2010年2月28日日曜日

Wordで原稿執筆02:英数字用のフォント

Wordで原稿執筆,2回目です。

前回,ページ設定を行いました。

今回は,英数字用のフォントについてです。


標準設定では,日本語用のフォントが「MS 明朝」,英数字用のフォントが「Century」になっています。

この設定では,和文と欧文でフォントデザインがまったく異なるため,見栄えがすごく悪くなります。

もちろん実際にDTPで組むときにはテキストデータとして使用するだけなので,問題ないといえば問題ないのですが,できればきれいな原稿でイメージしたいものです。

そこで,「英数字用のフォント」を「MS P明朝」にしましょう。



「P」は「プロポーショナル」の意味です。

つまり,「MS 明朝」が等幅フォントであるのに対して,「MS P明朝」はプロポーショナルフォントになります。

実際のDTPでも和文は等幅,英数字はプロポーショナルになります。

このような設定にしておけば,同じデザインのフォントで和文が等幅,英数字がプロポーショナルとなり,実際に近い原稿が作成できます。

公立高校入試が始まる

公立高校入試が始まりました。

21年度から始まった移行措置がどのように扱われるかが,理科としては1つの焦点でしょう。

インターネット上でも入試問題が公開され始めており,東京新聞のWEBサイトでは,埼玉,神奈川,東京,千葉の4県の入試問題が公開されています。

http://www.tokyo-np.co.jp/k-shiken/index.html

神奈川は残念ながら,移行措置は扱われていませんでしたが,埼玉や千葉では大きく扱われています。

残りの県の入試も楽しみです。

2010年2月25日木曜日

マグニチュード

『マグニチュードが1大きくなると,エネルギーが約32倍大きくなる』と,教科書では記されています。

ただし,大日本図書の教科書では“約”の字が入っていません。

マグニチュードが1大きくなると,正確には10√10倍=31.622…倍,エネルギーが大きくなります。

そのため,忘れずに“約”をつけなければなりません。

しかし,マグニチュードが2大きくなったときは,エネルギーは1000倍大きくなり,“約”は必要ありません。


Wikipediaには,次のように記されています。

『地震が発するエネルギーの大きさをE(単位:J(ジュール))、マグニチュードをMとすると

  log10E = 4.8 + 1.5M

という関係がある。』


これに,数値を当てはめて計算していくと,

 M4のとき,E=6.3095734448×1010
 M5のとき,E=1.995262314969×1012
 M6のとき,E=6.3095734448020×1014

となり,マグニチュードが2大きくなると,エネルギーが1000倍になることがわかります。

軽く知っておくとよいかもしれません。

2010年2月24日水曜日

Wordで原稿執筆01:ページ設定

最近は,MS Wordで原稿を執筆することも増えていると思います。

原稿で最も重要なことは内容であることは覆りませんが,それでもきれいな原稿をWordで仕上げることができたらちょっとうれしいかもしれません。

ただし,最初に注意しておきたいのは,どれだけきれいな原稿をWordでつくっても,そのデータはテキストデータとして用いられるだけで,結局はInDesign等のDTPソフト等で組みなおされます。

そのため,Wordできれいに仕上げることに気をとられ,内容がおろそかになってしまっては元も子もありません。

それを踏まえたうえで,もしWordできれいに原稿を執筆することに興味がある方がいたら,ちょっと挑戦してみてください。


というわけで,今回から少しずつ,Wordで原稿をきれいに書く方法を記していきたいと思います。


なお,現在最も多くの方が使われているであろうWord2003が自宅にはなく,Word2000とWord2007しかありません。

しかし,Word2000はWord2003と操作方法が近いので,Word2000をベースに説明いたします。


まず,第1回として,まずは級数とポイントの換算からです。

Wordでページ設定をする際に,実際の版面と字詰め行数に近づければ,実際の仕上がりに近い原稿ができ上がります。

そのとき,Wordの文字サイズの単位はptですが,実際の仕上がりの単位は級を用いることが多いことです。

1ptは1/72インチで,1インチ=25.4mm,つまり1pt=約0.353mmとなり,きれに割り切れる数値になりません。

そのため,完全に同じ版面と字詰め行数にあわせたページ設定はできませんが,この値をもとに,実際の紙面に近づけることは可能です。

では,仮にA4判で,14級24歯,50文字×44行,天15mm,地23.5mm,ノド20mm,小口15mmという紙面設定の場合を想定してページ設定をしてみましょう。

