2009年10月18日日曜日

日仏教育学会 公開シンポジウム

1週間前になりますが,東京理科大学の森戸記念館で行われました,日仏教育学会 2009年度 研究大会 の 公開シンポジウム「科学教育の今日的課題 -子どもの理数離れをどうするか-」に行ってきました。

日本の子どもたちが現在,学校で習う理数への関心が世界的に見て薄れているのではないかという話題を,よく耳にします。

そのことに対して私もいろいろと興味がありまして,この公開シンポジウムに参加してみました。

さて,日仏教育学会なので,日本とフランスの教育を比較しての話となりますので,まずは前提となる日本とフランスの教育制度の違いをあげると,以下のようになります。


日本      フランス
  
小学校1年  エコル  CP1(準備クラス) 
     2年        CE1(初級クラス)
     3年        CE2
     4年        CM1(中級クラス)
     5年        CM2
     6年  コレージュ第6級(前期中等教育)
中学校1年        第5級
     2年        第4級
     3年        第3級
高 校1年   リセ   第2級(後期中等教育)
     2年        第1級
     3年        テルミナル(最終学級)

本シンポジウムはフランスの研究者からの発表もあったりと,ふだんは聞くことのできない貴重な話を聞くことができ,その中でも興味深かった点についてお話していきます。


フランスの前期中等教育であるコレージュの第6級では,物理・化学は習わないようです。
それは,日本で言う生物や地学(シンポでは生命科学と地球科学と表現)が生徒にとってとっつきやすいものであるからだそうです。

そして,第5級~3級にかけて,物理や化学も扱われるようになるのですが,その物理や化学についても,生命科学や地球科学に関連することを多く取り上げることで,より生徒たちに実感として伝わるようにしているとのことです。

また,日本では理科と技術は別教科という位置づけですが,フランスでは「科学と工学の統合教育の試み(EIST)」という,科学や工学に対する統合的な見方をもち,生徒たちがこれらに興味をもちやすいようにすることを目的とした試みを行っているとのことです。

その一環として,もともとは別々の教師によって行われていた3つの科目(物理・化学,生命科学・地球科学,工学)が,1人の教師によって行われるようになり,そのことによって,3つの科目間での影響関係が深まり,生徒の科学や工学への好奇心をかき立てられるようになったほか,フランス語(国語)や数学などとの結びつきも強くなたようです。


また,リセの第2級では,文系も理系も同じ科学教育を受けるようですが,文系の生徒は第1級以降は科学を行わないようで,あくまで科学は教養の一部であるとか。
教養の一部ではありますが,その教養というのは,理系の生徒以外にも科学を利用する市民育成の意味からも,科学教育を保障するものであるとのこと。

対して理系は,より深い内容まで学び,本物の科学教育を学び,技術系に進んだ生徒もより専門的に学ぶようになり,そのレベルは日本で言う大学2年生くらいまで行うようです。



さて,これらはシンポジウムのほんの一部の内容ですが,いろいろと考えさせられるものがあります。

フランスで言う工学科目が日本で言う技術科目と同じかどうかは分かりませんが,科学と工学を分けて学ぶことの意味は,確かにないように感じます。

男性のほうが傾向としては多いのかもしれませんが,科学好きには工学好きが多いというのがあるかと思います。

そのような理系志向の生徒がより科学に興味をもち,専門分野に進んでいってもらうようにするためにも,科学と工学をいっしょに学ぶ意義はあるように感じました。


フランスの教育に関しても課題はまだまだあるということもシンポジウムでは言っておりましたが,とりあえずこの「科学と工学をいっしょに学んでいく」という考え方は,私としてはかなり共感を得られるものでした。


また,教員養成に関する話題もあり,日本の2週間程度の教員実習とは違って,フランスでは3年間で学士を取得したあと,2年間の修士課程があり,その2年目に多くの実習があり,教師に求められる高度な実践能力を養っているようです。

なお,この3年+2年も,ヨーロッパの他の国の動向に合わせて,5年間で修士取得を教員免許取得資格の最低条件とすることに変更されたとか。

この修士までの取得や多くの実習をするという考えが,現在の日本で政府や文部科学省などが提案している教員免許制度改革に関連しているのではないかと考えられます。


いずれにしましても,図書教材制作という立場ではありますが,理科教育に少なからず関わっているものとして,このような動向には耳を傾けていたいものです。


なお,本シンポジウムにはレジュメのない部分もあったり,フランス研究者の話の内容を翻訳していただきながら聞いたりと,私の受け取り方に間違った部分があるかもしれませんので,ご了承ください。

スクールニューディール政策

先週は仕事が忙しく,更新が滞ってしまいました。

関東に来て2年以上経ち,自宅から会社までの距離が遠いことにも慣れましたが,残業が多いときなどは,やはりプライベートの時間がなくなってしまうことが欠点ですね。

やはり,できれば通勤時間は1時間以内のところに引っ越したいものです。

とはいいつつも,関東で自家用車をもったまま,手ごろな家賃でそこそこ広いところを探すのはなかなか大変で,周りからは千葉に引っ越したらいいよと言われつつも,やはり少しでも故郷に近い,西側に住みたいのが心境です。


さて,そんなことは置いておいて,今日はスクールニューディール政策についてです。
先ほどNHK教育でICT授業のことを取り上げており,ふと話題にしようかと思った次第です。


スクールニューディール政策とは,国の政策の一環で,各学校の耐震化,エコ化,電子化をなどを図ろうというもので,その電子化の中に電子黒板を入れようというものがあります。
(詳しくは文部科学省のサイトなどをご覧ください)

このことに関して何か仕事としてできないかと以前から調べていたのですが,民間教育の図書教材制作と公教育の図書教材制作において,なかなか実現しがたい壁が多いことを実感していました。


さて,そんな愚痴は置いておいて,国が推奨している電子黒板に,パイオニア製のプラズマディスプレイの電子黒板があり,正直いかがなものかと個人的には考えております。

パイオニアがプラズマディスプレイ産業から撤退することで安く導入できるのではないかということで,このパイオニア製電子黒板の導入を推奨しているのかと勝手に想像していますが,より使いやすくより安価な電子黒板製品など,現在の市場にはほかにもいろいろとあります。

今年のブックフェアにもいろいろと出展されていましたし,検討の余地はまだまだあったのではと思います。

子どもたちの見易さや先生方の使い易さ,そして私たちの税金を有効に使っていただくという意味でも,安易にパイオニア製を推奨せずに,もっと市場の他の製品も選択肢に入れていただきたいなと感じました。

また,パイオニアがプラズマディスプレイから撤退したというのにそれを導入してしまったら,故障してしまったあとの修理はどうするのだろうか…と,普通の人なら考えそうなものです。


そんなことを思ったのも数ヶ月前の話ですが,技術は日々進歩し,電子黒板も少しずつ進歩しています。

将来的に図書教材がまったくなくなるとは思いませんが,図書教材だけの企画でやっていけるとも思えません。

スクールニューディール政策を機に,図書教材出版各社もいろいろと考えるようになっていくものと私は思っているのですが,まだまだ有用な話は聞こえてきません。

eラーニングが日本でなかなか広まらないように,日本の教育機関では授業に電子機器を使うことへの積極性が少ないのかもとも思えますが,もう少し世代が変わって電子機器に慣れた先生方が増えれば,一気に電子化が進むのかなとも思います。

