2010年9月26日日曜日

カモノハシ

今年の移行措置で,中2から生物の進化が扱われるようになりました。

各教科書会社の補助教材を見てみると,カモノハシが扱われているところもあります。

このカモノハシについて,補助教材では,爬虫類から哺乳類への進化の証拠であったり,爬虫類の特徴を残した哺乳類といったような表現がされていたりしています。

しかし,このカモノハシについて,鳥類の特徴もありますよとの校正者さんからの指摘を受けて調べてみたところ,2008年に発表されたゲノム解読結果では,爬虫類と鳥類と哺乳類の特徴を同じくらいずつ持つようです。

とりあえず,インターネット上で見かけた情報サイトは,以下の通りです。

NEDO海外レポート
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1025/1025-06.pdf

AFP BBNews
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2388402/2908952

これまで私も,カモノハシについては補助教材のような認識でしたが,これを踏まえて,教材上での表現は検討し直したほうがよさそうです。

とはいっても,公立高校入試は教科書および補助教材に則って出題されるので,少なくとも今の中学2年生が受験する2年後の公立高校入試でカモノハシが取り上げられる場合は,補助教材での表現に則って出題されるものと思われます。

(正直なところ,「それでよいのか」と思わなくもないのですが…。)

2010年9月25日土曜日

新常用漢字…12年度導入⇒入試は15年度から

新常用漢字について,学校現場での導入は2012年度,入試での導入は2015年度からという報道がありました。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100925-OYT1T00040.htm

つまり,中学校での新学習指導要領が開始する2年後から開始です。

ということは,新学習指導要領版となる新教科書も,2012年度からの導入に向けて新常用漢字を追加するということでしょうか。

そうなると,来年の5月頃には発表される教科書を製作している教科書出版社の編集者さんたちは,この決定を受けて,これから多大な労力をかけて修正を加えていく作業が入るのでしょう。

印刷・製本等の時間を考えるとそれほど余裕が無い中,これから修正を加えてミスの無いように校正をするなどの工程を踏んでいくとなると,かなり大変だと思われます。

この結論を出すのであれば,決定が遅すぎではないでしょうか。

2010年9月20日月曜日

固体・液体・気体

新学習指導要領で,固体・液体・気体の状態を粒子で表して学習するようになります。

この内容については移行措置で平成21年度から学習がすでに始まっていますが,念のため取り上げておきます。

固体⇒液体⇒気体となるにつれて,規則正しく並んでいた状態から粒子の運動が激しくなって,粒子間の距離が大きくなっていきます。

1年生で学習する内容であり,分子という言葉を用いないので大丈夫だとは思いますが,この粒子と分子をごちゃ混ぜにして扱ってしまわないように気をつけましょう。

特に水の場合は,状態変化で液体から固体になるときは,水素結合の関係で体積が増えます。

他の物質の状態変化とは事情が異なるため,水と粒子の状態を関係させたような問題は作成しないほうが無難です。

2010年9月11日土曜日

「デジタル教育は日本を滅ぼす」

少し前の日経新聞に広告として掲載されていて気になっていた,田原総一朗著の「緊急提言! デジタル教育は日本を滅ぼす」(ポプラ社)を読みました。

タイトルとは裏腹にデジタル教育に関する内容は少なかったのですが,現在のデジタル教育が叫ばれるまでに至る,これまでの教育論の変化などを,さまざまな関係者の立場や話なども踏まえて述べられていました。

結論として,この本における田原氏の主張は,個人的には概ね賛同できました。

また改めて,「ゆとり教育」に対する自分の中での捉え方が,しっかりと肯定された気もします。

新学習指導要領になり学習内容が大幅に増えますが,教育としては「ゆとり教育」のままであるほうが,やはりよいかと思います。

しかし,その「ゆとり」を履き違えると,結局これまでと変わりません。

そこが難しいところです。

理科教材制作と話を結びつけると,執筆や編集に携わる人が知識詰め込み型のタイプであると,理科の本当の意味も本当の楽しさも,何もかもが伝わらず,理科ってつまらないな…ということが紙面から伝わってきます。

教材制作に携わる人も,ゆとり教育の本当の意味は何だったのかということをしっかりと受け止め,それを紙面に反映していかなければならないと個人的には思います。

新常用漢字続報

『196の新常用漢字,中学で「読み」指導へ 高校入試も?』という記事がありました。

http://www.asahi.com/national/update/0909/TKY201009080517.html?ref=rss

以前も書きましたが,理科に影響する新常用漢字はたくさんあります。

個人的には「ほ乳類」などのかな漢字混ざりは読みにくい上に意味も分かりにくいので,「哺乳類」というように漢字にしてしまったほうがよいと思っています。

しかし教材屋としては,このタイミングでまだ確定していないのであれば,現行通りにして欲しいというのが本音ですね。

校了間近のものすべてに変更を反映するのは,かなりの労力を要しますので…。

いずれにしても,もう少し見守りたいと思います。

2010年9月10日金曜日

原子量

新学習指導要領では,周期表を扱うことになっています。

その周期表についてどこまで扱うことになるかは想像の域を出ませんが,周期表を教材等で載せる場合,原子量も載せるかどうかで迷うことが出てくるかもしれません。

原子量は,同位体の相対質量や存在比などによって決まっていますが,それらが変わるなどの理由からなのか,ときどき変更があります。

最新の原子量については理科年表にも載っていますが,IUPAC関連のサイトにも最新の原子量が掲載されています。

http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/AtWt/

112番元素のコペルニシウムなども,ここであればちゃんと扱われています。

それにしても,周期表を扱うのであれば元素についても説明しないといけないと思うのですが,新指導要領において元素はどうなるのでしょうか。

これまでのように原子だけだと,表現の限界があるような気もします。

いずれにしても,新しい教科書が楽しみです。

2010年9月2日木曜日

光合成とBTB溶液

BTB溶液を溶かした水にオオカナダモを入れて光を当てると,水中の二酸化炭素が吸収されることから,光合成では二酸化炭素が使われることがわかる・・・という実験があります。

この実験は,光合成で発生する酸素の泡に二酸化炭素が取り込まれることによって水中の二酸化炭素が減少する可能性も否めないということで,教科書によっては扱っていないものもあります。

しかし,扱っている教科書もあるので,光合成によって水中の二酸化炭素が使用されて減少するとして,今日の話題は展開したいと思います。

この実験について教材で取り上げるとき,表現に少し注意が必要です。

まず,この実験を始めるにあたり,水にBTBを溶かします。

このときの水は水道水を使用する可能性が高く,その水道水はアルカリ性寄りであるため,水道水にBTB溶液を溶かすと,青色を示します。

この青色を示した水溶液に呼気を吹きこむことで,呼気中の二酸化炭素が水溶液中に溶けこみます。

この操作により,BTB溶液を緑色にします。

つまり,呼気によって二酸化炭素を水溶液中に溶けこませるのです。

そして,オオカナダモを入れて光合成を行わせることで,溶けこませた二酸化炭素が使用されて,青色に「戻る」のです。

最初から中性で緑色を示した水溶液があり,その中に二酸化炭素が溶けているわけではありませんので,ご注意ください。