まず,1級をptに換算すると,1級=0.25mmなので,1級あたりのptをx〔pt〕とすると,

  0.25〔mm〕:0.353〔mm〕=x〔pt〕:1〔pt〕
                x≒0.708

となります。

つまり,14級≒9.9pt,24歯=17.0pt となります。

この値をもとに,版面のサイズを計算すると,

  9.9〔pt〕×50〔W〕×0.353〔mm〕≒174.7〔mm〕
  (17.0〔pt〕×43〔L〕+9.9〔pt〕)×0.353〔mm〕≒261.5〔mm〕

となります。

このとき,天・地・ノド・小口を完全に同じ値で設定することはできませんので,どちらかのみをそろえることとします。

たとえば,天と小口を実際の値とそろえたときの,地とノドのサイズは,

  地……297-261.5-15=20.5〔mm〕   (297mmはA4判縦のサイズ)
  ノド…210-174.7-15=20.3〔mm〕   (210mmはA4判横のサイズ)

となります。

これらの値を用いて,ページ設定をしてみましょう。


まず,文字サイズが9.9ptですので,「フォント」で文字サイズを設定しておきます。
ただし,9.9ptは設定できないので,10ptで設定します。



次に,「ページ設定」の「余白」設定で,先の数値を当てはめてみます。
このとき,「見開きページ」にチェックを入れます。



続いて,「ページ設定」の「文字数と行数」で,「文字数と行数を設定する」をチェックし,50W×44Lにします。



すると,字送りが9.9pt,行送りが16.8ptに自動設定され,実際の紙面に近づきました。

値がピッタリ一致しないのは,単位換算のときにきれいに割り切れないために,概数にしてしまっているからです。

なので,若干微調整しまてみましょう。

下の余白の値を18.5mmにすると,行送りが16.95ptになりましたので,行送りが実際の値に近くなりました。





いかがでしょうか。この程度までそろえられれば,実際の仕上がりをイメージした原稿が書き始められそうです。

2010年2月23日火曜日

吸収

2分野の2年生の内容,消化と吸収のところについて,今回は記しておきます。

消化によってできたブドウ糖やアミノ酸,脂肪酸,グリセリンなどが体内に取り込まれるときの表現は,例えば東京書籍の教科書では,次のようになっています。

『ブドウ糖とアミノ酸は,柔毛で吸収されて,毛細血管に入る。』
『脂肪酸とグリセリンは,柔毛で吸収されたのち,再び脂肪酸になってリンパ管に入る』

ここで気にして欲しいのが,

『柔毛で“吸収”されて,毛細血管に“入る”』
『柔毛で“吸収”されたのち,再び脂肪酸になってリンパ管に“入る”』

というように,“吸収”と“入る”が使い分けられていることです。


「吸収」は,大日本図書の教科書では,

『消化された養分が消化管の中から体内にとり入れられること』

と定義されています。


また,岩波生物学辞典では,

『消化管壁からの栄養素のとりいれ』

と定義されています。


このことより,消化管である小腸の壁,つまり小腸の表面の柔毛からブドウ糖,アミノ酸,脂肪酸,グリセリンなどの栄養分が,体内に取り入れられることを「吸収」と呼ぶということが分かります。

