昨日,国立国語研究所で行われた文字研究会のワークショップに行ってきました。
知り合いが発表するということもあり行ったのですが,なかなか楽しいワークショップでした。
さて,そのワークショップとは直接は関係ないのですが,文字について少々思ったので,話題に取り上げます。
現在,理科の教材の多くは,いわゆる明朝体といわれるフォントを使用しています。
小学校では,教科書体を用いることもありますが,理科であれば小学生用教材でも明朝体もそれなりにみかけます。
さて,文字研究の専門家ではないので詳しいことは知りませんが,明朝体とは中国の明から清の時代あたりの木版印刷等で発展した活字に由来があるようです。
また,明よりも昔の宋の時代にも木版印刷は存在しており,あまり馴染みはありませんが,宋朝体とよばれる活字もあるようです。
いずれにしましても,専門家ではないので,正確な情報を知りたい方は調べてみてください。
さて,活版とは,文字を木に彫ることによって始まったものですが,その際に曲線の多い楷書体を彫ることは難しかったため,直線を多用した明朝体とよばれるものが発展しました。
そのため,印刷業界では明朝体が主として用いられるようになったわけです。
日本においても少し前までは活字を並べた印刷が行われていたわけですから,写研,DTPと時代が進んでも,明朝体が業界における基本フォントとなるのもうなずけるでしょう。
さて,そんな明朝体は,あくまで彫りやすい文字ということでデザインされた文字ですから,いわゆる正しい漢字とは異なり,学校等で習う漢字,フォントで言えば教科書体と比べるとまったく違う字に見えるものも多々あります。
特に現代では,そのような明朝体を正しい漢字として間違えて覚えてしまっている人もいるようで,私もときどき,明朝体のデザインで文字を書く人を見かけます。
さて,ここから理科の話に少しずつ入ってくるのですが,パソコン等のコンピュータが発展することで,データで印刷物の制作をするようになりました。
しかし,コンピュータで用いられている文字コードというのは完璧ではありません。
例えば,葛飾区の「葛」の字,この字は正しい漢字ではありません。
正しくは,次のようになります。
書籍を制作する人にその知識があれば,意識して外字を使用して正しいものにするでしょうが,世の中の多くの書籍はJISコードそのままに載せているため,間違った漢字を見る機会のほうが現在は多いでしょう。
そのため,間違ったほうを正しい字だと思い込んでいる人のほうが多いのではないかと感じます。
このような文字として理科に影響してくるのが,「餌」という字です。
中学までは漢字を開くことが多いので影響はほとんどありませんが,高校以上では漢字を用いることもあります。
この「餌」という文字の食編がJISコードでは間違っています。
正しくはといっても明朝体なので,本当の意味で正しいかわかりませんが,次のようになります。
私もかつて,右の正しい字のように「餌」を書くときの食編を習ったのに,この業界に入ってからほとんどの餌が間違った食編になっていて,自分が間違っていたのか…と思ったことがあります。
しかし実際は,文字コードのほうがおかしかったわけです。
ただし,上記のものは明朝体です。3画目が横線になっているのが本当に正しいのかどうかが,私にはわかりません。
ブログを書く上で教科書体の外字が用意できなかったので,またどこかで教科書体の「餌」の字を見てみたいものです。
いずれにしましても,教材においては,せめてJISコードの間違いだけは修正しておきたいものです。
といっても,中学までの教材であれば,ほとんど気にすることはないと思いますが…。
なお,このJISコードですが,WindowsVistaでは修正されたものコードが搭載されるようになり,「葛」「餌」ほか複数の漢字が正しいものになりました。
しかし,それは環境依存文字ですので,DTPなどへもっていくと間違ったものへと戻ってしまうなどの不具合もあり,結局,印刷物の制作においては,編集や校正の方が気をつけるしかありません。
このように,漢字一つとっても,教材では意識しておいたほうがよいものがありますので,意識して制作するほうがよいでしょう。
ところで,いまだによくわからないない文字が,「シナプス間隙」等で使用する「隙」の字です。
右上は「小」,「少」のどちらが正しいのでしょうか。
私は高校時代「少」で覚えましたが,現在の教材はほぼすべて「小」ですし,国語辞典も「小」ですので,「小」が正しいのでしょう。
では,「少」を用いる字が存在するのはなぜでしょうか。
知っている人がいましたら,教えてください。
2010年1月28日木曜日
雪の天気用図記号
正しい雪の天気用図記号がわかりません。
数年前から迷っていますが,とりあえず教科書にあわせています。
教科書は,次のように示されています。
中心角60度の扇が6つ並んだ形です。
しかし,数年前に気象庁のサイトに載っていたものは,次のような形でした。
これは,「天気不明」の天気用図記号の中心に水平線を引いた形です。
どちらが正しいのでしょうか。
とりあえず,現在の気象庁のサイトには,天気用図記号の一覧が見当たりません。