そんなときに乗り遅れないように,日々情報を張っておく必要はあるのかなと感じる次第です。


まとまりのない話となりましたが,現在もパソコン教材やeラーニング教材,任天堂DSの教材など,電子機器を使った教材は増えつつありますが,将来的にはもっと様々な媒体での教材制作が増えていくことと思われます。

そのような制作にも対応できるように,日々情報収集は欠かせない時代となってきていると感じております。

2009年10月13日火曜日

計算式中のミス

最近気になるのが,計算式のミスに気づかないことです。

外部の校正者や編集を依頼しているプロダクションの方々も含め,同じものを4~6人で見ているのに,みんなが同じところで校正漏れをしているということがあります。

そしておまけに,私まであやうく同じ箇所で校正漏れしそうになって,冷や汗をかいてしまうことがあります。

そのみんなが同じように校正漏れをする箇所というのが,解説の計算式中で使用されている算用記号のミス,特に分数が混じった計算式中の,×と÷が間違っていることに関するミスです。

どうしてみんなが同じところで校正漏れをしてしまうのでしょうか。

自分の校正の仕方から考えられることは,解説を見ながら校正をしてしまっていたことです。


初校では,解説を見ずに一度問題を解き,解答欄に導き出した答えを入れていきます。
そして,そのあと解答・解説と照合しながら解答・解説の校正を進めます。

しかしこのとき,問題を解くときに使用した計算式との照合がおろそかになっていることに気づきました。
本来であれば,解答を導くために使用した計算式は丁寧に書いておくなどし,それともしっかり照らしあわせる必要がありますが,自分の校正を振り返ってみると,計算過程を裏紙などに走り書き等で行っていることに気づきました。

高校の仕事をしていたときは計算が複雑なものもあるため,もう少し計算過程も丁寧に書き残しつつ校正をしていたのが,中学・小学の仕事をするようになり,おろそかになっていたようです。


そんな校正の仕方をしていて校正漏れをしたまま,再校に進んだとします。

再校になると,初校とは異なり,最初から解説を見ながらの校正を行うようになります。
そんなときに,実際に計算をしているようで,正確な計算ができていないということが起こっていました。

特に中学・小学の内容は,ほとんどが頭の中で暗算できてしまう程度の計算式です。
そのため,校正も暗算で行ってしまい,初歩的な計算ミスの校正漏れをしてしまうのだと思います。


このような単純な校正漏れを引き起こさないためにも,問題の校正は次のステップをしっかり踏んだほうがよいでしょう。

1.初校・再校では,解答・解説を見ずに一通り問題を解く。
  その際に,計算式は走り書きせず,丁寧に書いて残しておく。
2.模範解答と自分の解答を照らし合わせる。
  解説と解答を導き出した解法(計算式など)を照らし合わせる。
3.1・2が済んでから,初めて内容校正・文字校正・体裁校正に移る。

この1・2・3をまとめてやってしまうことに,初歩的な校正漏れが起こってしまうのだと思います。

特に再校でこれをやってしまうと,万が一初校で校正漏れしていた場合,その箇所をスルーしてしまう可能性があります。

やはりどれだけ初校でチェックをしたと思っても,再校でもそれなりの校正は必要だということです。


高校教材は複雑な計算があるため計算過程も当たり前のように丁寧に校正しますが,それ以上に中学・小学教材に出てくる簡単な計算式の校正は,慎重に行うべきだと感じました。

2009年10月12日月曜日

生物の図版

今年のノーベル化学賞に,リボソームの立体構造と機能を解明し,抗生物質の開発を大きく前進させたとうことで,イギリスのベンカトラマン・ラマクリシュナン博士(57),アメリカのトーマス・スタイツ博士(69)、イスラエルのアダ・ヨナット博士(70)の3氏に贈ると発表されました。


さて,この記事を見ていてふと思ったのは,生物の図版をどこまで正確に,また詳細に描くかということです。

リボソームに限らず,細胞の電子顕微鏡像の図版を起こす際に,どうしても教科書や参考書などの図を参照しながら,オリジナルで起こします。

本当はオリジナルの電子顕微鏡像を見ながら描くべきなのかもしれませんが,現実的にはほぼ不可能です。

というわけで,教科書や参考書を参照せざるを得ないわけですが,このときに知識不足で間違った図に仕上がったまま,気づかずに校了ということも少なくありません。

特に,中学理科の教材を見ていると,中学までの知識しかない人が制作しているせいか,高校までの仕事をしていた人からみるとおかしいと思える図をちらほらみかけます。

まあ,同じことが大学以上の専門家の方々から見れば,高校教材にそのようなことがあるのかもしれませんが。

いずれにしましても,図を起こす際は,それ以上の知識をもってチェックする必要があるかと思います。

中学の図版であれば高校の教科書を参考するだけでも,中学の教科書だけをみてチェックするよりは多少でも正しい図に仕上がるかと思います。

使っている生徒や先生がそのときは間違いに気づかない可能性があっても,将来の子どもたちが間違って覚えてしまわないように,少しでも正確なものを提供するのが教材制作に携わる私たちの義務かもしれません。

土星の輪

数日前の話題ですが,一応アップしておきます。

土星に,もう一つ巨大な輪が発見されたと,NASAから発表されました。

土星の輪のはるか外側(600万~1200万kmの範囲)に,赤道から27度傾いた大きな輪があるようです。

詳細は,以下のURL(asahi.com)よりご確認ください。http://www.asahi.com/science/update/1008/TKY200910080126.html?ref=rss


中学および高校の理科でこのことに触れられることはしばらくないと思いますが,事実として知っておくと,何かしらの訳に立つかもしれません。

暦計算室

昨日のMitakaに引き続き,今度も国立天文台のサイトからの紹介。

今日は「暦計算室http://www.nao.ac.jp/koyomi/」です。

公共のサイトにはいろいろと役に立つものがあり,このサイトでは「日・月の出入り,南中時刻,高度方位」などが調べられます。

これまでの指導要領では中学で月の運動はありませんでしたが,平成21年度の移行措置から中学3年生で月の運動と見え方を学習することとなりました。

それにともない,模試などで既存の学習内容と月をからめる必要性がでてくると思います。

そんなとき,満ち欠けの共通があることから,金星を用いることが最も想像しやすいでしょう。

しかし,何年何月何日の何時ころどのあたりに月がくるかというのがわからないと,条件設定として信憑性が低くなってしまいます。

そこで,国立天文台の暦計算室にある「今日のほしぞら」に入ってみると,日時を設定することで,惑星と月との位置関係を知ることができます。

これによって,より信憑性のある問題制作ができるようになりますし,県版テストなどでは県ごとで設定した作問ができます。

インターネットの公共のサイトには,いろいろと仕事に使えそうなものがあります。

今後もよさそうなものが見つかれば,随時ご紹介いたします。

2009年10月10日土曜日

Mitaka

国立天文台が開発した「Mitaka」というソフトをご存知でしょうか。

以下のURLに概要が示されていますが,抜粋しますと・・・
http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/index.html

『Mitaka は,国立天文台 4次元デジタル宇宙プロジェクトで開発している, 天文学の様々な観測データや理論的モデルを見るためのソフトウェアです。 地球から宇宙の大規模構造までを自由に移動して,宇宙の様々な構造や天体の位置を見ることができます。 』