対して,毛細血管やリンパ管は消化管壁ではないので吸収ではありません。
だから「入る」という表現を使っているのだと思います。

教材を見比べていると,毛細血管やリンパ管に入ることも「吸収」と言っているものをときどき見かけます。

教科書も使い分けていますので,注意したほうがよいでしょう。

2010年2月21日日曜日

しばらく公開

いろいろな中学校教材を見比べていると,科学的に微妙に感じるものが意外と多いことに気づきます。

もちろん各教材において,そのような部分はほんの一部であり,使用している人はほとんど気づかないだろうと思われるものばかりです。

しかし,高校教材を編集している人や高校の先生などが中学教材を見ると,私と同じように感じる方は多くいるかもしれません。


高校教材では,執筆・編集・校正する人が,それぞれ物理・化学・生物・地学などの分野ごとの専門性が強いため,科学的な正確性も比較的高くなります。

対して小学校や中学校教材になると,物理・化学・生物・地学の4分野をまとめて同じ執筆者や編集者,校正者が制作することが多くなります。

そのためだと思いますが,専門性に乏しい分野などで,若干の科学的誤差が生まれてしまうのでしょう。しょうがないことかもしれません。

そういう私も専門家ではないため,分からないこと,知らないことなどまだまだたくさんあり,科学的に完璧なものを作るというのは,かなり高いハードルです。


このブログを始めたきっかけの中にも,そのような科学的な疑問などを少しずつでも解決して,少しでも科学的に正確な教材作りをしていきたいといった意図が少なからずあったからです。



理科は,実際に見たり触ったり実験したりすることが重要視されます。

しかし実際は,教材等の紙面上だけで勉強を終えてしまっている内容があるのも現実でしょう。

そんなとき,児童・生徒が科学的に少し誤った内容の教材で勉強してしまい,その知識のまま大人になってしまったら,図書教材制作に携わる立場としても,申し訳が立たないなという気持ちがときどきわきます。


