2009年9月10日木曜日

大気の大循環

22年度の移行措置で,大気の循環が加わります。

現行の指導要領外ではありますが,現行の中学理科の教科書(2分野下)には,発展事項として,この大気の循環が扱われている準拠もあります。

とりあえず自宅にある3準拠(東京書籍・啓林館・大日本図書)を見てみると,それぞれ発展事項として取り扱われていました。

東京書籍はp.27,啓林館はp.34,大日本図書はp.28にそれぞれ載っています。

さて,この大気の大循環モデルですが,中緯度域の垂直循環を矢印で示すときはどうしたらよいのでしょうか。

北半球で考えてみます。

まず,低緯度付近ではハドレー循環が起こっており,あたたかい大気が上昇して中緯度域に運ばれ,中緯度域で下降し,地上の風である貿易風となって低緯度域に流れています。

高緯度域では大気が冷たいため下降気流が起こり,地上を極編東風が中緯度域まで吹き,中緯度域で上昇気流が起こります。そして,上空の風が高緯度域に流れます。

となると,中緯度域ではハドレー循環による亜熱帯高圧帯での下降気流により北上する地上の風が吹き,高緯度低圧帯で上昇気流を起こし,上空は南下する風が吹くように考えられます。

しかし,そんなに単純ではないようです。
とりあえず,低緯度域と高緯度域の物理的な大気の循環に対して,中緯度域は見た目上,または理論上の循環のようであり,これをフェレル循環と呼ぶようです。

さて,教科書に移ってみます。

啓林館の大気の循環の図を見ると,上記の理屈とはことなり,中緯度地域では地上の風も上空の風も北上しています。

対して東京書籍と大日本図書では,垂直断面の大気の循環がなく,偏西風波動が示されています。

この偏西風波動が曲者のようです。

啓林館のホームページに「ユーザの広場」という解説ページがあります。
http://www.keirinkan.com/kori/kori_earth/kori_earth_1_kaitei/contents/ea-1/3-bu/3-2-2.htm
(ここにいろいろと詳しく説明されおりますので,詳細はそちらをごらんください。)

地上の風は偏西風として北上しているのですが,中緯度域では上空にも偏西風が吹いており,これが南北に循環しています。これが偏西風波動で,これをもって啓林館の教科書では北上する矢印のみを示しているのかもしれません。

残念ながら,啓林館の高校地学1の教科書が自宅になく,確認できませんが,おそらくそんなところなのかもしれません。

ちなみに,数研出版の地学1の教科書には,北緯30度より北の中・高緯度地域の南北断面循環は明確でないと記されていますので,ここの大気の垂直断面図を示すのは難しいのでしょう。

また,実教出版の地学1の教科書には垂直循環がのっていますが,中緯度域の図は,上記啓林館のユーザの広場の図のように,地上の風は北上し,上空の風は循環しているというような表現です。

いずれにしましても,ここは再度勉強しなおさないと,私も理解が微妙です。

上記の説明も間違っている可能性がありますので,ご了承を。


ところで,結論はどうすべきか…というと,中学教材においての表現は「悩みます」です。