というように,宇宙空間をパソコン上で仮想的に見ることができるソフトです。


このソフトですが,先日のサイエンスカフェで初めて存在を知り,感動しました。

というわけで,上記URLよりMitakaをダウンロードして,パソコンにインストールしてみました。

まだ使いこなせていませんが,このソフトがあれば,問題の制作や校正が楽になりそうです。


かつて,オリジナルの天体の問題を作ったときなど,何年何月何日何時何分の空の様子をネットのフリーソフトなどを駆使して調べ,問題を作成したものですが,なかなか大変でした。

しかし,このソフトを使えば,問題作成も校正も軽減できそうなきがします。

オリジナルの問題を作るためには,やはり天体の正確なデータが必要です。
そのような意味でも,国立天文台が開発しているというだけでも,信用度もあがります。

使用してみてはいかがでしょうか。

2009年10月7日水曜日

台風

過去10年で最も勢力が大きいといわれる台風が,日本列島に接近しています。

ブログを書いている10月7日の23時現在,台風は和歌山県沖の海上を通過し,私の住んでいる神奈川県も強風件に入っております。


さて,明日の出勤がどうなるかわからない状況ですが,台風と理科を結び付けましょう。


平成22年度からの移行措置では,2年生の日本の気象で,台風も扱われるようになります。


平成22年度の2年生は平成23年には3年生になり,模試などを受けることが増えてきます。
そしてわたしたちは,そんな平成23年度の3年生のために模試をつくります。

そしてそんな平成23年度の3年生たちは台風を勉強しているので,今回の台風18号を題材にすることができます。

新指導要領で台風が扱われるようになったということ,また過去10年で最も勢力が大きく,日本を横切ることなどから,入試で出題される可能性も高くなります。

特に完全に真上を通過する可能性のある近畿~東海~北陸にかけては,題材としてはもってこいかもしれません。

というわけで,とりあえず天気図を保存しておくとよいかと思います。

気象庁のサイトでは,3時間ごとの天気図を公開しています。

http://www.jma.go.jp/jp/g3/

これを保存しておき,平成23年度以降の模試や平成22年度以降向けの教材で使用してもよいかもしれません。


先日の写真に引き続き,天気図も,使えそうなときに保存しておくとよい材料でしょう。

なお,高校地学でも台風は扱われていますので,そちらでも使用できるかもしれません。

2009年10月6日火曜日

しばらく旅に出ていました

更新が滞っております。


先週の金曜日・土曜日と社員旅行がありました。

そのようなわけで,前日の木曜日は準備のため更新できず,金・土はもちろん更新できませんでした。


そして,社員旅行の全行程が終了したあと,東京へは帰らず,私は現地で他の会社の人と分かれ,一人名古屋へ移動しました。

土曜日の夜は名古屋で1泊し,日曜日の早朝4時半に起き,鈴鹿へ移動しました。

というわけで,日曜日はF1日本GPを鈴鹿サーキットで観戦しておりました。


さらに日曜日の夜は鈴鹿で1泊し,翌月曜日も鈴鹿サーキットでF1関係のイベントに参加しておりました。


月曜日は気温も低かった上に,4日の旅で体調はやや不良でした。
そのようなわけで,名古屋では途中下車せず,気合で一気に神奈川まで帰りました。

神奈川の自宅には夜7時過ぎに到着。疲労がたまっていたため,早めに寝てしまいました。


そして,本日火曜日,通常業務のスタートでしたが,午後からは外出で半肉体労働でした。

というわけで,頭も働かず,このような話題でとりあえず更新です。


明日から再開の予定ですが,8日夜はまた仕事で食事会があるので更新できそうもありません。

まあ,台風の影響でこの食事会もどうなるかわかりませんが・・・。


シルバーウィークに社員旅行,そしてF1日本GPと,ドタバタした2週間もやっと終わり,そろそろ日常に戻ります。

2009年9月29日火曜日

生物写真

今日は軽めの話題です。


最近,スルメイカが安いですね。
関東では,1杯100円くらいから150円くらいで購入できます。

スルメイカは年中とれるようですが,旬としてはまさしく今なのでしょう。

まあ,海に近いところではもっと安く鮮度がよいのでしょうが,とりあえず旬ということもあり,関東のスーパーで買っても鮮度のよいなものが手に入ります。


また,秋の魚介と言えばサンマですね。
サンマもこの季節は1匹100円以下で購入できます。


というわけで,先週末は土曜日にスルメイカの刺身とサンマの刺身,サンマのなめろうをつくって夫婦で晩酌。ついでに日曜日は,アジのなめろうとサバの味噌煮をつくり,秋の魚介を楽しみました。



前置きはさておき,本題です。

平成22年度の移行措置により,中学2年生で無脊椎動物が扱われるようになります。

その無脊椎動物の中で軟体動物が扱われることになり,代表例としてイカのからだの構造が扱われると予想されます。

このイカのからだの構造ですが,いままさにスルメイカのシーズンですから,写真を撮っておくのに,ちょうどよい機会です。


というわけで,スルメイカの写真を撮ろうと思っていたのですが,イカをさばきだすと手がぬるぬるになるので,手を洗ってまでカメラを手にするのが面倒になり,結局撮らずじまいでした・・・。


写真はフォトエージェンシーから借りたり,専門フォトライブラリーに依頼したりしてもよいですが,用意できるものは用意しておくのもよいかなと思います。

写真として使用しなくても,作図用資料としても使えます。

教科書などの写真をもとにイラストレーターに描いてもらうよりも,実際に撮影した写真を参考資料にしてもらうほうが,何倍も参考資料としては詳しいですしね。


博物館や水族館・動物園などにも,参考資料になるものがいろいろとあります。

アンモナイトの化石などはあちらこちらにあるので,軽く1枚写真に残しておいてもよいかと思います。


使わないかもしれないけど,何年か先に使えることになるかもしれない。

そんな未来の「かもしれない」の写真をコツコツためておくのもよいかなと思います。


そうこういいつつ今年の初夏,海のタイドプールで出会ったアメフラシは,水中写真として残せずじまい。
海に行く際はハウジング(カメラの防水カバー)を常に持ち歩くべきだったと反省です。

また,サクラの花の断面図の写真も,毎年撮ろうと思いつつ,結局ものぐさで撮らずじまいで今年まで来ています。

生物写真は年中撮れないので,気づいたときに撮る習慣をつけねばと思う次第です。



あっ,そういえば・・・,少し前にホウセンカも咲いていたのに,スルーしたような・・・。

2009年9月28日月曜日

リットルの表記

リットルの表記には,小文字のエルのイタリック l や,手書きのイタリック ℓ ,大文字ローマン のエル L などが使われています。

しかし,現在の中学理科や高校化学の教科書類では,大文字ローマンの L でほぼ統一されていると思います。
(生物などでは,小文字エルのイタリック l を,まだ使用していることがあります)

この大文字ローマンになったのは,現在の教科書からで,それより前は小文字エルのイタリック l が主流だったと思います。


さて,なぜ大文字ローマンの L になったかというと,国際単位系(SI)に準じることになってきたからだと思います。

リットル自体はSIの単位ではないのですが,SIとともに併用される単位に含まれます。

このとき,SIの表記のルールとして,

  「書体は立体活字(ローマン体)で,人名に由来する場合には記号の最初の
   文字のみ大文字,他は小文字[例:m, s, cd, N, Pa,Hzなど]とする。 」