そう思うと,使用する児童・生徒が使用しているときは気づかなくても,教材を提供する立場として,少しでも科学的誤解のないようなものを作っておきたいものです。

そのように思い,仕事で長くお付き合いのある一部の方への公開からこのブログを始めました。


しかし児童・生徒のことを考えたら,もっとそのような知識を広めて,科学的誤解のない教材が多くの児童・生徒の手に渡ったほうがよいのではと最近は思っております。


そのようなわけで,試しにしばらくブログを公開してみることにしました。

マツカサの位置

マツの図版において,マツカサ(2年前に受粉した雌花)と前年に受粉した雌花の位置関係が気になります。

東書の2分野上の教科書の図や写真が分かりやすいので,それをご覧ください。

前年に受粉した雌花の上には雄花があります。

その少し上のほうに雌花があります。

つまり,前年に受粉した雌花と新しい雌花は,距離的な間隔が少しあります。

同じように,マツカサ(2年前に受粉した雌花)と前年に受粉した雌花も1年の間隔があるので,ある程度の距離的な間隔が必要です。

しかし,前年に受粉した雌花とマツカサの距離的な間隔がほとんどない図版をちらほらみかけます。

マツの種類等によっていろいろあるのかもしれません。

実際に私も,じっくりマツを見ながらこのブログを書いているわけではないので,自信はありません。

しかし,普通に考えれば,距離が離れていると思うのです。

今度マツを見る機会があれば,忘れずに見ておきたいと思いますが,頭の片隅にでも入れておいていただくとよいかと思います。

カマキリの卵

梅の花の季節です。

昨日は,梅の花を見に,近くの公園に出かけていました。

2月も半ばを過ぎると,春の訪れをいろいろと感じます。


さて,そんな中,カマキリの卵を偶然見つけました。


中学では出てきませんが,小学校ではカマキリの卵の写真を教材で使用することがあります。

というわけで,写真におさめてみました。



教材で使えそうな対象を見つけたら,このように写真におさめておくとよいかと思います。


なお,梅の花やモクレンのつぼみ,アセビのつぼみなどいくつか気になったものを撮っておきましたが,あまり使用する機会はないでしょうね…。

三日月

平成21年度の移行措置から,中学3年生で「月の運動と見え方」が加わりました。

月の見え方をやるのであれば,「三日月」という用語も出てきます。

ところで,三日月って何でしょうか。


Wikipediaでは次のように記されています。

『陰暦3日の夜の月。ここで言う陰暦とは、朔を1日とする暦、つまり、中国暦・和暦など太陰太陽暦を含む太陰暦のほぼ全てである。』


また,

『広義には(特に陰暦を使わなくなった現代では)、厳密に陰暦3日の月だけでなく、新月と上弦の間の広い範囲の月相を三日月と呼ぶことも多い。』

とも記されています。


前者の意味では,現在教材等の問題で作成されていて「三日月」を解答としているものの多くは不正確であると考えられます。

しかし,後者の意味で考えれば,不正確とはいえないことになります。


いずれにしても,中学の理科においては,月がどのように動いてどのように見えるかという科学的見地を理解させることが重要です。

コラム的に歴史的な意味合いでの名称を知るのもよいですが,まずは後者の考えで三日月を知っておくということでよいかと思います。


ですが,今回の主眼はそこではありません。

私が気になるのは,図版を起こす際の三日月の形です。

新月と上弦の月のちょうど中間の月を三日月として示すことが多いと思います。

このとき,実際に見える月の形よりも太く,上弦の月の2~3日前くらいの月で描かれているものをよく見かけます。

例えば,以下は,NASAのサイトにある三日月の写真です。
(金星もいっしょに写っています)
http://apod.nasa.gov/apod/ap090306.html

実際はこれくらいの細さです。

意外と細いといった印象を受けませんか。

2010年2月20日土曜日

奄美諸島が奄美群島に

国土地理院が,地図などでの「奄美諸島」の表記を,「奄美群島」に変えていくと発表しました。

「国土地理院」サイト
http://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/kihonjohochousa60003.html

現地で使用されている呼称を尊重した変更だとのことです。


さて,これが理科とどのように関わってくるかというと,台風などと絡めたときに,影響が出なくもないといったところでしょうか。


たとえば,「奄美群島近辺で発生した熱帯低気圧が台風に…」といった感じでしょうか。

特に県版テストなどで,沖縄や九州の各県を扱うときに,そのような表現をする機会があるかもしれません。

知っておいて損はないかと思います。

112番元素コペルニシウム

112番元素が「コペルニシウム」と命名され,元素記号は「Cn」となることが公式決定したようです。


詳細は,以下のasahi.comよりご覧ください。

「ahahi.com」
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100220k0000e040017000c.html?inb=ra


