2013年11月21日木曜日

研究発表会

先日,ある理科関係の研究発表会に行ってきました。

理科の仕事をしているとはいえ,所詮書籍教材編集ですので,実験や観察に直に触れ合う機会は殆どありません。

そのため,どうしても知識面では文献頼りになりがちです。

その文献も,義務教育の仕事をしていると,どうしても教科書に沿うことが前提となります。

とはいえ,その教科書も,教科書会社によって微妙に表現や科学的見解に違いがありますし,小学生の教科書,中学生の教科書,高校生の教科書を見比べると,それぞれ表現の仕方や,学齢に応じたグレーゾーンなども多くあるため,いろいろと違う部分が多々あります。

それらを踏まえつつ,さらに教科書の指導書や教授資料を参考文献として教材を制作するのですが,研究会に参加すると,やはり机上の勉強だけでは限界を感じさせられます。

「教科書通りには実験はうまくいかないからこうしたほうがよい」とか,「実験がうまくいかない場合の理由を指導書にはこう書かれているが,おそらくこっちのほうが可能性が高い」とか,そういうのは実際に実験を行っている先生たちだからこそ分かることであり,実験ができない立場としては,研究会は間接的に疑似体験させてもらえる貴重な機会でもあります。

机の上ばかりで編集していると,思い込みに陥りやすくなるので,ときどき研究発表会のようなところに参加するのは,偏った知識をリセットする意味でも,とても勉強になります。

時間の取れるときは,積極的に参加したいものです。


2013年9月12日木曜日

プルーフチェック

今日はプルーフチェックについて書いてみようと思います。

今回のプルーフとは,DDCPによって出力された出力紙を指して話します。
(人や会社によっては,DTPの初校出力紙や再校出力紙のことを初校プルーフや再校プルーフというところもありますからね。)

さて,過去から現在への流れで展開していこうか,それとも現在から過去へと展開していこうか迷いますが,前者でいこうと思います。

とはいっても,私の場合は版下時代までしか遡れませんが…。


アナログの版下時代は,その名の通り,1ページ1ページごとのアナログの版下ですので,それを職人さんが面付けして,フィルムに焼き付け,そして感光紙に焼き付けた青焼きが製版さんから渡されます。

当時の版下は,文字はイメージセッタから印画紙に書き出されたものでしたが,図版は手貼りなので,図版と印画紙の間で影ができることもありました。なので,青焼きではそういう図版とそれ以外の部分との境目あたりも,慎重にチェックしました。

また,平成14年度の指導要領の改訂では,抵抗の電気用図記号が変わったりしたので,版下流用で修正したものなどは,両面テープで抵抗の電気用図記号を上から貼り直したりもしました。

もちろん,用語が変わるなどした場合は,テキストだけ印画紙に打ち出して,同じく両面テープで貼りました。

それ以外にもいっぱい細かい修正を加えたりしましたので,切り貼り修正だらけのアナログ版下をフィルムに焼き付けると,ごくたまに切り貼りした部分がめくれていたり,文字落ちしていたりと,細かいトラブルが起こりました。なので,そのようなミスが起こっていないかどうか,青焼きチェックはかなり慎重にやっていました。

また,アナログで面付けしてるので,面付けが間違っていないかどうかも,金尺で裁ち切り線を引いたり,手でちゃんと折って折状にして確認したりと,青焼きのチェックではいろいろと見ることが多かった印象です。


これが,DTPデータから直接イメージセッタでフィルムが出力できるようになると,だいぶ楽になりました。

もちろん,先の投稿で書いたように,フォントやプラグインによるトラブルは多々ありましたが,面付け間違いは少なかった印象です。
とはいっても,中綴じで…といったのにノドにドブがあったり,地袋で…といったのに天袋になっていたりと,全ページ出力し直しのトラブルはときどきありました。

それもこれも,今はプロダクションやDTP会社が作成したデータを印刷する会社がRIP処理することが多いようですが,当時はデータを制作したプロダクションやDTP会社がフィルムまで書き出してから,印刷会社にフィルムを渡すということがよくありました。
そのため,印刷会社によって仕様が異なるのに,納品先とは違う印刷会社の仕様に合わせて出力してしまったりといったトラブルがときどきありました。

もちろん,面付けや綴じなどが間違っていたら全ページ出力し直しですが,小さなミスを青焼き段階で見つけた場合は,ストリップ修正ができていたので,職人さんがその場所だけうまく修正してくれたり,フィルムを削れば対応できるようなミスであれば,自分でカッターで削り落とすなど,アナログ的な修正が可能でした。