となっています。

つまり,リットルは,小文字ローマンの l を使用することになります。

しかし,小文字の l は数字の 1 と似ているため,混同するのを避けて大文字ローマンの L を併用することに1976年に決められ,使用状況を見ながらどちらかを将来的には削除することになりました。
(小文字 l の使用は,1879年に決定)

この併用については2006年発表の国際文書第8版でも変更されていません。


つまり,小文字のイタリックで表記するというルールは国際的にはないため,教科書類ではこのSIの文書にのっとり,大文字ローマン L を使用することとなったのだと思います。

そのようなわけで,現状の中学理科教科書と高校化学教科書は大文字ローマン L が使用されているのですが,なぜか高校生物などでは小文字のイタリック l を使用してる場合もあります。


いずれにしても,今後の流れとしては大文字ローマン L での表記が中学以上の教材での主流となると思いますので,意識しておいたほうがよいと思います。

もちろん,教材以外では混在して利用されているので,この限りではありません。


なお,国際単位系(SI)についての詳細は,以下よりご覧ください。
http://www.nmij.jp/library/units/si/

2009年9月27日日曜日

gの話

アルファベットの g には,フォントによって,通称メガネ g と呼ばれるものと,手書きと同じ雰囲気の g があります。(以下,メガネ g と,手書き g と表現します)



一般書などの編集では意識する必要はほとんどないかもしれませんが,中学校の教材では,多少意識したほうがよいかもしれません。

なお,小学校ではアルファベットは極力使わず,使っても大文字でA,B,C…程度,高校教材ではそれほど意識しなくてもよいかもしれません。

しかしながら,中学入試対策となると,同じ小学生といえどアルファベットの使用も多少増えてきて,変数を表すアルファベットをイタリックにする機会なども出てきます。

さて,話を g に戻します。
本文は明朝体にすることが多く,明朝体の g はメガネ g が一般的です。

しかし,理科の教材では図中の文字をゴシック体にすることが多く,ゴシック体には種類によって,メガネ g のものと 手書き g のものがあります。

このとき,図中に使われるゴシック体の g が手書き g であった場合,本文中の明朝体のメガネ g と雰囲気が変わってしまいます。

教材の統一事項によっては,本文中の図中に使用されている記号類は,図中と同じフォントを使用するということがあります。そのような場合はメガネ g であろうが手書き g であろうが,同じデザインなので問題ありません。

しかし,本文中の記号類もすべて明朝体で統一し,図中はすべてゴシック体ということも多々あります。

そのようなときにメガネ g と手書き g が混在した場合どうしますか?

これは編集者次第ということなのですが,個人的にはメガネ g で統一したいですね。

ゴシック体にもメガネ g のものは多々ありますので,他のフォントで代替するなりして,本文中の明朝体のメガネ g と雰囲気をそろえます。

たいした問題ではないような気がしますが,教材という性格上,多少は意識したいですね。

2009年9月24日木曜日

水素

9月23日に,三鷹市の市民協働センターで行われたサイエンスカフェに行ってきました。

日本の理科教育界の礎を築き,サイエンスショーの草分け的存在として知られている縣秀彦さん,左巻健男さん,滝川洋二さんの3名がゲストとして招かれ,「科学を文化に」をテーマに語られました。

さて,そのなかで左巻さんのお話の中で,水素に関する実験が行われました。

炭酸水素ナトリウム水溶液を電気分解して水素と酸素を発生させ,その水素と酸素が混ざった気体をシャボン玉に閉じ込めます。そのシャボン玉を点火すると,「パンッ!」と激しい音を立てて燃えるという実験です。

中学校の教科書では金属にうすい塩酸を加えて,それを水上置換などによって試験管に集めて,それにマッチの火を近づけると,水素が爆発して燃えて水ができることを学びます。

また,教科書には水素の発生口に直接火を近づけないようにとか,水素と酸素が混ざり合った状態で火がつくと激しい爆発が起こり危険であることが記されています。

さらに予備知識として,水素爆弾などが危険であったり,ロケットエンジンに液体水素が用いられているなど,水素はかなり大きな化学エネルギーを備えているのであろうということも想像できるかもしれません。

しかし,それを実感する機会というのはなかなか得られません。

高校入試対策教材などでも,「ポンッ」と音を立てて燃えるなど,それほど大きなエネルギーを持っているという印象は得られない始末です。

その実感を,このサイエンスカフェで得ることができました。

直径1~2cm程度のシャボン玉を点火すると,かなり激しい音で「パンッ!」という音とともに水ができました。

文字で表現しても伝わりにくいかもしれませんが,かなりのものです。

さらにその水素と酸素の混合気体を3~5mくらいの細い透明なチューブに入れて同じように点火したところ,同じく激しい音がなりました。

この実験を公教育の現場でやることは難しいかもしれませんが,実感をともなう科学とは,こういうことかもしれません。


このサイエンスカフェの話の中で,スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている高校で理科の実験をしていないところがあるという実態を聞きました。

実験をやることによってテストや模試の成績が下がることは許されないため,結果として知識偏重の授業となってしまっているようです。

実験・観察がすべてではないですが,少々さびしいお話です。


また,理科教材を制作している私が,紙面上だけでの知識で制作していることの危うさも,少々感じてしまいました。

実験をしっかり行っているような現場の先生方の意見を聞いてつくられる教科書と違い,教材はそのような方々に手伝っていただくことは少ないかと思います。

教科書までとはいわないまでも,少しでも実感の伴った教材が制作できればと感じられたサイエンスカフェでした。

112番元素

シルバーウィークにより更新が止まっていましたが,本日より再開いたします。

さて,少し前の話になりますが,112番元素が正式に認定され,名前の候補として「コペルニシウム」が提案されているとの報道がありました。

元素が最後に認定されたのは,2004年の111番元素「レントゲニウム」でした。
そのため,それ以降の教科書等に掲載されている周期表では111番元素までしか載っていません。

しかし,1996年にドイツの研究者が112番元素の合成に成功するなど,112番目以降の元素の存在も発表されていました。

実験や検証などが不十分であったためウンウンビウムなどの仮称が用いられていたのですが,日本の研究者が合成に成功するなど,国際純正・応用化学連合(IUPAC)により112番元素が正式に認定されたようです。

正式認定されたことにより112番元素を発見したドイツの研究グループが「コペルニシウム」という名称を提案しているそうで,数か月後にはIUPACが最終決定するそうです。

さて,中学校の教科書は平成24年度(2012年度)から新教科書になり,高校の教科書も平成25年度(2013年度)から新教科書になります。

おそらくその頃までは正式名称も決定し,教科書も更新されることと思います。
そのため,新学習指導要領による教材制作で周期表を扱うことがあれば修正する必要があるかもしれませんし,もし,それまでに正式名称が決定していれば,これから制作する教材等ではそれを反映する必要があります。

そのため,112番元素の名称の正式決定には,少し耳を傾けておいたほうがよいかと思います。

2009年9月19日土曜日

算用記号

+,-,×,÷,=,…など,理科教材では計算式などで算用記号を用いることが多々あります。

最近ではMS Wordなどで原稿を入稿することが多く,原稿で計算式が出てくれば,計算式において使われていた数字や算用記号などのデータを,そのまま組版で流用してしまうこともあります。

