漢字の閉じ開きについては,12月10日にも少し取り上げました。
今日は,反対語の閉じ開きを少し考えます。
漢字の閉じ開きには各社基準があるわけですが,その基準をどうするかということを最近も考えています。
そこで気になったのが,「前・後」「厚い・薄い」「速い・遅い」などの反対語です。
もちろんいま取り上げた3つだけでなく,気になるものは多々あります。
しかし,とりあえずこの3点を例に話してみます。
まず,「前・後」です。
わたしは,「後」を開くことにしています。
文章中で「~したあと」というように,開いて示します。
しかし,このように「あと」のみで用いている場合はよいのですが,「~する前と…したあとでは」というように用いた場合,少々しっくりこない気がしてしまいます。
やはり,対応する反対語はともに閉じて「~する前と…した後では」というようにしたほうが読みやすいのでは…と考えてしまいます。
次に「厚い・薄い」についてです。
「厚い」という字は,理科教材の中では「厚みがある」という,「ものの厚さ」などの意味でしか使用しません。そのため,漢字でも問題ありません。
対して「薄い」は,「厚みが薄い」という意味以外に,「淡い」という意味でも使用します。
この「淡い」という意味のとき,中学理科教材では開いて「うすい」とすることが多いようです。
そのため,それにあわせてか厚みが薄いときも「うすい」と開く傾向があるようなないような…。
そうなると,「厚い本とうすい本」というように,同じ常用漢字なのに,なぜか閉じたものと開いたものが並ぶことになり,何とも読みにくく,格好悪い感じになります。
最後に「速い・遅い」について。
まず,「速い」ですが,これにも変な傾向があります。
それは,「速さ」は漢字なのに,「はやい」はひらがなという傾向です。
「はやい」には「速い」と「早い」があり,その使い分けも含めて考えさせるよりは,ひらがなにしておこうという配慮があるのかもしれません。本当のことは分かりませんが…。
しかし,速度の意味で「速さ」と漢字にしているのなら,「速い」と漢字にしてしまっても大きな問題はないように感じます。
「遅い」についても常用漢字なので,「はやい」にあわせて「おそい」とひらがなにするよりも,「速い・遅い」とともに漢字にしたほうが,意味の理解の上でも認識しやすいのではないでしょうか。
常用漢字は中学卒業までに習うものであるため,学習時期によっては常用漢字といえども習っていない漢字も多々あるでしょう。
そのため,使用する常用漢字に配慮をすることは結構なことのように思います。
しかし,教科の内容を学習する上では習った習っていないよりは,意味の上で理解しやすいほう(漢字・ひらがな)を用いるほうが,より理解に結びつくのではというのが持論です。
だからといってすべて漢字にできないのが教材なので,今後もこの葛藤が続きそうです。