しかし,ストリップ修正ができなくなると,1ページ単位や,折り単位でのフィルム再出力が必要になりました。こうなると,再度一からチェックのし直しなので,これまた大変でした。

そういえば,一般にフィルムには,書籍名や何折の表か裏かなどを記すと思いますが,それを入れ忘れて,全フィルムにマジックで手書きしたということもありました…。


しばらく上記のようなトラブルが続いたのはQuarkXPress3.3Jや4.1Jの時代ですが,InDesign2.0が出た頃から,InDesign2.0でのネイティブデータ入稿が始まりました。
その頃は,それこそフォントの有無でトラブルが起こりました。当時はまだ,InDeignのネイティブデータ入稿も安定していなかったためか,フォントが置き換わったり,丸付き数字が反転したりと,原因不明のトラブルが起こっていました。まだまだOTFも出始めた頃で,CIDとOTFが混在していたりと,いろいろとDTP制作会社と印刷会社との間で環境が統一されておらず,大変でした。

それこそ,印刷する会社でDTPも行っている場合はそんなトラブルも少なかったのですが,DTPを行う会社と印刷をする会社が別の場合は,事前にDTP環境のすり合わせが何かと必要不可欠でした。

しかし,いくら環境をすりあわせておいても,何故かネイティブデータ入稿ではトラブルが起こってしまいました。未だに原因はよく知りませんが,InDesingCS2以降あたりからは,ネイティブデータ入稿でもだいぶ安定してきたような印象です。(あくまで私がやってきた仕事の範囲内の話ですが…)


さて,現在はというと,私の現場では,別の投稿でも記した通り,PDF入稿がほとんどです。
フォントがエンベットされたPDF/X-4をRIP処理しますが,InDesignからPDF/X-4への出力で問題が起こっていなければ,99%ほどの確率でRIP処理でのトラブルは起こっていません。
(まれに,PDF書き出しの段階で何かしら原因不明のトラブルが起こることがあったり,1色のはずなのにどこかに4色データが隠れていたり,写真などがRGBのままだったり,印刷物の一部をスキャンして用いた部分でモアレが起こったりといったトラブルはあります。)

というわけで,ラスターデータにちゃんとラスタライズされているかというのは,かなりざっくりとチェックするだけで,たいがい問題ありません。
面付けもコンピュータで行われているので,ミスが起こったこともありません。
そのため,プルーフチェックは,かなり楽になりました。


このように,これまでどのようなトラブルが起こってきたかを知っておくと,現在のプルーフチェックではどのような観点でチェックしたらよいかというのが,はっきりと見えてきます。
ときどき,版下時代と同じようなチェックを未だにしている人もいるようですが,時代に合わせたチェックの仕方を知っておくと,作業量はだいぶ減ると思います。


あっ,そうえいば,Illustratorで透明機能が付いたIllustrator9のときは,透明機能によるトラブルもよく耳にしました。そういうことも知っておくと,何かの役に立つかもしれませんね。


まとまりのない話になりましたが,PDFでの入稿以降しか知らない若い編集者の勉強にでもなれば幸いです。

2013年9月10日火曜日

割り付けとレイアウト

業界用語の違いについて,今回も書いておこうと思う。

今回は,「割り付け」と「レイアウト」である。

私がこの業界に入ったきっかけは,印刷会社でのオペレーターアルバイトとしてである。

その当時アルバイトをしていた印刷会社では,1ページにどのようの文字を配置するかということを「割り付け」と呼び,その設定を「割り付け設定」などと呼んだ。

大学卒業後にプロダクションに入ると,ちょうど版下や写研,DTPなどが入り混じる時代であり,「割り付け」と同意で「レイアウト」という言葉がよく耳に入るようになってきた。

いまでも「均等割付」などはよく聞くし,InDesign上にも「割付」という用語は用いられていた記憶があるので,完全に消えた用語ではないが,若い編集者からはあまり聞かなくなった用語であるのは確かな気がする。

まあ,雑誌などのように,割り付けなど関係なく,見栄え良く情報を紙面に配置していくようなものが増えてくると,そもそも割り付けではなく,それはレイアウトであるので,今となってはレイアウトのほうがしっくりくる用語かもしれない。

特に若いデザイナーさんなどは,割り付けなどという感覚は持ちあわせていない方も多くいるようで,古い頭の私などがデザイン案を見たりすると,テキストが綺麗に割り付けられておらず,すごく気持ち悪い感覚を覚えたりすることもある。