もしかしたらあるのかもしれませんが,見つけられません。
なお,かつて気象庁のサイトに掲載されていた天気用図記号の一覧を載せているサイトがありましたので,ご紹介します。
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/kansoku-tenkizu.htm
教材制作においては教科書にそろえてつくっていくことになりますが,気になる存在です。
何かわかりましたら,教えていただければ幸いです。
数年前から迷っていますが,とりあえず教科書にあわせています。
教科書は,次のように示されています。
中心角60度の扇が6つ並んだ形です。
しかし,数年前に気象庁のサイトに載っていたものは,次のような形でした。
これは,「天気不明」の天気用図記号の中心に水平線を引いた形です。
どちらが正しいのでしょうか。
とりあえず,現在の気象庁のサイトには,天気用図記号の一覧が見当たりません。
もしかしたらあるのかもしれませんが,見つけられません。
なお,かつて気象庁のサイトに掲載されていた天気用図記号の一覧を載せているサイトがありましたので,ご紹介します。
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/kansoku-tenkizu.htm
教材制作においては教科書にそろえてつくっていくことになりますが,気になる存在です。
何かわかりましたら,教えていただければ幸いです。
2010年1月27日水曜日
進入と侵入
精子と卵が受精して,精子が卵の中に「しんにゅう」するときの「しんにゅう」は,どのような漢字を使うでしょうか。
おそらく「進入」が正しい漢字だと思います。
卵を精子が「侵している」わけではなく,「進んで入っていっている」だけなので,「侵」という字を使用するのはおかしいでしょう。
もちろん,高校の教科書では「進入」が使用されています。
ただ,ときどき「侵入」も混ざって使われているのが不可解ですが,おそらく誤字でしょう。
中学校の教科書では「進入」とは表現せず,無難に「入る」と表現しています。
しかし教材の中には「侵入」というあえて間違った漢字の熟語を使っているものをちらほらみかけます。
高校の教材では「進入」,中学では「入る」。
これで統一するのが無難かと思います。
おそらく「進入」が正しい漢字だと思います。
卵を精子が「侵している」わけではなく,「進んで入っていっている」だけなので,「侵」という字を使用するのはおかしいでしょう。
もちろん,高校の教科書では「進入」が使用されています。
ただ,ときどき「侵入」も混ざって使われているのが不可解ですが,おそらく誤字でしょう。
中学校の教科書では「進入」とは表現せず,無難に「入る」と表現しています。
しかし教材の中には「侵入」というあえて間違った漢字の熟語を使っているものをちらほらみかけます。
高校の教材では「進入」,中学では「入る」。
これで統一するのが無難かと思います。
2010年1月26日火曜日
細胞質と細胞質基質
中学の教材を見ていると,細胞質と細胞質基質をごっちゃにしてしまっているものを多々みかけます。
細胞質は,原形質のうち核を除いた部分で,細胞膜や液胞,葉緑体,ミトコンドリア,ゴルジ体などの細胞小器官を含みます。
細胞質基質は,細胞質のうち細胞小器官を除いた部分です。
東京書籍と啓林館の中学教科書を見てみると,ちゃんとそれを理解した表現になっており,動物細胞と植物細胞の共通する部分は,核と細胞膜であるというような表現をされています。
しかし,中学の多くの教材では,動物細胞と植物細胞の共通する部分として,核と細胞膜に加えて,「細胞質」も共通であると言ってしまっているものが多々あります。
一概に間違いとも言い切れませんが,細胞膜も細胞質ですし,葉緑体も細胞質なので,すべてが共通といえるわけでもありません。
おまけに図中の引き出し線は,あきらかに細胞質基質を示して細胞質といっているのであろうということが読み取れます。
教科書執筆者や編集者はしっかりと違いを理解しているようですが,教材執筆者や編集者,および先生方の中には,根強く勘違いし続けている人が多い部分だと考えられます。
注意が必要でしょう。
細胞質は,原形質のうち核を除いた部分で,細胞膜や液胞,葉緑体,ミトコンドリア,ゴルジ体などの細胞小器官を含みます。
細胞質基質は,細胞質のうち細胞小器官を除いた部分です。
東京書籍と啓林館の中学教科書を見てみると,ちゃんとそれを理解した表現になっており,動物細胞と植物細胞の共通する部分は,核と細胞膜であるというような表現をされています。
しかし,中学の多くの教材では,動物細胞と植物細胞の共通する部分として,核と細胞膜に加えて,「細胞質」も共通であると言ってしまっているものが多々あります。
一概に間違いとも言い切れませんが,細胞膜も細胞質ですし,葉緑体も細胞質なので,すべてが共通といえるわけでもありません。
おまけに図中の引き出し線は,あきらかに細胞質基質を示して細胞質といっているのであろうということが読み取れます。
教科書執筆者や編集者はしっかりと違いを理解しているようですが,教材執筆者や編集者,および先生方の中には,根強く勘違いし続けている人が多い部分だと考えられます。