また,あわせて国際純正および応用化学連合(IUPAC)のサイトでも発表がされていました。

「IUPAC」
http://www.iupac.org/web/nt/2010-02-20_112_Copernicium


今後,教科書等も修正されていくと思われます。


もちろん,現在の教材の多くは,教科書と同様に,111番元素まで示されたものになっていると思われます。

教材の改訂の際には,周期表修正を忘れずにしたいものです。


また,公式認定されていない118番元素までを掲載している周期表も,一部でみかけます。

そのような周期表では,112番元素が「ウンウンビウム」と示されていると思います。

もしそちらも仕事で接する機会があれば,修正を忘れずにしたいものです。

2010年2月18日木曜日

再結晶

今回は再結晶について,教科書や辞典を見比べてみます。

再結晶という用語についてときどき分からなくなるのが,水に溶けている溶質を,溶媒を蒸発させて取り出す操作も含んでいるのかということです。

それでは,教科書を見比べてみましょう。


まず中学校からです。


東京書籍
『固体の物質をいったん水にとかし,溶解度の差を利用して,再び結晶として取り出すこと』

蒸発を含んでいるようには読み取れません。

しかし,水を蒸発させることで水の量が減れば,溶けることのできる溶質の量が減るので,溶解度の差を利用しているともいえなくもありません。


啓林館
『物質をいったん水などの溶媒にとかし,温度を下げたり溶媒を蒸発させたりしてふたたび結晶としてとり出す操作』

明らかに蒸発させる操作も含めて再結晶と言っています。


大日本図書
『実験6のように,一度溶かした物質を再び結晶としてとり出すこと』

実験6では,冷却によってとり出す方法と,蒸発させてとり出す方法の2種類があるので,蒸発させる操作も含めて再結晶といっていると読み取れます。


では,高校の教科書です。


東京書籍
『溶媒に溶ける物質の量が温度によって変化することを利用し,目的とする物質を析出させて不純物を除く操作』

温度による溶解度の差なので,蒸発させる操作は関係ないように読み取れます。
例として示されているのも,冷却による操作だけです。


啓林館
『固体を溶媒に溶かし,溶解度の差を利用して分離,精製する方法』

例として示されているのが冷却による操作なので,蒸発による操作は関係ないように読み取れます。
また,『分離,精製する操作』と書いてあります。
蒸発による操作では,水に溶ける2種類以上の混合物からなる水溶液から特定の溶質をとり出すことはできません。
そのようのな意味でも,蒸発による操作は再結晶という言葉の中には含まれないと読み取れます。


実教出版
『不純物が混じった固体を熱水などに溶かし,冷却するとほぼ純粋な結晶をとり出すことができる。この操作を再結晶という。』

また,再結晶は『混合物から純物質を分離・精製する』方法の一つだともいっています。
蒸発による操作ではそれができません。
よって,蒸発による操作は再結晶という言葉には含まれていないと読み取れます。


続いて,辞典を見てみます。


岩波書店 理化学辞典
『…温度による溶解度の相違を利用…とか,溶媒を蒸発させて濃縮するとか,溶液に他の適当な溶媒を加えて溶解度を現象させる…』

蒸発による操作も含めています。


東京化学同人 化学辞典
『…適当な溶媒に溶解し,温度による溶解度の差や,溶液の濃縮や他の溶媒の添加などによる溶解度の減少あるいは共通イオン効果を利用し,…』

蒸発による操作は含まれていません。



多数決でいくと,

・蒸発による操作を含む(3票)
  中学大日,中学啓林,理化学辞典

・蒸発による操作を含まない(5票)
  中学東書,高校東書,高校啓林,高校実教,化学辞典

ということで,蒸発による操作は含まないとなります。

しかし,少々強引ですね。

どっちが正しいというわけではなさそうですが,私の見解としては,「不純物から純度の高い物質をとり出す」ということまで考えると,蒸発による操作は含まないとしたいところです。


正確な情報を知っている方がいらっしゃいましたら,教えていただければ幸いです。

2010年2月17日水曜日

石灰水と二酸化炭素の反応

石灰水について,あるSNSで少し話題になっていました。

中学理科の制作に携わっている方も知っておくとよい知識なので,今回は石灰水と二酸化炭素の反応について記しておきます。


中学校では,石灰水に二酸化炭素を通すと,石灰水が白く濁ることを習います。

しかし,さらに二酸化炭素を通し続けると,石灰水は透明になります。
このことを,意外と知らない方が多いようです。


石灰水に二酸化炭素を通したときに白くなるのは,炭酸カルシウムCaCO3が沈殿するからです。

このときの反応は,

  Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O

です。

しかし,さらに二酸化炭素を通し続けると,カルシウムイオンと炭酸イオンに電離して,炭酸水素カルシウムの透明な水溶液になってしまいます。

そのときの反応は,

  CaCO3+H2O+CO2⇔Ca2++2HCO3

です。

なお,この反応は可逆反応(どちらの向きにも起こる反応)です。

ブログでは可逆反応の矢印が表現できなかったので,「⇔」を用いています。


この炭酸水素カルシウムの水溶液を加熱して二酸化炭素が放出され,再び炭酸カルシウムの白色沈殿が生じます。


中学理科教材制作でも,今回のSNSでの話題のように,ときどきこの話題を耳にします。

知っておくとよいかと思います。

重さと質量

新学習指導要領で,重さと質量の違いを扱うようになりました。

重さとは測定する場所によって(重力によって)異なる値で,質量は測定する場所が変わっても同じ値です。


さて,重さと質量の違いを習うので,その単元以外でも用語の使い分けは必要でしょう。


例えば,3年生の内容で,「位置エネルギーは基準面からの高さが高いほど,また質量が大きいほど大きい」という表現が用いられます。

このとき,「質量」としていますが,「重さ」ではいけないのかどうかです。


位置エネルギー U は,質量を m ,高さを h ,重力加速度を g とすると,

  Umgh

で表されます。

つまり,地球上において変化する量は質量 m と高さ h です。

(なお,地球上においても,場所によって g はわずかに異なります)