いずれにしても,いまとなっては「レイアウト」のほうが主流なので,主流に流されるしかないのが現状である。

台割とプロット

印刷物を制作する上では,当たり前であるが「折り」を考える必要がある。

このことは,一般書籍とか学習教材とかのジャンルによって異なることはなく,版を用いて印刷するであれば,どんな印刷物でも同じだと思う。

さて,文芸書にしろ教材にしろ雑誌にしろ,折りを意識しなければならないのであれば,台割を検討しなければならない。

見開き構成を意識したり,折りや綴じ方によって刷り色を検討したりするのは,この台割での作業になる。

つまり,1冊の本の設計図とも言えるものが台割である。

先の投稿のオフ入の話題になるが,印刷会社によっては,カンプとともに台割も合わせて用意して欲しいというところも多々ある。

さて,15年の経験の中で,いまの会社は5年目であるが,入社して驚いたのが,台割という用語を使用していないことである。

それまでの11年でお付き合いしていた会社のほとんどが台割という表現を用いていたものを,今の会社ではプロットと呼んでる。

プロットというと,私の中では台割の前の工程である。
ざっくりと1冊の本の構成を考えて,何章立てにしようかとか,単元数はいくつにするとか,コラムを入れようかとか,内容をどうしようかとか,物語であればどんな話の展開にしようかとか,そんな1冊の本の概要を,台割に落としこむ前のたたき台となったり,物語(原稿)を書き始める前に構成をまとめたりしたものが,プロットのイメージである。

そして,そのプロットをもとに台割に落とし込んだのち,固定費や変動費なども含めて試算し,採算ライン等を検討した上で,最終の台割が完成する。

とはいっても,教材とはちがい,文芸書や単行本の類などは,プロットで概要を固めたのち,著者から上がった原稿の分量によって最終的な台割が確定することも多いかもしれない。

いずれにしても,いろいろな印刷物があることを考えると,プロットと台割は使い分けたほうがよさそうな気がするが,いまの私の仕事上では,台割のことをすべてプロットと呼んでいる。ややこしい上に,協力いただいている会社やフリーの方には,皆さんが使い慣れない用語で話を進めなければならないので,ある意味申し訳ない…。まあ,私一人で打ち合わせをする場合は,台割と呼んでいるので問題ないかもしれないが…。


2013年9月8日日曜日

ネイティブデータ入稿時代

先の投稿で,現状はPDF入稿が多くを占めていることを書いたが,ネイティブデータ入稿時代のことも,少し書いておこうと思う。

私の場合は,12年ほど前からInDesignが出るまでの数年間は,QuarkXPress3.3Jないしは4.1Jの出力トラブルの洗礼を受けた人間である。

オフ入以降の話に絞ると,QuarkXPressのデータを印刷会社に入稿して,フィルム出力,および青焼きを出してもらうのだが,ここで何度もトラブルが起こったものだ。

まずはフォント。欧文フォントは同じ名前でも別物といったものが多々あるので,必ず入稿の際には,ネイティブデータと一緒に欧文フォントも印刷会社に入れる必要がある。しかし,オペレータさんがしょっちゅう入れ忘れる。以前同じフォントを渡したことがあるから大丈夫だと思って…というパターンがほとんどだったが,印刷会社からは不安だから,毎回入れて欲しいといわれる。(これは今でもそうだが…。)

次に多かったのが,サードパーティのプラグイン。最も被害を被ったのが下線革命というプラグインだったかな。
QuarkXPress上で下線を表現するのは面倒なのでプラグインを使用するのだが,オフ入時に印刷会社に渡し忘れたり,渡したのに印刷会社のほうで反映し忘れたりで,下線が入った部分以降すべての出力がおかしくなってしまったということが,何度かあった。
そのほか,記憶上では丸付き数字とか上付きや下付き文字だったかな。QuaekXPressのプラグインはあまり知らないが,初出の丸付き数字以降がすべておかしくなったことや,初出の下付き文字以降がすべて下付き文字サイズになってしまったりと,青焼きを見て愕然としたことは数度あった。
InDesignが出てこの不安から開放されるかと思いきや,初期のころは意外とトラブルがあった。記憶が正しいかどうか分からないが,丸付き数字でトラブルが出たことがある。その影響だと思うが,PDF入稿が常となった今でも,何となくプルーフチェックのときに丸付き数字に目が行ってしまう。

他にもいろいろとトラブルは起こっているはずだが,QuaekXPressから逃れられて既に6年以上も経つので,どんなトラブルが起こっていたかはほとんど忘れてしまった。