注意が必要でしょう。
第四紀
新生代の第四紀が,165万年前(180万年前)から260万年前に変更されそうです。
YOMIURI ONLINE の記事にありました。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100121-OYT1T00714.htm
今後の教科書改訂では,変更される可能性があります。
ところで,1行目で「165万年前(180万年前)」と書いたのは,中学の教科書と高校の教科書で表記が違うからです。
中学の教科書では165万年前となっていますが,高校では180万年前となっていました。
(すべての教科書をチェックしたわけではありません)
上記 YOMIURI ONLINE でも180万年前でした。
何が正しいのやら…といった感じです。
機会があれば調べてみます。
2010/02/25 追加
YOMIURI ONLINEのリンクが切れていたので調べなおしてみたところ,日本第四紀学会のサイトに詳細が記されていました。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/qr/news/teigi09.html#100122
YOMIURI ONLINE の記事にありました。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100121-OYT1T00714.htm
今後の教科書改訂では,変更される可能性があります。
ところで,1行目で「165万年前(180万年前)」と書いたのは,中学の教科書と高校の教科書で表記が違うからです。
中学の教科書では165万年前となっていますが,高校では180万年前となっていました。
(すべての教科書をチェックしたわけではありません)
上記 YOMIURI ONLINE でも180万年前でした。
何が正しいのやら…といった感じです。
機会があれば調べてみます。
2010/02/25 追加
YOMIURI ONLINEのリンクが切れていたので調べなおしてみたところ,日本第四紀学会のサイトに詳細が記されていました。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/qr/news/teigi09.html#100122
2010年1月25日月曜日
臨界角
前回の光の屈折に関連する内容です。
光が水中から水面に向かって進むとき,入射角がある角度以上になると,その光は空気中に出ない状態になります。
これを全反射といいます。
中学ではこの程度の内容として習いますが,この全反射になる入射角にももちろん規則性があります。
それが臨界角です。
臨界角とは,屈折角がちょうど90度になるときの入射角のことをいます。
入射角が臨界角以上になると屈折光はなくなり,光はすべて反射しますので,これを全反射といいます。
では,この臨界角は何度でしょうか。
臨界角 i と,水に対する空気の相対屈折率を n12 とすると,i と n12 の間には,次の関係が成り立ちます。
sin i = n12 = n2 / n1
n1 =1.3330(水の屈折率),n2 =1.0003(空気の屈折率)なので,上の式は
sin i = 0.75041
これを解くと,
i ≒ 49°
となります。
つまり,入射角がおよそ49度以上になると,全反射することになります。
これを踏まえて中学理科教材でも作図する必要がありますが,いろいろと教材を見ていると,入射角が49度未満で全反射している図をときどきみかけます。
そのようなわけで,中学の教材といえども全反射の図を制作する際は,入射角が49度以上になるようにして,科学的に正しい図にするようにしたいものです。
光が水中から水面に向かって進むとき,入射角がある角度以上になると,その光は空気中に出ない状態になります。
これを全反射といいます。
中学ではこの程度の内容として習いますが,この全反射になる入射角にももちろん規則性があります。
それが臨界角です。
臨界角とは,屈折角がちょうど90度になるときの入射角のことをいます。
入射角が臨界角以上になると屈折光はなくなり,光はすべて反射しますので,これを全反射といいます。
では,この臨界角は何度でしょうか。
臨界角 i と,水に対する空気の相対屈折率を n12 とすると,i と n12 の間には,次の関係が成り立ちます。
sin i = n12 = n2 / n1
n1 =1.3330(水の屈折率),n2 =1.0003(空気の屈折率)なので,上の式は
sin i = 0.75041
これを解くと,
i ≒ 49°
となります。
つまり,入射角がおよそ49度以上になると,全反射することになります。
これを踏まえて中学理科教材でも作図する必要がありますが,いろいろと教材を見ていると,入射角が49度未満で全反射している図をときどきみかけます。
そのようなわけで,中学の教材といえども全反射の図を制作する際は,入射角が49度以上になるようにして,科学的に正しい図にするようにしたいものです。