そんなときよく困るのが,上記算用記号が,1バイトフォントで組みあがってくることです。

以前にも書きましたが,1バイトフォントは欧文での使用をベースにデザインされています。

そのため,印刷用フォントで組みあがってきた計算式を見ると,算用記号が文字の中心より少し下がっていることがあります。

これが何とも格好悪いこと。

フォントによっては,バランスよく中央にくるようにデザインされたものもありますが,すべてのフォントがそうというわけではないのが,また困ります。

例えば,次のものは小塚明朝R(OTF:Open Type Font)のものです。



1バイトの+と=の位置が,何とも格好悪いですね。

なお,話の流れの都合上,答えにも+をつけているのでご了承ください。

では,+と=を2バイトにしてみると,このようになります。



1バイトに比べてかなりよくなりました。

しかし個人的には,少々数字に比べて大きすぎるデザインかなとも思います。

なお,欧文と和文の間の文字組みアキ量設定は0%になっておりますので,以下そのような形での計算式であるということ前提でご覧ください。


では,モリサワで試してみましょう。

モリサワのリュウミンR(OTF)で+と=を1バイトで組むと,このようになります。



モリサワのOTF場合は,和文の中央にくるようにデザインされているようなので,とりあえず下がっていてバランスが悪いということはないようです。

しかし,和文中に組み込むには,こじんまりとしすぎた計算式が,どうもしっくりこないような気もします。


まあ,そこまでいいだすとこだわり過ぎだと思われるかもしれませんが,ちょっとこだわって話しを進めましょう。


では,リュウミンRで2バイトにしてみます。



2バイト,つまり全角になったわけですが,リュウミンの2バイトについては,+や=に限らず,-,×,÷なども,小ぶりの左右に小さいデザインです。

そのため,全角となると文字間のアキが気になります。

とくに,上記の式では=と+の間のアキが気になりませんか?


では,バランスのよいフォントに変えてみましょう。

個人的には,じゅん101の算用記号が好きなので,+と=のみをじゅん101の2バイトに変更します。



バランスよくなった気がしませんか?

しかし,1バイトにすると,先ほどのリュウミンよりくっつきすぎているように見えるので,気をつけましょう。


さて,最後に算用記号の1バイトで厄介なのが,-(マイナス)です。
小塚明朝RにしてもリュウミンRにしもじゅん101にしても,すべて最悪です。

マイナスではなく,ハイフンですね。欧文では,ハイフンもマイナスも同じなので,しょうがない話です。
ただし,小塚明朝は他の算用数字も下がっているため,逆にバランスよく見えますが,リュウミンやじゅんにいたっては,マイナスのみ下がっているため,すごく違和感を覚えます。
しかし,OTFであれば異体字*切り替えができるため,中央に配置されたマイナスに変更することも可能なので,最低それくらいはしたいですね。
  *同じ字で異なるデザインのものや異なる字体のもの。
   例えば普通の「高」に対して,いわゆる「ハシゴ高」とよばれるものが「高」の異体字。



とまあ,気にならなければ気にならないし,無理して修正することもない話かもしれませんが,見栄えをよくした計算式を求めるなら,数字と算用数字の間のアキのバランスと,1バイトのマイナスについては,多少は意識したいものです。


私はやっぱり,リュウミンRの1バイトの数字に,じゅん101の2バイトの算用記号を使うのが好きですね。
なお,これが高校数学・物理以上の数式になってくると,こだわり箇所はもっと増えるので,そのお話はまた機会があれば致します。

2009年9月17日木曜日

三校の恐ろしさ

昨日,今日と,青焼きやDDCP(プルーフ)のチェックをしていていました。

そして,DTPが始まって何年たってもなかなかなくならない,DTPの怖さを再び実感しましたので,そのお話をします。

ちなみに,どうして青焼きとDDCPの両方があるかというと,作業している書籍のうちの1冊は,既存のフィルムの一部を差し替えてフィルムの複版をとって改訂しているからです。

DDCP(プルーフ)のほうはもちろん,全ページがデータ入稿のCTPです。

ちなみにDDCPについては,プルーフといったり白焼きといったり,インクジェットといったり,なぜかそれも青焼きといったりと,編集者や出版社によっていろいろな言い方がありますが,うちはDDCPといっています。


さて,今回実感した恐ろしさとは,三校の恐ろしさです。

原稿,初校,再校でしっかりチェックし,外部校正,外部編集者など,再校まではしっかりすぎるほどチェックをいれました。

そして再校では,どうしても直しておきたいところ以外は,どうでもよいミスを減らすために,必要以上の余分な修正はしていません。

そのため,基本的に三校では,修正を入れた箇所以外のチェックは基本的にせず,ざっと最終素読みをしただけでした。

しかし,青焼きをチェックしていると,ふと視線が止まりました。
(ページ単位でデータ入稿し,データからフィルム出力しているので,こちらもDTPでの制作です)

図版のところで何か違和感を覚えたのです。

何度も何度も見ているので,記憶の片隅に残っている画像と違うような気のする図版がちらっと目にとまりました。


ところで,基本的に青焼きやDDCPでは内容チェックや素読みなどはしません。
面付けがおかしくないか,入稿データどおりに出力されているか,裁ち落としまで出力されているかなどのほか,念のため小口とノドがまさかとは思いますが逆になっていないかなどのチェック,あとはざっと眺めて,おかしいところがないかどうかのチェック程度です。

しかし,これだけの作業をしておくと,記憶上にない違和感を覚えることがあります。

そして今回ありました。

再校まではまったく問題のなかった箇所,しかし再校で修正の入ったページについて,まったく修正とは関係のない部分のデータが一部消えていました。

冷や汗ものです。

いままでもときどきありました。
三校または四校で,消しこんで校了と思っていたのに,なぜか関係のない箇所がおかしくなっているという状況です。

版下作業ではまず起こらなかったことですが,DTPになってからそのようなことがときどき起こります。


三校での消しこみ作業では,内容チェックをしなくても,修正のなかった箇所も含めてできる限り再校と照合したほうがよいのかもしれません。

そのためにも,再校までに修正箇所は極力減らしておき,再校戻しはどうしても修正せざるを得ないところのみにできるようにしておく必要があります。

そうしないと,照合しているだけで多くの時間を費やしてしまいます。


DTPになって簡単に直せるようになり,気になるところを必要以上に修正したくなります。
しかしそれが,かえっていらないミスを引き起こす引き金にもなります。

妥協はしたくありませんが,ミスよりはマシかなとも思ってしまいます。

しかし,妥協とこだわりのバランスをとるのが難しいのですがね…。

2009年9月16日水曜日

スラッシュ

今日は,単語を区切ったり,「m/秒」などのような単位で使ったりするスラッシュについてです。

スラッシュにも,全角「/」と半角「/」があります。



しかし,先日の数字と同様,等幅フォントであれば半角ですが,実際はプロポーショナルの欧文のデザインです。



また,“欧文デザイン”というように,欧文のアルファベットと数字とともに使ったときにバランスよく見えるようにデザインされています。



例えば,「m/s」と アルファベットではさんだときはしっくりくる欧文スラッシュですが,和文とともに「m/秒」と使用すると,“秒”に比べてスラッシュが天地に短く,バランスが悪くなります。



ブログ上のテキストで示すとわかりにくいので,InDesign上で表現してみましょう。





このように,バランスが悪いのが分かります。

なお,このm/秒の“/”と“秒”の間はアキ0%としてあります。


InDesignでは標準の文字組みアキ量設定(欧文と和文のアキなどを細かく設定するところ)において,欧文のあとの和文は25%アキ,つまり4分アキが最適となっているので,“/”と“秒”の間は4分空いており,バランスの悪いものとなってしまいます。