Illustratorで作ったリンクファイルのバージョンに伴うエラーもあったようななかったような…。記憶がだいぶ曖昧だ。

とりあえず,フォントがエンベットできるPDFで入稿できるようになったことで,フォントによるトラブルはだいぶなくなり,今は幸せ。
とはいっても,PDF入稿初期の頃は,PDFにフォントがエンベットできないというトラブルが時々あり,何度もPDFを出し直したこともあった。(今でも稀にそんな話を聞くが…)

いずれにしても,当時と比べれば,現状はトラブルがかなり少なくなったので,オフ入以降の作業は大幅に減ったが,どこかが楽になれば,楽だったはずのところが大変になるというのは世の常である。

機会があればそんな話題も書いてみようと思う。

PDF入稿

さて,昨日の話の続きとして,PDFでのオフ入稿の話題を書いてみようと思う。

私の感覚からすると,だいたい8〜9年くらい前から,データ校了後のオフ入のデータ形式として,印刷用PDFが少しずつ用いられるようになってきたような気がする。

それより前は,QuarkXPressやInDesignでDTPを行った場合は,ネイティブデータでの入稿が主流だった。

もちろん,今でもネイティブデータでの入稿はあるが,現状で私が仕事をしている中では,だいたい9割以上はPDF入稿になっている。

印刷用PDFとしてPDF/X-1aやPDF/X-4が広まり,印刷会社でもPDFによる入稿が安定してきたためであるが,この入稿時のPDFにおいても,印刷会社によって設定が異なるので,なかなか大変である。

印刷会社が「なんでも大丈夫ですよ。」といえば,たいがいどんなPDFを用意しても印刷会社のほうで何とかしてくれるが,融通のきかない(というか安定した設定でやることを重視する)印刷会社のほうが経験上多いので,入稿前にしっかりとPDFプリセットについてはやりとりをしておきたい。

また,DTPのオペレータさんの中にも,経験上でRIP処理エラーが多く起こったプリセットは,受け入れがたい場合も多いようである。
しかし,印刷会社にとっても,最もその印刷会社のDDCPで安定してRIP処理できるプリセットを検討した結果であるので,譲れないというのも最もである。

とはいっても,もしプロダクションの編集者やDTP会社のオペレータさんが,版元の編集者などから「PDFであれば何でもいいですよ」と言われた場合は,印刷会社から直接言われたわけではないので,念のためPDFプリセットを聞いておいたほうがよいと思う。

また,AdobeのAcrobatを使ってPDFを書き出すのか,それともInDesignから直接書き出すのかといったところでの問題もある。
過去にいろいろなトラブルを経験した人ほど,Acrobatの安定性を実感しているのでAcrobatでPDFを書き出したがるが,現状の私の仕事では,ほぼ100%がInDesignから直接書き出したものを印刷会社から要求されている。
いずれにしても印刷会社がRIP処理するので,プロダクションやオペレータの立場としては多少不安であっても,そこは印刷会社に従うしかない。

なお,細かいプリセットはあまりこだわらないが,トンボの有無とドブの幅については,やはり印刷会社の機械に合わないと,基本的に突き返されることが経験上多かった。

経験値としては,ドブは3mmのところと4mmのところがあり,トンボは必要なところと不要なところがあった。
これだけでも,4通りの組み合わせになるので,ちゃんと事前に言ってくれないと,最大3回やり直しの必要性が発生する。実に面倒だ。

そのほか,ときどき単ページPDFでの入稿を要求してくるところもある。最近はPCのスペックも上がり,PDFの書き出しが速くなったからよいものの,PCスペックが低いころは書き出しにも結構な時間がかかったので,連PDFを入稿したあとに単ページにしてと言われると,同じ以上の時間を費やすのかと,少々辟易したものだ。

いずれにしても,印刷会社と出版社・プロダクション・DTP会社の間で,しっかりとPDF書き出し設定のすり合わせは,事前にしておきたいものである。


2013年9月7日土曜日

データ校了〜オフ了における用語の違い

広く書籍の制作をしていると,いろいろと工程ごとに業界用語がある。

しかし,この業界用語は,どんな出版社や印刷会社,編集プロダクションなどでも同じかというと,意外に…というかかなり違う。

ときどき出版社の編集者に,「なんでこんなことも知らないんだ。業界標準だろ。」ということを自信満々に言う人もいるが,そんな人に限って,そこの出版社でしか通じない用語を使っていたりする。

校正記号一つとっても,とりあえず基準としてもよさそうなものにJIS規格の印刷校正記号というものがあるが,私も印刷出版業界に携わるようになり15年以上になるが,JIS規格ではない校正記号のほうが伝わるというものはときどきあった。