2010年1月24日日曜日
浮かんで見える光の屈折の図
先日,うちの教材を使用していただいている先生から,ある質問をいただきました。
その質問とは,「水にコインが浮かぶ図がよくあるが,どのくらい浮かぶのか」という内容でした。
分かりやすいように,簡単に作図してみましょう。
とりあえず,入射角を60度とします。
そのときの屈折角は,屈折の法則「sin i /sin r = n (ただし,i は入射角,r は屈折角)」,および水の屈折率 n = 1.3330 より,およそ42度となります。
これを作図すると,次のようになります。
この図に,コインに対して向かって左右の端にも光の線を引くと次のようになります。
さらに,入射光の線を延長した線を点線で加えてみます。
この図に,単純に底に沈んでいるコインを垂直に上げた場合の線と,先ほど延長した線との交点の位置にコインが浮かんで見えると思っていました。次の図のようにです。
しかし,教科書を見ると,そうではないようなことに気づきました。
大日本図書では,ほぼこのような図として描かれているのですが,啓林館ではやや手前に浮き上がって見え,東京書籍ではコインを例とはせず,パドルを例にした図ではありますが,やや手前に浮かんで見えるような図となっているようです。
イメージとしては次のような図です。
この理由がわからず,自宅にある参考書や高校の教科書などを見ましたが,どこにも載っていません。
そこで,インターネットで調べてみたところ,OKWaveに参考となる質問とその解答がありました。
http://okwave.jp/qa/q3427826.html
この解答のNo.3に参考URLがあります。こちらです。
http://www.page.sannet.ne.jp/matukawa/kussetu.htm
こちらを読むと,だいぶ納得できます。
残りの解答も完全に理解しきれているわけではないため,簡潔にここで解説できませんが,いずれにしましても,コイン単体で見た場合には手前に浮いているように見えるのであろうということは理解できます。
そのようなわけで,今後はそのように作図していきたいと思います。
それにしても,中学理科といえど,科学の難しさを再認識させられました。
その質問とは,「水にコインが浮かぶ図がよくあるが,どのくらい浮かぶのか」という内容でした。
分かりやすいように,簡単に作図してみましょう。
とりあえず,入射角を60度とします。
そのときの屈折角は,屈折の法則「sin i /sin r = n (ただし,i は入射角,r は屈折角)」,および水の屈折率 n = 1.3330 より,およそ42度となります。
これを作図すると,次のようになります。
この図に,コインに対して向かって左右の端にも光の線を引くと次のようになります。
さらに,入射光の線を延長した線を点線で加えてみます。
この図に,単純に底に沈んでいるコインを垂直に上げた場合の線と,先ほど延長した線との交点の位置にコインが浮かんで見えると思っていました。次の図のようにです。
しかし,教科書を見ると,そうではないようなことに気づきました。
大日本図書では,ほぼこのような図として描かれているのですが,啓林館ではやや手前に浮き上がって見え,東京書籍ではコインを例とはせず,パドルを例にした図ではありますが,やや手前に浮かんで見えるような図となっているようです。
イメージとしては次のような図です。
この理由がわからず,自宅にある参考書や高校の教科書などを見ましたが,どこにも載っていません。
そこで,インターネットで調べてみたところ,OKWaveに参考となる質問とその解答がありました。
http://okwave.jp/qa/q3427826.html
この解答のNo.3に参考URLがあります。こちらです。
http://www.page.sannet.ne.jp/matukawa/kussetu.htm
こちらを読むと,だいぶ納得できます。
残りの解答も完全に理解しきれているわけではないため,簡潔にここで解説できませんが,いずれにしましても,コイン単体で見た場合には手前に浮いているように見えるのであろうということは理解できます。
そのようなわけで,今後はそのように作図していきたいと思います。
それにしても,中学理科といえど,科学の難しさを再認識させられました。
直流の電気用図記号
先週は体力的に疲れた1週間でした。
火曜日から金曜日まで出張,それも立ちっぱなしの業務ということもあり,普段はデスクワークが多いわたしにとっては,なかなか体に堪えました。
また,出張時にはノートPCを持って行っていないので,毎度更新が滞り気味です。
さて,書きたいことはいろいろとありますが,今日はとりあえず直流電流計と直流電圧計の電気用図記号について書きます。
平成14年度から使用されていた教科書では,次のようなものでした。
それが,平成18年度の改訂から,Aの下にある線がなくなって,次のようなものになりました。
これは,平成9年から平成11年にかけて発行されたJIS C 0607 電気用図記号において,編集時の間違いを見逃したまま,JIS C 0607 電気用図記号を発行してしまったことに影響があります。