このとき,「重さ」は mg で示されていることから,重さと質量が比例していることもわかります。

そのため,一見「重さ」でもよさそうに感じがちですが,厳密には重さと質量は異なる量です。


位置エネルギーのところでは,「質量」となるよう,お気をつけください。

2010年2月15日月曜日

半角アキ

DTPで組版をするときに,フォントを等幅送りにするのか,プロポーショナル送りにするのかという話題が,多少あると思います。

かつて学参は和文を等幅にすることが多かったのですが,最近は教科書等でも和文がプロポーショナルになっているのをときどき見かけます。

良し悪しは別として,個人的には,やはり和文は等幅,欧文はプロポーショナルにするほうが,見栄えはよいと思っています。

ただし,ある1つのフォント中の和文と欧文のデザインが完全に好みかどうかというと,必ずしもそうではなく,和文はAというフォントを,欧文はBというフォントを…というように,少しでも見栄えよく使い分けられるのならば,そうしたいとも思っています。

しかし,そこまでやる必要があるかどうかというのは,それぞれの制作物において検討したほうがよいでしょう。


さて,等幅とプロポーショナルについては,いろいろと思うところがあるので,時間があるときに取り上げたいと思います。

今回はその等幅とプロポーショナルによって,オペレーターと編集との間にときどき起こる半角アキについての相違についてです。


教材で,『・・・( ア )・・・』というような穴埋め問題をつくることがあります。

このとき,開きパーレンとアの間,およびアと閉じパーレンの間を半角アキにしたいので,「半角アキにしてください」と指示を入れて入稿します。

すると,プロポーショナルの欧文スペースが入った形で初校が上がってくることがあります。

こちらは「半角アキ」を指定しているので,全角に対して半分,つまり2分アキにして欲しいのですが,DTP世代のオペレーターさんの中には,欧文スペース(Shift+space)も半角アキと同じだと思ってしまう方もいるようです。