さて,そうはいっても最近は,原稿執筆からデータ校了あたりまでは,比較的用語の共通性も大きく,教材関係以外の編集者や印刷会社の方などと話をしていても,だいたい話は通じる場面が多い。

しかし,データ校了(といっても,データ校了がどこを指すのかが違うケースもあるのだが)以降においては,用語の統一性の無さはかなり大きい印象だ。

とりあえず,DTP上での校了(RIP処理前の校了)をデータ校了ということにして,話を進めたいと思う。

とはいっても,「印刷する会社がDTPを行っている場合」と印刷する会社以外の「DTP専門会社やプロダクションなどがDTPを行った場合」でも使用している言葉が異なるケースが多いので,これも結構厄介だ。
そのため,DTP専門会社やプロダクションから印刷会社にデータを入稿する場合は,その工程を「オフ入」といったり「データ入稿」といったりする。もちろん,それ以外の呼び方もあるのだろうが,印刷する会社がDTPを行っている場合は,単純に「入稿」といったり「RIP入稿」といったり,さらに様々だ。
(※印刷会社でも,DTPだけを行う場合もあるので,ここでは「印刷する会社」と記した)

いずれにしても,行う作業としては,InDesignなどのDTPネイティブデータ(生データといったりもする)や印刷用PDF(PDF/X-4など)などのベクターデータを,まずはRIP処理してラスターデータにラスタライズするとともに面付け作業を印刷会社が行う。これを「オフ入またはオフ入稿(「オフセット印刷のための入稿」からの短縮だと思う)」,「データ入稿」,単に「入稿」,そして「RIP入稿」などといったりするわけである。
(ベクターデータ,ラスターデータ,RIP,ラスタライズなどは,別途調べてください。)

いずれにしても,この段階では刷版はまだ出ておらず,刷版を出す前にちゃんとラスタライズされ,面付けがちゃんとできているかを確認しなければならない。
そこで,フィルム時代でいうところの「青焼き」のような出力紙でチェックしておきたい。このフィルムにおける「青焼き」にあたるものを,CTPでは何というかが,これまたかなり千差万別である。

例えば,青くないので,「白焼き」や「黒焼き」というところもあったし,インクジェットプリンタで出力するので「インクジェット」というところもあった。
しかし,レーザプリンタで出力するところもあり,そいうところでは「レーザプリント」というのかどうかは知らないが,そういうところもあるかもしれない。
さらに,印刷会社からみれば校正紙であるので,普通に「プルーフ」というところもある。
またさらには,そのプルーフを出力する装置をDDCPとよんでいる印刷会社などは,プルーフ自体を「DDCP」とよんでいたりする。
さらには,版下入稿〜フィルム時代の色校正とはだいぶ校正する観点は変わってしまい,ほとんど色校正ができないような状態なのに「色校正」というところもある。
とはいっても,しっかりとカラーマネージメントができている印刷会社がDTPからオフ了まで一貫して行っているのであれば「色校正」といってしまってもよいのかもしれないが,私の普段の仕事上では,色校正はほとんどできない。なぜなら,プルーフの色と実際の色はまったく違うから…。
しょうがないのでそんなときは,1折くらいのみ刷版を先に出してもらい,刷り出しをチェックして,プルーフとの比較でだいたいの刷り上がりを想像するしかない。
(私はこれを本機校正というが,もしここで色がおかしかったら,データ上の色を再調整しなければならないので,かなり大変なのである)

おっと,ここで「刷り出し」という用語を使ったが,「刷り取り」というところもあるし,ほかにもあるかもしれない。

さて,とりあえずDDCPから出る校正紙を「プルーフ」と呼ぶことにして,話を進める。

このプルーフのチェックをするときに最終ゲラと突き合わせをするのだが,そのゲラを何と呼ぶか。(「ゲラ」自体も,現在はゲラやゲラ刷りといってよいかどうかは正直疑問があるが,ゲラという言葉が今でも最も広く使われている印象なので,とりあえずゲラと呼んでおくことにする。)

「最終ゲラ」「(データ)校了ゲラ」「カンプ」「出力紙」「校了紙(責了紙)」…。
ほかにもあると思うが,ちょっと考えるだけでいくつもある。

私は「カンプ」とよぶので「カンプ」で話を続けるが,「プルーフ」と「カンプ」を突き合わせて,正しくRIP処理されてベクターデータがラスターデータにラスタライズされているかどうかと,面付けが正しくされているかを主にチェックする。

そして問題なければ「オフ了(オフセット校了からの短縮だと思う)」となるが,ここではじめてラスターデータとなったので「データ校了」という人もいれば,ここがすべてにおいての校了なので「校了」といったり,RIP処理の校了で「RIP校了」といったりするところもある。もちろん,ほかにもあるだろう。