教科書の電気用図記号は,このJIS C 0607 電気用図記号をもとにしており,これが正しいものと信頼して平成14年度の教科書から,各社A・Vの下に線が入っている電気用図記号を用いました。
しかし,信頼すべきJIS C 0607 電気用図記号に,編集上のミスがあったわけです。
JIS C 0607 電気用図記号は,国際規格であるIEC 60617の第2版をもとに作成されています。
そちらでは, 直流記号を次のように示しています。
つまり,直流電流計と直流電圧計の電気用図記号は,次のものが正しいことになります。
JIS C 0607おけるこの間違いの正誤表が,平成17年4月に出されたことにより,教科書も平成18年度版から対応することになりました。
しかし,詳しいことはわかりませんが,下側の線を3本にせずに,直流・交流のどちらでも使用することができる下線なしの表記となりました。
教科書会社によっては,補説として正しい直流電流計と直流電圧計の電気用図記号を載せているところもありますが,表記が変わった理由には,上記のような経緯があったからです。
一部の問題集などにおいては,この訂正がなされておらず,いまだに下側の線が2本のものがあります。
そのような間違いを見られたら,校正の際には指摘していただけるとよいかと思います。
火曜日から金曜日まで出張,それも立ちっぱなしの業務ということもあり,普段はデスクワークが多いわたしにとっては,なかなか体に堪えました。
また,出張時にはノートPCを持って行っていないので,毎度更新が滞り気味です。
さて,書きたいことはいろいろとありますが,今日はとりあえず直流電流計と直流電圧計の電気用図記号について書きます。
平成14年度から使用されていた教科書では,次のようなものでした。
それが,平成18年度の改訂から,Aの下にある線がなくなって,次のようなものになりました。
これは,平成9年から平成11年にかけて発行されたJIS C 0607 電気用図記号において,編集時の間違いを見逃したまま,JIS C 0607 電気用図記号を発行してしまったことに影響があります。
教科書の電気用図記号は,このJIS C 0607 電気用図記号をもとにしており,これが正しいものと信頼して平成14年度の教科書から,各社A・Vの下に線が入っている電気用図記号を用いました。
しかし,信頼すべきJIS C 0607 電気用図記号に,編集上のミスがあったわけです。
JIS C 0607 電気用図記号は,国際規格であるIEC 60617の第2版をもとに作成されています。
そちらでは, 直流記号を次のように示しています。
つまり,直流電流計と直流電圧計の電気用図記号は,次のものが正しいことになります。
JIS C 0607おけるこの間違いの正誤表が,平成17年4月に出されたことにより,教科書も平成18年度版から対応することになりました。
しかし,詳しいことはわかりませんが,下側の線を3本にせずに,直流・交流のどちらでも使用することができる下線なしの表記となりました。
教科書会社によっては,補説として正しい直流電流計と直流電圧計の電気用図記号を載せているところもありますが,表記が変わった理由には,上記のような経緯があったからです。
一部の問題集などにおいては,この訂正がなされておらず,いまだに下側の線が2本のものがあります。
そのような間違いを見られたら,校正の際には指摘していただけるとよいかと思います。
2010年1月17日日曜日
高校と中学
忙しい日々が続いております。
先週は,毎日遅くまで残業があり,ひどい日は帰宅が午前様のときもありました。
現職になってからの仕事による午前様は初めてかもしれません。
(出張や外出,遅くまで呑んでの午前様はときどきありますが…。)
今年,来年と改訂作業で追われることとなり,どうなるか今から少々不安ですね。
さて,今年もセンター試験が始まりました。
最近は中学以下の仕事ばかりでしたので,ふと高校の仕事を考えたときに,先週のブログで書いた「速さ」と「速度」の表記について少々疑問が上がりました。
そういえば,「速さ」はスカラー量を表すときに使用する用語で,「速度」はベクトル量を表すときに使用する用語だったなと…。
高校の仕事をしているときは気をつけているものが,中学以下の仕事をしているときには意識から外れてしまうことがある典型です。
似たようなことが,仕事をしている中で出会う問い合わせなどにも見られます。
例えば,「細胞質」と「細胞質基質」の用語。
「細胞質」は核以外の核を取り巻くもの,つまり,液胞や葉緑体,また細胞膜も細胞質です。
しかし,この細胞質を細胞質基質(細胞質から細胞小器官を取り除いた部分)と同意と誤解して理解されている方も意外と多くいるようです。
例えば,「植物と動物の共通する部分は」との問いに対し,「核・細胞膜・細胞質」と答えてしまうようにです。
もし生徒がこのような解答をしてしまった場合,まったく間違いとも言い切れないので,またたちが悪いのですが,そもそもそのような解答を生徒にされる可能性のある問題というのは,よい問題とは言えないでしょう。