ですので,文字組みアキ量設定でアキを最初から0%にしておくか,カーニングを-250(1文字が1000なので,4分詰めるので250戻す,つまり-250)かける必要があります。


ただし,文字組みアキ量設定の欧文の後の和文までのアキを0%にすると,数字なども含めてすべて0%になってしまうので,好みに応じて設定をどうするか詰めておく必要はあります。


しかし,いずれにしても,最近のDTPをやっている人の中には,ここのアキに対して何も感じないのか,まぬけに25%のアキが入った状態で初校が上がることが多々あります。


さて,ではどうすると美しくなるか。


とりあえずわたしの場合は,長体120%をかけます。

120%程度で,だいたい和文の天地のサイズと同じくらいになります。

もちろん,フォントによってデザインが違うので,一概に120%とは言い切れませんが,だいたいそんなもんです。


なお,ミスのもとなので,欧文には長体120%の指示はあまりいれませんが,やはり和文中で用いるのであれば,120%かけたほうがバランスがよいかもしれません。


先のものに長体120%をかけると,次のようになります。




さらに,ここからはこだわりすぎの話になりますが,m/s どのように,スラッシュの次が s のような小さいアルファベットの場合,スラッシュと文字の間がまだ空きすぎのように見えなくもないので,さらにカーニングで-125をかけることもあります。まあ,ほとんどしませんが…。




続いて,全角スラッシュについてのお話です。


学参では,モリサワフォントを使用することが多いのですが,このモリサワでよく使うリュウミンや新ゴなどの全角スラッシュは,同じリュウミングループの太さや新ゴグループの太さを変えても,全角スラッシュは太さが変わらないのです。


文字が太くなっているのだから,スラッシュも太くなって欲しいものの,欧文スラッシュしか太くなりません。


そのデザインが美しいと思ってモリサワさんはデザインされているのかもしれませんが,わたしにはしっくりきません。


こんな場合は,組版への戻しで「太くして」みたいに漠然と指示しますが,よいフォントがあれば,指定したいものです。


とりあえず,無理矢理同じフォントでやるならば,欧文スラッシュを平体200%,長体120%かけると,個人的にはバランスよくなると思います。


ただ,少し太すぎる印象もあるので,新ゴMの本文中に使うのなら,新ゴRくらいにしてもよいかもしれません。





いずれにしても好みの話なので,気にならなければそのままでもまったく問題ない話です。

とりあえずわたしは,これらスラッシュに,すごく気になってしまいます。

2009年9月15日火曜日

選択肢のチェック

教材を作っていれば,選択問題の校正をすることもあると思います。

「次のア~エの中から最も適当なものを選び,記号で答えなさい。」といったたぐいのものです。

校正の基本としては,まずは上記の文の「ア~エ」という部分と,続いて出てくる選択肢が,正しく ア,イ,ウ,エ の4つであるのかをチェックします。

しかし,ときどきこの基本的な校正を漏らしてしまうことがあります。

鉛筆で斜線を引きながら文章中の“ア”と“エ”を消しこみ,選択肢をアから順番に消しこんでいるのに,無意識のうちに ア,ア,ウ,エ となっているのに気づかない…何てこともあります。

数字の連番をチェックするときもそうですが,文字をちゃんと画像として捉えないために,校正漏れしてしまうのだと思います。

頭の中で,ア,イ,ウ,エと唱えているだけでは駄目ですね。
ちゃんと1文字1文字を拾っていかなければなりません。

また,選択肢がア~カの6つなのに,問題文中が「ア~エ」となっていても気づかないこともあります。
このようなことも,しっかり文字を拾って,さらに鉛筆で消しこんで,丁寧に校正する必要があります。


ここまでは校正の文字校正レベルの基本事項ですが,もちろん選択肢の内容的なチェックもちゃんとしなければなりません。

基本事項としては,選択肢の重複がないかどうかです。

中学理科までは比較的選択肢は少ないのでそのようなミスは少ないのですが,大学入試問題を改題した場合など,理科ではかなりたくさんの選択肢が並べられている問題をみかけます。

そのようなとき,しっかり鉛筆で選択肢を1つずつ消しこんで,選択肢の重複がないかどうか確認する必要があります。

また,内容的なチェックとしては,正答が間違っていないかどうかをチェックするのは当たり前ですが,それ以上に,間違いの選択肢が本当に間違いかどうかをチェックするのを怠ってはいけません。

これも選択肢が増えれば増えるほど,また大学入試レベルになればなるほど,原稿段階,初校段階,また再校段階でさえも,選択肢の中にある間違いのはずの選択肢が,意外と許容解になってしまう場合があります。

これらは,分かったつもりで校正してしまいっているためにやってしまう見逃しが多いと思います。
間違いの選択肢が間違いだと思っていても,意外と自分の知識外の部分で許容解が隠れているのです。

中学理科ではなかなかありませんが,大学入試レベルの問題を制作しているときに,よくひやひやされます。

また,最近では中学入試対策の問題でも,そのようなことがありました。

自分の知っていると思っていた,また多くの人がそう思っているだろうと考えられる常識が,意外と正しくなかったというものです。

模試の問題なのでここでは書きませんが,驚きました。
外部校正者の方からの指摘で知ったのですが,私も知っていたつもりで見逃してしまいました。


さらに,捨て選択肢についても,気にかけたほうがよいでしょう。

選択肢の中に,理科とは関係のない選択肢が入っているのは,あまり芳しくありません。
理科の用語ではありえない造語なども,芳しくありません。

高校入試であれば,教科書で扱われている用語からしか選択肢は出されません。
それなのに,まったく教科書で見ないような用語を選択肢として載せた問題集やテストを提供していては,教材の質としては疑問を感じてしまいます。

というわけで,選択肢のチェックも奥が深く,みっともないミスが意外と出てしまう場所なので,1つ1つの選択肢を丁寧に確認し,校正漏れを減らすように心がける必要があると思います。

2009年9月14日月曜日

優性の法則

今日は,移行措置の「遺伝の規則性と遺伝子」の話です。

平成21年度の中学3年生の移行措置で,「遺伝の規則性と遺伝子」が始まりました。

この単元について,各教科書会社の補助教材を見てみると,優性の法則が扱われています。
この優性の法則について,疑問点をあげてみます。

さて,メンデルの3法則と呼ばれるものに,「優性の法則」,「分離の法則」,「独立の法則」があります。
現行の高校の教科書にも,これら3つの法則がメンデルの法則であるような表現があると思います。

しかし,この3つの法則のうち,優性の法則については,法則ではないのではないかという考え方があります。

そもそも,メンデルの3法則ということばを用いたのはメンデルではなく,メンデルの死後,同じような研究をしていた科学者がメンデルがすでに発見したことを知り,そのように命名したのだったと思います。

この法則として広く知れ渡るようになった3つの法則ですが,優性の法則には例外やはっきりしないものが多く,法則として成り立っていないのではないかという話があります。

一昨年の文科省からの新学習指導要領に関する説明会でも,世界的には優性の法則は法則として教科書に扱われていないため,新学習指導要領には載せなかったと言っていました。