そして,刷版が出力されて印刷され,製本前に「刷り出し」や「刷り取り」と言われるサンプルが届いて(印刷会社内でのチェックで終えることもあるが),印刷の品質のチェックをして,だいたい編集者の制作上の仕事は終わる。

以上,ざっくりと書いたので,正確にいえば間違っていると印刷会社の人には指摘されそうな部分もあると思うが,何となく業界標準がないということはまとめられたような気がする。


本当は,ここにCTP以前の話題も加えられたらなおよいのだが,おそらくひっちゃかめっちゃかになりそうな気がするので,今回はやめておいた。

いずれにしても,プロダクションなどの編集者で,版元によって用語が違いすぎて困っている人,または出版社の若手編集者などで,プロダクションとの意思疎通がうまくいかずこまっている人などの参考にでもなれば幸いである。

また,私の言葉不足で内容が理解できなかった人などで興味が出た方は,個々に調べてみていただければと思う。

2013年7月30日火曜日

選択肢の数と種類

選択問題の選択肢の場合の数について,先の投稿で記した。

今回は,選択肢の数と種類について,少々記しておきたい。

先の投稿でも書いたが,選択肢がやたらと多い問題を見かける。
たとえば,「下の語群から選べ」といった類のもので,その選択肢がやたらと多いものである。
ときどき耳にする「多くの選択肢の中から適切なものを選ぶのも学力だ」という声が正しいのであれば,私は学力がないのではないかと思うことすらある。
そのような問題を解いてみると,正しい答えが見つけられず,より適切な答えを選択したところ,答え合わせをしてみると間違っている。答えをもとに選択肢を見ていると,確かに答えがある。つまり,わかっているのに,なぜか選択肢の中から正しいものを見つけられないということがあるのである。

このような多くの語群選択肢から選ばせる問題のとき,必ずというわけではないが,ひっかけの選択肢がある場合がある。それが目に入り,正しい答えが目に入らないといったケースがある。
さらに,普通,たとえば「色」を選ばせたいのならば,色の選択肢が近くに並んでいればよいのだが,行をまたいで並んでいるなどして,目に入らない場合もある。

こうして,理解しているのに,間違うという現象が起こる。

ふるいにかけるという意味ではこのような方法もありなのかもしれないが,正しい学力が測れているかどうかは,いささか疑問である。

テスト工学的には,選択肢は4つか5つくらいが学力判定する上でちょうどよく,適切に学力判定できるという研究結果もあるようだ。


さて,「色」について触れたので,今度は「色」の選択肢について,例をあげて選択肢の種類について少し検討したい。

次の選択肢を見てみる。
ア 黄色  イ 赤色  ウ 赤褐色  エ 茶色  オ 橙色

少々極端な例を上げてみたが,ときどき見かける選択肢の悪例である。もちろん,入試や模試では見かけることはまずないが…。

例えば,答えはウの赤褐色であり,問題作成者の意図としては,教科書に書かれている用語を選ばなければならないという主張であったとする。

しかし,この5つの選択肢は,どれほど違いがあるのだろうか。色というのは主観が入るものでもある。見る人によっては,すべて正解になってしまう。もちろん,5つが似通った色ではなくても,5つの選択肢の中に迷う2つ,例えばここでは「赤色」と「赤褐色」が混ざっているだけで,本当は理解できている人が,ここの2つに分かれてしまうということもありえる。
つまり,このような問題の場合,明らかに違う色を選択肢としてあげておかなければならないのである。

また,色の問題で,「どのような色に変化したか」と聞いているのに,選択肢の中に「変化しなかった」というものが混ざっている場合がある。
これは設問文自体は変化したことを前提にしているような文末のに,「変化しなかった」という逆のことを述べている。これも,無闇に受験生を悩ませるので,問題文を適切なものにすべきである。
そのほか,「透明になった」という選択肢もたまに見かけるが,「透明」は色ではない。強いて言えば「無色になった」である。なお,問題内容によるので,ここでは単純例として示しただけなので,鵜呑みにしないで欲しい。

また,経験として受験生が聞いたことがない選択肢もいささか疑問だ。
中学生を例に上げれば,だいたい取り上げられる色というのは決まっている。しかし,選択肢を増やすために,いたずらに教科書等でほとんど扱われない選択肢が並べられている場合もある。そもそも,そんな選択肢を選択するのは,おそらく統計的に集計すれば,よほど理解できていない生徒か,イージーミスした生徒だけになると想像できる。学力を判定するという意味では,ほぼ無意味の選択肢となるので,そんな選択肢を入れる必要はないと思う。