ほかにも,身体の反射の例に見られます。
中学では指などが熱いものに触れたときなどに起こる屈筋反射,つまり脊髄反射とその反射弓を扱いますが,それ以外の反射はほとんど触れません。
つまり,脊髄反射の反射弓のみを例としてあげて,人体の反射とはこういうものですよと示します。
しかし,反射には瞳眼反射などの中脳反射や,唾液分泌の延髄反射などもありますので,ひとくくりでまとめること自体に無理があります。
でも中学までの知識で教えられている方の中には,すべての反射は同じ反射弓だと理解しまっている方もいるようです。
これは,教材制作においても大事なことです。
いくら中学の教材とはいえ,扱っていることは科学的内容ですので間違いがあってはなりません。
教材制作の際には,学習学年を超えた知識をもって制作にあたらなければなりません。
先週は,毎日遅くまで残業があり,ひどい日は帰宅が午前様のときもありました。
現職になってからの仕事による午前様は初めてかもしれません。
(出張や外出,遅くまで呑んでの午前様はときどきありますが…。)
今年,来年と改訂作業で追われることとなり,どうなるか今から少々不安ですね。
さて,今年もセンター試験が始まりました。
最近は中学以下の仕事ばかりでしたので,ふと高校の仕事を考えたときに,先週のブログで書いた「速さ」と「速度」の表記について少々疑問が上がりました。
そういえば,「速さ」はスカラー量を表すときに使用する用語で,「速度」はベクトル量を表すときに使用する用語だったなと…。
高校の仕事をしているときは気をつけているものが,中学以下の仕事をしているときには意識から外れてしまうことがある典型です。
似たようなことが,仕事をしている中で出会う問い合わせなどにも見られます。
例えば,「細胞質」と「細胞質基質」の用語。
「細胞質」は核以外の核を取り巻くもの,つまり,液胞や葉緑体,また細胞膜も細胞質です。
しかし,この細胞質を細胞質基質(細胞質から細胞小器官を取り除いた部分)と同意と誤解して理解されている方も意外と多くいるようです。
例えば,「植物と動物の共通する部分は」との問いに対し,「核・細胞膜・細胞質」と答えてしまうようにです。
もし生徒がこのような解答をしてしまった場合,まったく間違いとも言い切れないので,またたちが悪いのですが,そもそもそのような解答を生徒にされる可能性のある問題というのは,よい問題とは言えないでしょう。
ほかにも,身体の反射の例に見られます。
中学では指などが熱いものに触れたときなどに起こる屈筋反射,つまり脊髄反射とその反射弓を扱いますが,それ以外の反射はほとんど触れません。
つまり,脊髄反射の反射弓のみを例としてあげて,人体の反射とはこういうものですよと示します。
しかし,反射には瞳眼反射などの中脳反射や,唾液分泌の延髄反射などもありますので,ひとくくりでまとめること自体に無理があります。
でも中学までの知識で教えられている方の中には,すべての反射は同じ反射弓だと理解しまっている方もいるようです。
これは,教材制作においても大事なことです。
いくら中学の教材とはいえ,扱っていることは科学的内容ですので間違いがあってはなりません。
教材制作の際には,学習学年を超えた知識をもって制作にあたらなければなりません。
2010年1月11日月曜日
反対語の閉じ開き
漢字の閉じ開きについては,12月10日にも少し取り上げました。
今日は,反対語の閉じ開きを少し考えます。
漢字の閉じ開きには各社基準があるわけですが,その基準をどうするかということを最近も考えています。
そこで気になったのが,「前・後」「厚い・薄い」「速い・遅い」などの反対語です。
もちろんいま取り上げた3つだけでなく,気になるものは多々あります。
しかし,とりあえずこの3点を例に話してみます。
まず,「前・後」です。
わたしは,「後」を開くことにしています。
文章中で「~したあと」というように,開いて示します。
しかし,このように「あと」のみで用いている場合はよいのですが,「~する前と…したあとでは」というように用いた場合,少々しっくりこない気がしてしまいます。
やはり,対応する反対語はともに閉じて「~する前と…した後では」というようにしたほうが読みやすいのでは…と考えてしまいます。
次に「厚い・薄い」についてです。
「厚い」という字は,理科教材の中では「厚みがある」という,「ものの厚さ」などの意味でしか使用しません。そのため,漢字でも問題ありません。
対して「薄い」は,「厚みが薄い」という意味以外に,「淡い」という意味でも使用します。
この「淡い」という意味のとき,中学理科教材では開いて「うすい」とすることが多いようです。
そのため,それにあわせてか厚みが薄いときも「うすい」と開く傾向があるようなないような…。
そうなると,「厚い本とうすい本」というように,同じ常用漢字なのに,なぜか閉じたものと開いたものが並ぶことになり,何とも読みにくく,格好悪い感じになります。
最後に「速い・遅い」について。
まず,「速い」ですが,これにも変な傾向があります。
それは,「速さ」は漢字なのに,「はやい」はひらがなという傾向です。