そのようなわけで,補助教材で優性の法則は扱われたとしても補足説明程度だろうと思っていたのですが,蓋を開けてみれば,本文中に太字で扱われている準拠もありました。

もともと補助教材は検定を受けないという報道だったと思うのですが,実際は文科省が確認をしており,文科省がチェックしたのに補助教材に載ってしまった優性の法則。

このことは,平成24年度からの新教科書で優性の法則を扱ってもよいということとイコールになるのでしょうか。

将来的に日本でも優性の法則がなくなる可能性が高いとは思いますが,今回載せてしまえば,あと10年は日本で優性の法則を扱うということとなります。

世界的な常識はわかりませんが,間違っていると思われていることを載せてしまうのはいかがなものかとも思います。

結論は何も出ていませんが,とりあえず優性の法則の動向に意識を向けておくのもよいかもしれません。

2009年9月11日金曜日

数字フォント

本文中の数字のフォントをどうするかで,よく迷います。

まずは全角と半角です。

この全角と半角という言葉も,校正をするうえで微妙な言葉ですね。

漢字やひらがななどの1文字分を全角,1/2文字を半角といいます。
だから,1/2文字分ではない英数字は,正しくは半角ではありません。

本文中で使用する英数字をCenturyOldなどの欧文に統一するのであれば,「欧文」という呼び方でもよいのかもしれません。

しかし,和文で使用しているフォントと同じフォントで英数字を入れるとき,何といったらよいのでしょうか。

とりあえずわたしは,「1バイトフォント」ということにしています。

和文などの全角文字は16ビット,つまり2バイトのデータ量でできており,欧文フォントなどは8ビット,つまり1バイトのデータ量でできています。

和文フォントセットにおいても,通称半角と呼んでしまう英数字は1バイトでできています。


だから,2桁の数字や英語の単語などが全角で入力されて組み上がってきたときなんかは,「1バイトフォントに修正」などと赤入れしています。

しかし,「半角」でも通じるので,校正者さんは「半角」で問題ないでしょう。


さて,わかりやすいように,MS Wordを例に説明しておきましょう。

Wordでよく使われるフォントに「MS 明朝」と「MS P 明朝」があります。
この「P」があるかないかは,等幅フォントかプロポーショナルフォントかの違いです。

「MS 明朝」は等幅フォントです。字のごとく,等しい幅のフォントです。
全角のひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット・数字など,すべて同じ字送りで構成されます。
1バイトの英数字などは,半角(1/2角)でデザインされているので,2桁の数字は全角サイズ,4桁の数字は2文字サイズというように,きれいになります。

「MS P 明朝」のようなプロポーショナルフォントは,文字のデザインにあわせて字送りが変わるフォントです。なので,iやlのような幅の狭い字は字送りが狭く,MやWのような幅の広い字は字送りが広くなります。

これが,一概に全角・半角と呼べない理由です。



では,実際の仕事を考えてみましょう。

学参ではモリサワのフォントを多用しますが,モリサワのリュウミンなどの2バイトの数字と1バイトの数字のデザインのバランスが,どうも好きになれません。

OpenTypeFontとなり,CIDのときよりは1バイトと2バイトのデザイン差がなくなり,見栄えはよくなりましたが,それでも本文中で混在していると,すごく気になります。

OpenTypeの2バイトフォントの異体字の中に1バイトデザインに近いものもありますが,どうもしっくりくるようなこないような…。

そのため,編集者によっては,絶対に2バイトフォントは使わず,すべて1バイトフォントの数字を使用してしまう人もいます。

その際,1桁の数字の場合は前後をカーニングなどで空けて全角送りにしています。

わたしも本当はこのやり方にしたいのですが,時間がかかったり,組版さんが意図をくみとってくれなかったりと手間がかかってしょうがないので,1桁は2バイト,2桁以上は1バイトとしてしまっています。

しかし,正直なところ,気持ち悪さが残ります。

それでも,CIDのリュウミンLの1バイトフォントがTimesNewRomanであったことに比べれば,かなり違和感は少なくなったので,CIDを使っているころよりはよくなりましたが,やはり妥協しない組版レベルにしたいものです。

やはり,現段階ではすべて1バイトフォントの英数字にしてもらって,カーニング処理がいちばんよいのかな…。



いずれにしても,校正していて,2バイトフォントと1バイトフォントが混在していたら,違和感を覚えるようになれば,校正力も1ステップアップといったところでしょうか。


ところで,Wordで原稿等を書くときの英数字のフォントはどうしていますか。
わたしなんかは初期設定のCenturyが気に食わないので,日本語用のフォントが「MS 明朝」ならば,基本的に英数字用のフォントは「MS P 明朝」にしています。

2009年9月10日木曜日

大気の大循環

22年度の移行措置で,大気の循環が加わります。

現行の指導要領外ではありますが,現行の中学理科の教科書(2分野下)には,発展事項として,この大気の循環が扱われている準拠もあります。

とりあえず自宅にある3準拠(東京書籍・啓林館・大日本図書)を見てみると,それぞれ発展事項として取り扱われていました。

東京書籍はp.27,啓林館はp.34,大日本図書はp.28にそれぞれ載っています。

さて,この大気の大循環モデルですが,中緯度域の垂直循環を矢印で示すときはどうしたらよいのでしょうか。

北半球で考えてみます。

まず,低緯度付近ではハドレー循環が起こっており,あたたかい大気が上昇して中緯度域に運ばれ,中緯度域で下降し,地上の風である貿易風となって低緯度域に流れています。

高緯度域では大気が冷たいため下降気流が起こり,地上を極編東風が中緯度域まで吹き,中緯度域で上昇気流が起こります。そして,上空の風が高緯度域に流れます。

となると,中緯度域ではハドレー循環による亜熱帯高圧帯での下降気流により北上する地上の風が吹き,高緯度低圧帯で上昇気流を起こし,上空は南下する風が吹くように考えられます。

しかし,そんなに単純ではないようです。
とりあえず,低緯度域と高緯度域の物理的な大気の循環に対して,中緯度域は見た目上,または理論上の循環のようであり,これをフェレル循環と呼ぶようです。

さて,教科書に移ってみます。

啓林館の大気の循環の図を見ると,上記の理屈とはことなり,中緯度地域では地上の風も上空の風も北上しています。

対して東京書籍と大日本図書では,垂直断面の大気の循環がなく,偏西風波動が示されています。

この偏西風波動が曲者のようです。

啓林館のホームページに「ユーザの広場」という解説ページがあります。
http://www.keirinkan.com/kori/kori_earth/kori_earth_1_kaitei/contents/ea-1/3-bu/3-2-2.htm
(ここにいろいろと詳しく説明されおりますので,詳細はそちらをごらんください。)

地上の風は偏西風として北上しているのですが,中緯度域では上空にも偏西風が吹いており,これが南北に循環しています。これが偏西風波動で,これをもって啓林館の教科書では北上する矢印のみを示しているのかもしれません。

残念ながら,啓林館の高校地学1の教科書が自宅になく,確認できませんが,おそらくそんなところなのかもしれません。

ちなみに,数研出版の地学1の教科書には,北緯30度より北の中・高緯度地域の南北断面循環は明確でないと記されていますので,ここの大気の垂直断面図を示すのは難しいのでしょう。

また,実教出版の地学1の教科書には垂直循環がのっていますが,中緯度域の図は,上記啓林館のユーザの広場の図のように,地上の風は北上し,上空の風は循環しているというような表現です。

