2009年10月25日日曜日

移行措置スケジュール

新学習指導要領の移行措置が今年(平成21年度)から始まっていますが,念のため記しておきます。


中学校理科の移行措置はなかなか複雑で,意外と現場の先生方や父兄の方が理解していないということも多いようです。

もちろん教材を制作している私などはしっかり理解しているつもりではありますが,移行措置が細かすぎてときどき混乱を起こしてしまいます。


それでは,順番にあげていきましょう。



●平成21年度

1年生と3年生で移行措置が始まりました。

1年生では,「種子をつくらない植物のなかま」などの追加事項のほか,学年間移動で3年生で習うことになった「力のつり合い」などが削除になりました。

3年生では,「仕事とエネルギー」などの追加事項が始まりました。


●平成22年度

1年生と3年生の移行措置は平成21年度のままで,2年生(平成21年度は1年生)にも移行措置が始まります。

2年生の移行措置の内容は,「電流が電子の流れであること」などの追加のほか,3年生から「酸化と還元」や「化学変化と熱」が移動してくるなどもあります。


●平成23年度

3年生において,さらなる移行措置があります。

平成22年度までは3年生で履修していた「酸化と還元」や「化学変化と熱」が削除されたり,1年生から移動してきた「力のつり合い」などが追加されたりと,また複雑な移行措置となります。



さて,おさえておきたいことの1つは,平成22年度の3年生と平成23年度の3年生が違うということです。

移行措置によって平成21年度に入学した生徒は,一応新学習指導要領での学習となっていますが,同時に移行措置が行われているそれより上の学年の生徒は,完全な新学習指導要領ではありません。

このあたりを現場の先生方などが意外とわかっていない可能性があります。


また,教材制作の立場でいうと,微妙な部分が多々見え隠れします。


例えば,「酸・アルカリ・中和」が1年生から3年生に移動しました。

では,「気体の性質」で二酸化炭素が水に溶けて酸性を示したり,アンモニアが水に溶けてアルカリ性を示すというところの表現はどうしたらよいのでしょうか。

酸性・アルカリ性については小学生でも習っているため,中和という言葉さえ使わなければよいのでしょうか。

また,BTB溶液は使ってよいのでしょうか。1年で行う2分野の光合成と呼吸の実験などでもBTB溶液は使いますので,そういうところとの整合性とはどうしたらよいのでしょうか。


「化学変化と熱」が2年生に下りてきますが,そこで「エネルギー」という言葉は使ってよいのでしょうか。

「エネルギー」の概念は3年生で初めて学習することになるはずです。ということは,新指導要領の「化学変化と熱」では,「熱が出入りする」という表現とし,「熱エネルギーが出入りする」はダメなのでしょうか。

しかし,1年生の光合成などでは「光のエネルギー」というような表現も使いますので,「○○エネルギー」ではなく「○○のエネルギー」という表現なら大丈夫なのでしょうか。


こんな微妙な部分の疑問が多々あります。

平成24年度の新教科書が出るまでは,文部科学省が意図しているところは正直分かりません。
しかし,教科書が出る前に教材作りをしなければならない場面は多々出てきます。

そのため,結局は私なりの解釈で進めていかなければなりませんが,それにしても悩ましい問題ばかりです。