「はやい」には「速い」と「早い」があり,その使い分けも含めて考えさせるよりは,ひらがなにしておこうという配慮があるのかもしれません。本当のことは分かりませんが…。
しかし,速度の意味で「速さ」と漢字にしているのなら,「速い」と漢字にしてしまっても大きな問題はないように感じます。
「遅い」についても常用漢字なので,「はやい」にあわせて「おそい」とひらがなにするよりも,「速い・遅い」とともに漢字にしたほうが,意味の理解の上でも認識しやすいのではないでしょうか。
常用漢字は中学卒業までに習うものであるため,学習時期によっては常用漢字といえども習っていない漢字も多々あるでしょう。
そのため,使用する常用漢字に配慮をすることは結構なことのように思います。
しかし,教科の内容を学習する上では習った習っていないよりは,意味の上で理解しやすいほう(漢字・ひらがな)を用いるほうが,より理解に結びつくのではというのが持論です。
だからといってすべて漢字にできないのが教材なので,今後もこの葛藤が続きそうです。
今日は,反対語の閉じ開きを少し考えます。
漢字の閉じ開きには各社基準があるわけですが,その基準をどうするかということを最近も考えています。
そこで気になったのが,「前・後」「厚い・薄い」「速い・遅い」などの反対語です。
もちろんいま取り上げた3つだけでなく,気になるものは多々あります。
しかし,とりあえずこの3点を例に話してみます。
まず,「前・後」です。
わたしは,「後」を開くことにしています。
文章中で「~したあと」というように,開いて示します。
しかし,このように「あと」のみで用いている場合はよいのですが,「~する前と…したあとでは」というように用いた場合,少々しっくりこない気がしてしまいます。
やはり,対応する反対語はともに閉じて「~する前と…した後では」というようにしたほうが読みやすいのでは…と考えてしまいます。
次に「厚い・薄い」についてです。
「厚い」という字は,理科教材の中では「厚みがある」という,「ものの厚さ」などの意味でしか使用しません。そのため,漢字でも問題ありません。
対して「薄い」は,「厚みが薄い」という意味以外に,「淡い」という意味でも使用します。
この「淡い」という意味のとき,中学理科教材では開いて「うすい」とすることが多いようです。
そのため,それにあわせてか厚みが薄いときも「うすい」と開く傾向があるようなないような…。
そうなると,「厚い本とうすい本」というように,同じ常用漢字なのに,なぜか閉じたものと開いたものが並ぶことになり,何とも読みにくく,格好悪い感じになります。
最後に「速い・遅い」について。
まず,「速い」ですが,これにも変な傾向があります。
それは,「速さ」は漢字なのに,「はやい」はひらがなという傾向です。
「はやい」には「速い」と「早い」があり,その使い分けも含めて考えさせるよりは,ひらがなにしておこうという配慮があるのかもしれません。本当のことは分かりませんが…。
しかし,速度の意味で「速さ」と漢字にしているのなら,「速い」と漢字にしてしまっても大きな問題はないように感じます。
「遅い」についても常用漢字なので,「はやい」にあわせて「おそい」とひらがなにするよりも,「速い・遅い」とともに漢字にしたほうが,意味の理解の上でも認識しやすいのではないでしょうか。
常用漢字は中学卒業までに習うものであるため,学習時期によっては常用漢字といえども習っていない漢字も多々あるでしょう。
そのため,使用する常用漢字に配慮をすることは結構なことのように思います。
しかし,教科の内容を学習する上では習った習っていないよりは,意味の上で理解しやすいほう(漢字・ひらがな)を用いるほうが,より理解に結びつくのではというのが持論です。
だからといってすべて漢字にできないのが教材なので,今後もこの葛藤が続きそうです。
2010年1月7日木曜日
音引き
外来語に由来するカタカナ用語の末尾の音引きをどうするか。
この話題は,編集や制作をしているとときどき話題に出てくるかと思いますが,2008年の7月25日にこの話題が少し大きく取り上げられました。
それは,マイクロソフトが「マイクロソフト製品ならびにサービスにおける外来語カタカナ用語末尾の長音表記の変更について 」というプレスリリースを発表したからです。
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3491
マイクロソフトはそれまで,「外来語カタカナ用語末尾の長音処理に関しては,JIS 用語や学術用語に規定されていない用語について,『2音の用語は長音符号を付け,3音以上の用語の場合は(長音符号を)省くことを “原則” とする』主旨の規定に則した表記ルールを採用する」としていました。
しかし,そのプレスリリースにおいて,「国語審議会の報告を基に告示された1991年6月28日の内閣告示第二号をベースにしたルールへ原則準拠する」ということとなりました。
さて,これが理科教材制作とどう結びついてくるかというと,例えば「コンピュータ」なのか「コンピューター」なのかということです。
中学理科に限定すれば,末尾の音引きを意識するような用語はそれほどありません。
