2009年9月24日木曜日

水素

9月23日に,三鷹市の市民協働センターで行われたサイエンスカフェに行ってきました。

日本の理科教育界の礎を築き,サイエンスショーの草分け的存在として知られている縣秀彦さん,左巻健男さん,滝川洋二さんの3名がゲストとして招かれ,「科学を文化に」をテーマに語られました。

さて,そのなかで左巻さんのお話の中で,水素に関する実験が行われました。

炭酸水素ナトリウム水溶液を電気分解して水素と酸素を発生させ,その水素と酸素が混ざった気体をシャボン玉に閉じ込めます。そのシャボン玉を点火すると,「パンッ!」と激しい音を立てて燃えるという実験です。

中学校の教科書では金属にうすい塩酸を加えて,それを水上置換などによって試験管に集めて,それにマッチの火を近づけると,水素が爆発して燃えて水ができることを学びます。

また,教科書には水素の発生口に直接火を近づけないようにとか,水素と酸素が混ざり合った状態で火がつくと激しい爆発が起こり危険であることが記されています。

さらに予備知識として,水素爆弾などが危険であったり,ロケットエンジンに液体水素が用いられているなど,水素はかなり大きな化学エネルギーを備えているのであろうということも想像できるかもしれません。

しかし,それを実感する機会というのはなかなか得られません。

高校入試対策教材などでも,「ポンッ」と音を立てて燃えるなど,それほど大きなエネルギーを持っているという印象は得られない始末です。

その実感を,このサイエンスカフェで得ることができました。

直径1~2cm程度のシャボン玉を点火すると,かなり激しい音で「パンッ!」という音とともに水ができました。

文字で表現しても伝わりにくいかもしれませんが,かなりのものです。

さらにその水素と酸素の混合気体を3~5mくらいの細い透明なチューブに入れて同じように点火したところ,同じく激しい音がなりました。

この実験を公教育の現場でやることは難しいかもしれませんが,実感をともなう科学とは,こういうことかもしれません。


このサイエンスカフェの話の中で,スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている高校で理科の実験をしていないところがあるという実態を聞きました。

実験をやることによってテストや模試の成績が下がることは許されないため,結果として知識偏重の授業となってしまっているようです。

実験・観察がすべてではないですが,少々さびしいお話です。


また,理科教材を制作している私が,紙面上だけでの知識で制作していることの危うさも,少々感じてしまいました。

実験をしっかり行っているような現場の先生方の意見を聞いてつくられる教科書と違い,教材はそのような方々に手伝っていただくことは少ないかと思います。

教科書までとはいわないまでも,少しでも実感の伴った教材が制作できればと感じられたサイエンスカフェでした。