というわけで,選択肢1つ取り上げても,考えることは多々ある。
今回はこのあたりにしておこうと思う。


選択肢と場合の数

先日,Twitterにて項目応答理論のことを少しツイートした。

項目応答理論とは直接は関係ないが,間接的に関係する選択肢について,少し書いておこうと思う。

センター試験はもちろん選択肢であるが,高校入試においても選択問題というのは多く存在する。

特に,受験者数の多い東京や神奈川,愛知などは,採点効率を上げるためなのか,選択問題が多いのも特徴である。

このような選択肢を多様した入試は,「いかに選択問題によって学力の違いを正確に測れるか」ということももちろん考えられているが,それ以上に,「いかに学力がないものが偶然によって正解してしまう確率を減らせるか」ということも考慮しているのではないかと想像する。

そんなことを想像しながら,問題をつくる立場として,どのような選択肢がよいかということを,今回は「場合の数」をもとに考えたいと思う。

具体的な例として,文章穴埋め問題を取り上げてみる。

例えば,文章中に2つの空欄( X )と( Y )があり,それぞれが「A」または「B」のどちらから選択しなければならないとする。

このとき,それぞれAかBのどちらかなので,場合の数としては,2×2=4 で,4通りの選択肢ができる。

具体的に示すと,
ア X:A Y:A
イ X:A Y:B
ウ X:B Y:A
エ X:B Y:B
となる。

これが,3つの空欄( X )( Y )( Z )とると,2×2×2=8 で,8通りの選択肢ができる。

具体的に示すと,
ア X:A Y:A Z:A
イ X:A Y:A Z:B
ウ X:A Y:B Z:A
エ X:A Y:B Z:B
オ X:B Y:A Z:A
カ X:B Y:A Z:B
キ X:B Y:B Z:A
ク X:B Y:B Z:B
となる。

これは選択肢の組み合わせであるが,組み合わせではなく,それぞれ2択の問題として答えさせる入試ももちろんある。

しかし,この選択肢の並びは今年の愛知県の入試で出題されたもので,実際に組み合わせで出題されることもある。

ここで注目すべきは,アのA・A・Aから始まり,クのB・B・Bで,AとBの並び方にルールがあることである。
並び方に必然性があることで,問題解答者にの学力とは関係のないところでの,変な勘違いやイージーミスを減らすことができる。
ときどき,この選択肢の並べ方がバラバラなものがあり,「バラバラな中から選ぶのも学力の一つだ」という声も聞こえるが,果たしてそれは学力なのかと疑問に思うこともある。
純粋に理解できているかどうかだけを問うのであれば,並べ方に必然性があったほうがよいと私は考える。

また,入試によっては,場合の数としては8通りであっても,4択しか示せない場合もある。

今年の神奈川入試では,3つの空欄に対して,増加・減少のどちらかが入るというパターンの選択問題があった。
ここでは,問題の内容は考えず,とりあえず選択肢の並びだけに注目してみる。

実際の選択肢は,
ア X:減少 Y:減少 Z:増加
イ X:減少 Y:増加 Z:減少
ウ X:増加 Y:減少 Z:増加
エ X:増加 Y:増加 Z:減少
である。

ここには,
オ X:減少 Y:減少 Z:減少
カ X:減少 Y:増加 Z:増加
キ X:増加 Y:減少 Z:減少
ク X:増加 Y:増加 Z:増加
の4つの場合の数が消去されている。

実はこの問題は,生態ピラミッドに関する問題の選択肢であるのだが,生態ピラミッドの問題において,そもそも上記のオやクというのは,解答としてはほぼありえない。
選択肢が増えることで見間違いによるイージーミスを誘うくらいであれば,選択肢は少ない方が,より学力を正確に判定できると思う。

また,ここではアが正解だとすると,選択肢の定石として,その逆を置いておくということもある。ここではエがそれにあたるが,まったく反対の理解をしていないかということを確認することもできる。
では,イとウについての必然性であるが,まずこの2つは逆の関係にあり,上記の定石としての組み合わせとしてはよい。
では,同じくカとキの逆の関係との違いはどこかというと,残念ながら私にはイとウの組み合わせを選んだ出題者の意図は読み取れなかった。

実際の問題を見てみると,私ならばカとキの組み合わせでもよいのではないかと思う。
なぜなら,この問題であれば,XとZに逆の言葉が入るような印象を受けるからである。
このあたりの判断は,神奈川の実入試を見て,個々に判断してもらいたい。

