最近ではMS Wordなどで原稿を入稿することが多く,原稿で計算式が出てくれば,計算式において使われていた数字や算用記号などのデータを,そのまま組版で流用してしまうこともあります。
そんなときよく困るのが,上記算用記号が,1バイトフォントで組みあがってくることです。
以前にも書きましたが,1バイトフォントは欧文での使用をベースにデザインされています。
そのため,印刷用フォントで組みあがってきた計算式を見ると,算用記号が文字の中心より少し下がっていることがあります。
これが何とも格好悪いこと。
フォントによっては,バランスよく中央にくるようにデザインされたものもありますが,すべてのフォントがそうというわけではないのが,また困ります。
例えば,次のものは小塚明朝R(OTF:Open Type Font)のものです。
1バイトの+と=の位置が,何とも格好悪いですね。
なお,話の流れの都合上,答えにも+をつけているのでご了承ください。
では,+と=を2バイトにしてみると,このようになります。
1バイトに比べてかなりよくなりました。
しかし個人的には,少々数字に比べて大きすぎるデザインかなとも思います。
なお,欧文と和文の間の文字組みアキ量設定は0%になっておりますので,以下そのような形での計算式であるということ前提でご覧ください。
では,モリサワで試してみましょう。
モリサワのリュウミンR(OTF)で+と=を1バイトで組むと,このようになります。
モリサワのOTF場合は,和文の中央にくるようにデザインされているようなので,とりあえず下がっていてバランスが悪いということはないようです。
しかし,和文中に組み込むには,こじんまりとしすぎた計算式が,どうもしっくりこないような気もします。
まあ,そこまでいいだすとこだわり過ぎだと思われるかもしれませんが,ちょっとこだわって話しを進めましょう。
では,リュウミンRで2バイトにしてみます。
2バイト,つまり全角になったわけですが,リュウミンの2バイトについては,+や=に限らず,-,×,÷なども,小ぶりの左右に小さいデザインです。
そのため,全角となると文字間のアキが気になります。
とくに,上記の式では=と+の間のアキが気になりませんか?
では,バランスのよいフォントに変えてみましょう。
個人的には,じゅん101の算用記号が好きなので,+と=のみをじゅん101の2バイトに変更します。
バランスよくなった気がしませんか?
しかし,1バイトにすると,先ほどのリュウミンよりくっつきすぎているように見えるので,気をつけましょう。
さて,最後に算用記号の1バイトで厄介なのが,-(マイナス)です。
小塚明朝RにしてもリュウミンRにしもじゅん101にしても,すべて最悪です。
マイナスではなく,ハイフンですね。欧文では,ハイフンもマイナスも同じなので,しょうがない話です。
ただし,小塚明朝は他の算用数字も下がっているため,逆にバランスよく見えますが,リュウミンやじゅんにいたっては,マイナスのみ下がっているため,すごく違和感を覚えます。
しかし,OTFであれば異体字*切り替えができるため,中央に配置されたマイナスに変更することも可能なので,最低それくらいはしたいですね。
*同じ字で異なるデザインのものや異なる字体のもの。
例えば普通の「高」に対して,いわゆる「ハシゴ高」とよばれるものが「高」の異体字。
とまあ,気にならなければ気にならないし,無理して修正することもない話かもしれませんが,見栄えをよくした計算式を求めるなら,数字と算用数字の間のアキのバランスと,1バイトのマイナスについては,多少は意識したいものです。
私はやっぱり,リュウミンRの1バイトの数字に,じゅん101の2バイトの算用記号を使うのが好きですね。
なお,これが高校数学・物理以上の数式になってくると,こだわり箇所はもっと増えるので,そのお話はまた機会があれば致します。