いずれにしましても,ここは再度勉強しなおさないと,私も理解が微妙です。

上記の説明も間違っている可能性がありますので,ご了承を。


ところで,結論はどうすべきか…というと,中学教材においての表現は「悩みます」です。

2009年9月9日水曜日

移行措置の話

今年から中学校の理科と数学において,学習指導要領の前倒し実施が始まりました。
広く移行措置と呼ばれ,平成24年度から実施の新指導要領の一部を,教科書のほかに配られる補助教材や移行教材と呼ばれるものを用いて授業をすることになっています。

その移行措置1年目の今年は,中学理科では,1年生と3年生が移行措置を行っております。

たとえば,1年生では「力とばねののび」「重さと質量」「水圧・浮力」「代表的なプラスチック」「粒子のモデル」「質量パーセント濃度」「シダ植物とコケ植物」「代表的な火成岩」「断層と褶曲」などが新たに加わり,指導が始まっています。

3年生では,「仕事とエネルギー」「水溶液とイオン」「遺伝の規則性と遺伝子」「月の運動と見え方」が新たに加わり,今年から指導が始まっています。

さて,教材をつくる上で重要な教科書情報に準じるものとして,移行措置においては補助教材の情報入手が必要です。

もちろん,かつての教科書や新学習指導要領から,およその内容を予測することは可能です。
しかし,学校のテストや入試は教科書や補助教材にそって出題されますので,補助教材に載っているのに,教材会社が作った教材にその内容が載っていないというのでは困ります。

そのようなわけで,何とか移行措置の情報を入手したいと思うものの,そういうわけにもいきません。

そんななか,現在,各社22年度の移行措置にどう対応するか検討していたり,場合によっては,予測のもと作り終えてしまっている会社もあるでしょう。

ちなみにうちは,もろもろの事情から,ほぼ作り終えました。
文科省からの移行措置の概要や学習指導要領解説,および過去の教材や教科書をもとに予想しての作成です。

疑問点は多々残っております。
たとえば,22年度から移行措置が始まる2年生において,新学習指導要領では「進化」について,「脊椎動物を例にあげる」ということになっています。
しかし,かつて進化が扱われていたころは,植物の進化も取り扱われていましたが,今回はどうなのかわかりません。
また,1年生で種子をつくらない植物のなかまでは,シダ植物とコケ植物は扱われていますが,藻類は扱われていません。これは,藻類の分類には微妙な部分が多々あるからだと思われます。
そのため,植物の進化を扱ってよいという判断がくだされた場合,どのような表現をとるのかも想像の域を出ません。

さらに,3年生から下りてくる「酸化と還元」,および「化学変化と熱」については,現行の教科書を用いて指導することになると考えられますが,2年生の段階では未履修の内容などが含まれているため,その部分の扱いをどうするかなど,微妙な部分が多々残ります。

いずれにしても,教科書会社から文科省への補助教材の提出の第1回目が8月末だったようですので,現段階では何も結論は出ていません。

最終的な補助教材がどのようになるか,不安と楽しみが入り混じっております。

2009年9月8日火曜日

まずは文字校正から

校正といっても,媒体によってやり方はいろいろあると思いますし,理科教材の校正といえば科学的な内容チェックも重要です。

しかし,どんな教材においても,文字の誤字・脱字はみっともないものです。
もちろん,内容が間違っていたり,答えが間違っていたりするのは論外ですが,意外と内容チェックの漏れよりも,誤字・脱字の校正漏れが目立ちます。

それは,内容チェックも文字校正を同時にやってしまっているからです。

わたしはもっぱら,内容チェックをやったあと,あらためて文字校正を行います。
もちろん体裁チェックや番号・記号の通しのチェックなども別途行うので,1回の校正に対して,4回以上は同じ校正紙をチェックします。

校正漏れをなくすためには,一度にいろいろなチェックをせず,やることを絞ってチェックしたほうがよいでしょう。

さて,そんな複数回チェックする校正のなかで,誤字・脱字を拾う作業が文字校正です。
文字校正の仕方は人それぞれあるかもしれませんが,ここでは私の作業方法を記します。

誤字・脱字を「拾う」と表現したように,文字校正は文字を一つひとつ「拾って」いきます。
ここ数年やらなくなりましたが,編集業について5~6年は,文節ごとに線で区切りつつ,文字を拾っていくという方法をとっていました。

たとえば,次のような文章があるとします。

「セキツイ動物は,魚類・両生類・ハチュウ類・鳥類・ホニュウ類に分けられる。呼吸のしかたは,魚類はえらで呼吸し,両生類は子どものころはえらで呼吸し,おとなになると肺と皮膚で呼吸する。…」

これを文字校正するときは,鉛筆で次のように線を引きながらチェックします。

「セキツイ動物は,/魚類/・両生類/・ハチュウ類/・鳥類/・ホニュウ類に/分けられる。/呼吸の/しかたは,/魚類は/えらで/呼吸し,/両生類は/子どもの/ころは/えらで/呼吸し,/おとなに/なると/肺と/皮膚で/呼吸する。/…」


こうすることで,単語や文節単位の塊で視界に文字列が入ってくるため,誤字・脱字や必要のない文字の重複などを発見しやすくなります。

これを数年続けた今は,文節単位で点を打ったり,点を打つような感じでペンを走らせたりしながら校正をするようになりました。

それでもときどき校正漏れをし,再校や三校でどきっとすることは今でもあります。

しかし,この文字校正での校正漏れで多いのが,漢字の変換ミスに気づけないことです。
同音異義語もやっかいなのですが,同音でさらに漢字が似たようなものや,音は違うのに漢字が似ているものなどの校正漏れもよくあります。

初校で外部に2名,再校で外部に2名と出していても,誰も気づかないということもあるので,文字校正は重要です。

昔からよくあるのは,「発泡スチロール」の「泡」の字が「砲」になっているものです。同音である上に形も似ているため,見逃しやすい代表例です。
最近は,「物質」であるべきものが「物資」になっているというのもありました。「質」と「資」は形が似ているので音は違うのに,見逃してしまいそうになります。

このブログでは,このような変換ミスなども適宜アップしていこうと思っております。

とりあえず第一歩

理科教材制作においてよく悩まされるのは,外部校正者不足です。

出版業界自体が文系的な職業なので,理系出身の校正者が少ないということもあるでしょうが,そればかりではないと常日頃から感じています。

仕事で外部スタッフの募集をホームページなどに公開すると,理科教材校正者への応募もそれなりにあるのが現状です。(もちろん文系科目よりは少ないですが)

しかし,そのような応募者に試しに校正を出してみると,やはりこちらの求めるレベルに届いておらず,それきりになってしまうことが多いのも現状です。

ただ,そのような人たちも,たんに校正経験がなかったり少なかったりしているだけで,しっかり校正について学習すれば,質のある人もいるかもしれないと思っています。

そのような人たちに校正力をつけていただくために,理科教材の校正とはどのような観点でチェックするものなのか,どのように進めるのかというのを,もっと広めたいと常日頃から思っていたため,とりあえずブログという形でスタートしてみました。

もちろん,わたしもまだまだ未熟です。理科の知識に関しては足りないことだらけで,外部校正者のチェックを見させていただきながら,一つひとつ知識を地道に増やしている毎日です。

しかし,このような知識を一人締めしておいてもしょうがありません。さらにほかの人たちに広めることで,よりよい理科教材作りができるはずです。

そのような勉強の機会が,このブログを通してできればと思っております。