というわけで,内容に深く踏み込まずとも,選択問題の選択肢についても,いろいろと工夫は凝らされていることは理解できる。

判定テストを制作する人たちは「こんなの当たり前だよ」と思うかもしれないが,意外と世の中に出回っているテストにも,このようなことが全く考慮されていないものは多数あり,イージーミスなどによって,実際は理解できているのに,実力以下の評価を受けている子どもたちがいないとはいいきれない。

作問する立場として,子どもたちに正しい評価が出る作問をしたいものだ。

2013年7月25日木曜日

平成26年度 公立高校入試予想(天体)

さて,久し振りの投稿です。

最近は,Twitterでツイートするのがメインになり,ブログを更新しなくなってしまいましたが,長文で1つの内容を書くには,たまにはブログもいいかな…といったところで,ちょっと書いてみました。

というわけで,入試についてです。

平成24年を振り返ってみると,大きく話題となった天体イベントとして,日本では次のようなものがありました。

・金環日食(5月21日)
・金星の太陽面通過(6月6日)

このような大きく話題となった天体のイベントは,平成21年の皆既日食を例にみるように,公立高校入試の理科で大きく出題される可能性があります。
そこで,この2つについては問題に絡んでくる可能性があると,昨年私は予想しました。

結果を見てみると,
・金環日食…山形,埼玉,愛知,熊本
・金星の太陽面通過…山形,埼玉,愛知,熊本
と,それぞれ同じ4県が出題していましたが,平成22年度入試,つまり平成21年度の皆既日食を踏まえた入試ほどの出題率ではありませんでした。(ほかにあったらすみません。)

ちなみに,平成22年度入試で皆既日食に触れた都道府県は,千葉埼玉山梨富山静岡三重和歌山兵庫鳥取香川宮崎熊本となります。(こちらも,ほかにあったらすみません。)

なお,この年は移行措置後初の入試ということもあり,移行措置が入試で扱われるかどうかが話題になった年でもありました。結果,日食に触れる,触れないにかかわらず,「月の運動と見え方」について出題された都道府県は,実に半数近くにものぼりました。

しかし,平成25年度入試は,移行措置も一段落したため,出題傾向はいったんリセットされたようにも思えます。

とはいっても,天体イベントを絡めた出題は,作問する立場からすると出題しやすく,平成26年度も,平成25年の天体イベントを踏まえて出題される都道府県がないともいいきれません。

では,平成25年の天体イベントとして,入試に絡んできそうなものはあるでしょうか。調べてみたところ,次の3つがありました。

・パンスターズ彗星の接近(3月)
・部分月食(4月26日,西日本のみ)
・アイソン彗星の接近(11月)

パンスターズ彗星とアイソン彗星から,「彗星」を答えさせる問題が出るかもしれませんし,西日本の府県では,部分月食を扱うかもしれません。

しかし,部分月食も過去の月食と比べるとイベントとしては盛り上がりに欠けたので,話題として絡められるとしたら,平成23年の月食になりそうな気もします。

過去に起こった天体イベントが話題として入試で用いられることはよくあることなので,平成21年の皆既日食~平成24年の金環日食・金星の太陽面通過まで,天体イベントを押さえておくことは入試対策としてはよいことだと思います。

しかし,こうなると平成25年の天体イベントが入試に絡められる可能性が弱いようにも思えますが,過去の全国の入試を見ると,その年に起こる事象,つまり来年平成26年度入試でいえば,平成26年に起こる天体イベントが絡められる可能性もあります。

平成24年度でいえば,岡山と愛媛の入試で,その年に起こる金環日食(愛媛では金星の太陽面通過も)が扱われました。(ほかにもあるかもしれませんが,とりあえず…。)

これを踏まえて,平成26年に起こる天体イベントを調べてみると,10月8日に皆既月食が見られるようですので,月食のほうが,日食よりも出題する可能性が若干高くなるかもしれません。

そのほか,平成26年の天体イベントの一つとして注目なのが,「はやぶさ2」の打ち上げではないでしょうか。
平成22年に探査機はやぶさが小惑星イトカワから帰還したときは,かなり大きな話題となりました。それを踏まえた平成23年度入試では,「小惑星」を答えさせる問題が秋田で出題され,翌平成24年度には,島根で同じく出題されました。

現在,平成26年12月に打ち上げ予定とされている「はやぶさ2」を,実際に予定通り打ち上げられるかどうか分からない状況で入試問題に絡めるのは難しいかもしれませんが,「小惑星」の用語を押さえておくこと自体は,損にはならないと思います。


さてさて,あたるかどうかは何とも言えませんが,こうやって予想するのも,面白いものです。