しかし,「コンピュータ」については,やはりずっと気になる用語ではあります。
教科書をはじめとする教育関連教材の多くは,編集者が意識しているだろうと思われるものについては,だいたいマイクロソフトと同様なルールに則っているような気がします。
(または教科書に右へならえなのか,またはたまたまなのかもしれませんが…)
つまり,「computer」は「com-pu-ter」で3音なので,末尾の音引きは省略し,「コンピュータ」と表記しています。
しかし,多くの人は「コンピューター」と発音するでしょう。
その実際の発音と表記の誤差をなくしたほうがよいというのがマイクロソフトの考えです。
では,教育関連図書や教材は今後どうなっていくのでしょうか。
教科書については平成24年度の新教科書が出てみないことにはわかりません。
しかし,新学習指導要領はすでに出ているので,文部科学省における表記については見ることができます。
確認したところ,「コンピュータ」となっていました。
ちなみに,文部科学省のサイトでも「スーパーコンピュータ」というように,末尾の音引きは省略されています。
というわけで,しばらくは「コンピュータ」でいくことになりそうです。
しかし,動向はときどき気にしておいたほうがよいかもしれません。
この話題は,編集や制作をしているとときどき話題に出てくるかと思いますが,2008年の7月25日にこの話題が少し大きく取り上げられました。
それは,マイクロソフトが「マイクロソフト製品ならびにサービスにおける外来語カタカナ用語末尾の長音表記の変更について 」というプレスリリースを発表したからです。
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3491
マイクロソフトはそれまで,「外来語カタカナ用語末尾の長音処理に関しては,JIS 用語や学術用語に規定されていない用語について,『2音の用語は長音符号を付け,3音以上の用語の場合は(長音符号を)省くことを “原則” とする』主旨の規定に則した表記ルールを採用する」としていました。
しかし,そのプレスリリースにおいて,「国語審議会の報告を基に告示された1991年6月28日の内閣告示第二号をベースにしたルールへ原則準拠する」ということとなりました。
さて,これが理科教材制作とどう結びついてくるかというと,例えば「コンピュータ」なのか「コンピューター」なのかということです。
中学理科に限定すれば,末尾の音引きを意識するような用語はそれほどありません。
しかし,「コンピュータ」については,やはりずっと気になる用語ではあります。
教科書をはじめとする教育関連教材の多くは,編集者が意識しているだろうと思われるものについては,だいたいマイクロソフトと同様なルールに則っているような気がします。
(または教科書に右へならえなのか,またはたまたまなのかもしれませんが…)
つまり,「computer」は「com-pu-ter」で3音なので,末尾の音引きは省略し,「コンピュータ」と表記しています。
しかし,多くの人は「コンピューター」と発音するでしょう。
その実際の発音と表記の誤差をなくしたほうがよいというのがマイクロソフトの考えです。
では,教育関連図書や教材は今後どうなっていくのでしょうか。
教科書については平成24年度の新教科書が出てみないことにはわかりません。
しかし,新学習指導要領はすでに出ているので,文部科学省における表記については見ることができます。
確認したところ,「コンピュータ」となっていました。
ちなみに,文部科学省のサイトでも「スーパーコンピュータ」というように,末尾の音引きは省略されています。
というわけで,しばらくは「コンピュータ」でいくことになりそうです。
しかし,動向はときどき気にしておいたほうがよいかもしれません。
2010年1月5日火曜日
あけましておめでとうございます
新年最初の更新となります。
今年は改訂作業が多々ある予定で,昨年以上に忙しくなることが予想されます。
しかし,作業が増えるほど,制作において気になるべきことが多々出てくることでしょう。
気づいたことはなるべく早くここへアップし,ここをご覧頂いている皆様の仕事に役立てていただければと思っております。
とはいうものの,忙しすぎて更新がおろそかになりそうな予感がなきにしもあらずですが…。
いずれにしましても,本年もよい理科教材制作ができますように,日々精進していこうかと思っております。
本年もよろしくお願いいたします。
今年は改訂作業が多々ある予定で,昨年以上に忙しくなることが予想されます。
しかし,作業が増えるほど,制作において気になるべきことが多々出てくることでしょう。
気づいたことはなるべく早くここへアップし,ここをご覧頂いている皆様の仕事に役立てていただければと思っております。
とはいうものの,忙しすぎて更新がおろそかになりそうな予感がなきにしもあらずですが…。
いずれにしましても,本年もよい理科教材制作ができますように,日々精進していこうかと思っております。
本年もよろしくお願いいたします。
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