この相違が,近年の若いオペレーターさんとの間で起こりがちです。


現在DTPの主流だと思われるInDesignでは2分アキもできますので,丁寧に指示を入れれば間違わずに2分アキで初校が上がると思います。

そのような知識をもって組版入稿するとよいかと思います。

また,校正の際には,半角アキのほうがバランスがよいはずだと思われる部分に欧文スペースが用いられていたら,軽く指摘していただくとよいかもしれません。

内臓の位置

生命を維持するはたらきのところで,ヒトのからだの内部構造を示す図が出ることがあります。

呼吸のところでは肺が示されたり,消化と吸収のところでは,消化系をつかさどる各器官が示されたりします。

このとき,消化系のみを扱う場合の内臓の位置が,少々高い位置に描かれているときがあります。

本当ならば,肺や心臓があるはずの位置に肝臓や膵臓や胃があるのです。

ヒトの輪郭を示さなければ違和感はありませんが,ヒトの輪郭とともに口から続く食道がやたらに短く描かれていると,少々違和感が出てきます。

校正の際には,軽く指摘していただけると助かります。

修正作業としては食道を少し伸ばすだけなので,簡単に直ります。

校了後に違和感を残すよりは簡単に直るところは直しておきたいと思います。

2010年2月13日土曜日

蒸留と分留

蒸留と分留の用語の違いについて,今日は記しておこうと思います。

中学校の教科書だけを見ていると,蒸留という用語の意味があやふやになりかねないので,分留との違いを高校の教科書や辞典をもとに,まとめておきたいと思います。


さて,蒸留について,中学校の教科書ではどのように示されているかというと,次のようになっています。

・東京書籍
『液体を熱して沸騰させ,出てくる蒸気(気体)を冷やして,再び液体にして取り出すこと』

・啓林館
『液体を加熱して沸とうさせ,出てくる気体を冷やしてふたたび液体にして集める方法』

・大日本図書
『液体を加熱していったん気体にし,それをまた液体にして集める方法』

つまり,「液体を蒸発させて気体にし,それを再び液体にすることが蒸留である」というように読み取れます。


では,高校の教科書ではどうかというと,次のような表記です。

・東京書籍
『海水から純水を得る場合のように,混合物である溶液を加熱して目的とする成分を蒸発させ,再び液体にして回収し,残った溶液と分離する操作』 

・啓林館
『液体を含む混合物を熱して沸騰させ,その蒸気を冷やして液体の分離,精製を行う操作を蒸留といい,海水から水(蒸留水)を取り出すなど,沸点差の大きい混合物でよく行われる』

高校の教科書の表記では,混合物の分離も含めて蒸留であると読み取れます。

また,高校の教科書では,中学校の教科書と違って,分留についても述べられています。

・東京書籍
『沸点の異なる2種類以上の液体からなる混合物も,成分物質のわずかな沸点の差を利用して,適当な温度範囲に分けて蒸留することにより分離することができる。この操作は分留と呼ばれ…』

・啓林館
『沸点差の比較的小さい液体混合物を蒸留により適当な温度間隔で区切って分離することを特に分留(分別蒸留)といい…』

つまり,「沸点差を利用して混合物を分離する方法はすべて蒸留というが,特に沸点差の小さい混合物を分離する場合は分留と呼ぶ」というように読み取れます。


では,辞典を調べてみます。

岩波書店の理化学辞典では,蒸留を次のように述べています。

『溶液を部分蒸発させ蒸気を回収して残留液と分離する操作』

なお,分留については記されていませんでした。


東京化学同人の化学辞典では,次のように述べています。

『液体混合物の成分分離を行う操作』

なお,分留については,「分別」の項でまとめられており,「分別」とは次のような意味であると述べられています。

『性質の似たいくつかの物質(または成分)から成る混合物を,それらの物質の物理的・化学的性質のわずかな差を利用して,それぞれの物質(または成分)に分離する操作』


以上より,啓林館の高校教科書で分留を「分別蒸留」と括弧で示しているように,分留とは,蒸留の中の一部であり,かつ分別の中の一部であるということが読み取れます。

中学の教科書だけ見ると,あくまで「液体を蒸発させて気体にし,それを再び液体にすることが蒸留である」と読み取れなくもないですが,蒸留という用語には,混合物を分離するという意味も含まれているということが,高校の教科書や辞典から分かります。


