今回のプルーフとは,DDCPによって出力された出力紙を指して話します。
(人や会社によっては,DTPの初校出力紙や再校出力紙のことを初校プルーフや再校プルーフというところもありますからね。)
さて,過去から現在への流れで展開していこうか,それとも現在から過去へと展開していこうか迷いますが,前者でいこうと思います。
とはいっても,私の場合は版下時代までしか遡れませんが…。
アナログの版下時代は,その名の通り,1ページ1ページごとのアナログの版下ですので,それを職人さんが面付けして,フィルムに焼き付け,そして感光紙に焼き付けた青焼きが製版さんから渡されます。
当時の版下は,文字はイメージセッタから印画紙に書き出されたものでしたが,図版は手貼りなので,図版と印画紙の間で影ができることもありました。なので,青焼きではそういう図版とそれ以外の部分との境目あたりも,慎重にチェックしました。
また,平成14年度の指導要領の改訂では,抵抗の電気用図記号が変わったりしたので,版下流用で修正したものなどは,両面テープで抵抗の電気用図記号を上から貼り直したりもしました。
もちろん,用語が変わるなどした場合は,テキストだけ印画紙に打ち出して,同じく両面テープで貼りました。
それ以外にもいっぱい細かい修正を加えたりしましたので,切り貼り修正だらけのアナログ版下をフィルムに焼き付けると,ごくたまに切り貼りした部分がめくれていたり,文字落ちしていたりと,細かいトラブルが起こりました。なので,そのようなミスが起こっていないかどうか,青焼きチェックはかなり慎重にやっていました。
また,アナログで面付けしてるので,面付けが間違っていないかどうかも,金尺で裁ち切り線を引いたり,手でちゃんと折って折状にして確認したりと,青焼きのチェックではいろいろと見ることが多かった印象です。
これが,DTPデータから直接イメージセッタでフィルムが出力できるようになると,だいぶ楽になりました。
もちろん,先の投稿で書いたように,フォントやプラグインによるトラブルは多々ありましたが,面付け間違いは少なかった印象です。
とはいっても,中綴じで…といったのにノドにドブがあったり,地袋で…といったのに天袋になっていたりと,全ページ出力し直しのトラブルはときどきありました。
それもこれも,今はプロダクションやDTP会社が作成したデータを印刷する会社がRIP処理することが多いようですが,当時はデータを制作したプロダクションやDTP会社がフィルムまで書き出してから,印刷会社にフィルムを渡すということがよくありました。
そのため,印刷会社によって仕様が異なるのに,納品先とは違う印刷会社の仕様に合わせて出力してしまったりといったトラブルがときどきありました。
もちろん,面付けや綴じなどが間違っていたら全ページ出力し直しですが,小さなミスを青焼き段階で見つけた場合は,ストリップ修正ができていたので,職人さんがその場所だけうまく修正してくれたり,フィルムを削れば対応できるようなミスであれば,自分でカッターで削り落とすなど,アナログ的な修正が可能でした。
しかし,ストリップ修正ができなくなると,1ページ単位や,折り単位でのフィルム再出力が必要になりました。こうなると,再度一からチェックのし直しなので,これまた大変でした。
そういえば,一般にフィルムには,書籍名や何折の表か裏かなどを記すと思いますが,それを入れ忘れて,全フィルムにマジックで手書きしたということもありました…。
しばらく上記のようなトラブルが続いたのはQuarkXPress3.3Jや4.1Jの時代ですが,InDesign2.0が出た頃から,InDesign2.0でのネイティブデータ入稿が始まりました。
その頃は,それこそフォントの有無でトラブルが起こりました。当時はまだ,InDeignのネイティブデータ入稿も安定していなかったためか,フォントが置き換わったり,丸付き数字が反転したりと,原因不明のトラブルが起こっていました。まだまだOTFも出始めた頃で,CIDとOTFが混在していたりと,いろいろとDTP制作会社と印刷会社との間で環境が統一されておらず,大変でした。
それこそ,印刷する会社でDTPも行っている場合はそんなトラブルも少なかったのですが,DTPを行う会社と印刷をする会社が別の場合は,事前にDTP環境のすり合わせが何かと必要不可欠でした。
しかし,いくら環境をすりあわせておいても,何故かネイティブデータ入稿ではトラブルが起こってしまいました。未だに原因はよく知りませんが,InDesingCS2以降あたりからは,ネイティブデータ入稿でもだいぶ安定してきたような印象です。(あくまで私がやってきた仕事の範囲内の話ですが…)
フォントがエンベットされたPDF/X-4をRIP処理しますが,InDesignからPDF/X-4への出力で問題が起こっていなければ,99%ほどの確率でRIP処理でのトラブルは起こっていません。
(まれに,PDF書き出しの段階で何かしら原因不明のトラブルが起こることがあったり,1色のはずなのにどこかに4色データが隠れていたり,写真などがRGBのままだったり,印刷物の一部をスキャンして用いた部分でモアレが起こったりといったトラブルはあります。)
というわけで,ラスターデータにちゃんとラスタライズされているかというのは,かなりざっくりとチェックするだけで,たいがい問題ありません。
面付けもコンピュータで行われているので,ミスが起こったこともありません。
そのため,プルーフチェックは,かなり楽になりました。
このように,これまでどのようなトラブルが起こってきたかを知っておくと,現在のプルーフチェックではどのような観点でチェックしたらよいかというのが,はっきりと見えてきます。
ときどき,版下時代と同じようなチェックを未だにしている人もいるようですが,時代に合わせたチェックの仕方を知っておくと,作業量はだいぶ減ると思います。
あっ,そうえいば,Illustratorで透明機能が付いたIllustrator9のときは,透明機能によるトラブルもよく耳にしました。そういうことも知っておくと,何かの役に立つかもしれませんね。
まとまりのない話になりましたが,PDFでの入稿以降しか知らない若い編集者の勉強にでもなれば幸いです。