今日は,移行措置の「遺伝の規則性と遺伝子」の話です。
平成21年度の中学3年生の移行措置で,「遺伝の規則性と遺伝子」が始まりました。
この単元について,各教科書会社の補助教材を見てみると,優性の法則が扱われています。
この優性の法則について,疑問点をあげてみます。
さて,メンデルの3法則と呼ばれるものに,「優性の法則」,「分離の法則」,「独立の法則」があります。
現行の高校の教科書にも,これら3つの法則がメンデルの法則であるような表現があると思います。
しかし,この3つの法則のうち,優性の法則については,法則ではないのではないかという考え方があります。
そもそも,メンデルの3法則ということばを用いたのはメンデルではなく,メンデルの死後,同じような研究をしていた科学者がメンデルがすでに発見したことを知り,そのように命名したのだったと思います。
この法則として広く知れ渡るようになった3つの法則ですが,優性の法則には例外やはっきりしないものが多く,法則として成り立っていないのではないかという話があります。
一昨年の文科省からの新学習指導要領に関する説明会でも,世界的には優性の法則は法則として教科書に扱われていないため,新学習指導要領には載せなかったと言っていました。
そのようなわけで,補助教材で優性の法則は扱われたとしても補足説明程度だろうと思っていたのですが,蓋を開けてみれば,本文中に太字で扱われている準拠もありました。
もともと補助教材は検定を受けないという報道だったと思うのですが,実際は文科省が確認をしており,文科省がチェックしたのに補助教材に載ってしまった優性の法則。
このことは,平成24年度からの新教科書で優性の法則を扱ってもよいということとイコールになるのでしょうか。
将来的に日本でも優性の法則がなくなる可能性が高いとは思いますが,今回載せてしまえば,あと10年は日本で優性の法則を扱うということとなります。
世界的な常識はわかりませんが,間違っていると思われていることを載せてしまうのはいかがなものかとも思います。
結論は何も出ていませんが,とりあえず優性の法則の動向に意識を向けておくのもよいかもしれません。