なお,中学校の教科書も,その部分だけを見ると誤解しがちですが,

・東京書籍
『沸点のちがう液体どうしの混合物は,蒸留を利用して,それぞれの物質に分けることができる』

・啓林館
『蒸留を利用すると,混合物中の物質の沸点のちがいにより,物質を分離することができる』

・大日本図書
『蒸留を利用すると,いろいろな液体の混ざった物質から,沸点の違いによってそれぞれの液体を分けてとり出せる』

というように,もちろん混合物の分離まで含めて,蒸留の話は展開されています。


理科の本質は用語を覚えることではないと思っているので些細なことかもしれません。

しかし,教材を編集している私が中学校の教科書をじっくり読んでいると,このような表現だと若干誤解して意味を読み取ってしまいそうになります。

2010年2月11日木曜日

モノコードとオシロスコープ

音の周波数を視覚的に見るために,オシロスコープを用います。

そのときの音を出すのに用いられるのは,主に音叉です。

しかし教科書では,音を出す道具として,音叉のほかにモノコードも出てきます。

でも必ず,入試や模試,テストなどにおけるオシロスコープでの測定での設定では,音叉が用いられてます。

これにはしっかりとした理由があります。

それは,モノコードによる音の波形が,音叉による音の波形に比べて,規則正しく出ないためです。


ためしに,フリーソフトを使用して,どのような波形になるか見てみましょう。

といっても,音叉もモノコードもないので,輪ゴムを用いてつくった簡易モノコードで測定しました。



このように,よく入試や模試,テストなどで見かけるきれいな波形は,モノコードでは表現できません。

そのため,音叉が用いられているのだと思われます。

作問をする際は,このような事実も知った上で,条件設定をしなければなりません。

2010年2月9日火曜日

放水曲線

新学習指導要領では,水圧が扱われることになりました。

それにともない,平成21年度から移行措置でも水圧が扱われ始めました。

その水圧のところで,穴を空けた円柱に水を入れたときのようすを,図版で表現することが出てきました。

そんなとき,いかにその図版を正確に描くかが問われるようになりました。


まずは,基本を押さえておきます。

円柱から放出される水は,落下運動を行っています。

水平方向には等速で運動し,垂直方向には自由落下運動をしています。

つまり,作図をするときに問題となるのは,垂直方向の運動です。
(水平方向は等速なので問題ありません。)

自由落下する運動は,初速が0,加速度が g のとき,t 秒後の移動距離 y は,次のように示されます。

  y = 1/2 gt ^2

つまり,二次関数を示しますので,そのグラフは放物線を描きます。

よって,放水曲線も放物線になるわけです。


また,水圧は深さに比例する(10mごとに1気圧大きくなる)ので,深さによって放水曲線を描く場合も,それを考慮しなければなりません。


たとえば,等間隔に4箇所穴を空けた円柱に水を入れたときを考えましょう。

そのときの放水曲線は下向きの放物線を描くので,仮に一番上の穴から出る水の放水曲線を次の式とします。

  一番上の穴 y = - x ^2

水圧は深さに比例するので,水深が深くなるほど水の出る勢いは強くなります。

よって,一番上の穴から出る水の放水曲線を上式で表した場合は,上から2つ目の穴,3つ目の穴,4つ目の穴から出る水の放水曲線は,次の式で表すことができます。

  2つ目の穴 y = - 1/2 x ^2

  3つ目の穴 y = - 1/4 x ^2

  4つ目の穴 y = - 1/8 x ^2

これをグラフに表してみましょう。

何を使って表すかというと,Excelです。

Excelも使いこなせれば,いろいろとできるソフトです。

次の図が,Excelで作図したものです。




どのように作図したかというと,

・A列に -15~15 の x 軸の値を入れます。
・B列からE列に上記4式とA列との計算式を入れます。
 (もちろん y 切片が異なるので,それを考慮します。)
 たとえば,セルB2は,「=-1/8*A2^2-15」という式が入っています。
・これらをグラフウィザードでグラフ化します。

入力したのが,次の図です。




そして,できた図をWordで加工して,円柱から水が出るようすの図を作成してみました。



これをもとにイラストレーターさんに作図してもらえば,それなりの放水曲線の図ができると思います。

2010年2月8日月曜日

電流計と電圧計の目盛り

直流電流計と直流電圧計の図は,理科教材では多々見かけると思います。

しかし,その図の目盛りを見ると,意外といいかげんなものをときどきみかけます。


教科書で用いられている直流電流計の目盛りは,-5から5まであり,大きい目盛りは1刻みです。

つまり,大きい目盛りの数は7つということになります。


対して電圧計は,-5から15まであり,大きい目盛りは5刻みです。

つまり,大きい目盛りの数は5つということになります。


些細なことですが,気になります。

また,回路が閉じていないときは電流が流れていないので,目盛りも0を示してあるべきです。


このような微妙なことも,せっかく作るのであれば,正しくつくりたいものです。

スズメバチ

小学校理科内容の話ですが,知っておくとよいかと思いますので,話題に上げます。

中学入試では,動物の口の形と食べ物との関係を問う問題が出題されます。


多くの動物は口の形からだいたいどのようなものを食べるか分かると思うのですが,スズメバチは微妙なのです。

スズメバチの口から想像すると,肉食動物で,他の昆虫等を食べるように考えてしまいがちです。

しかしスズメバチは,幼虫のときは,成虫が捕まえてきた他の昆虫を食べるようですが,成虫になると肉食ではなくなりるようです。

何を食べているかというと,Wikipedeiaの情報では,終齢幼虫の唾液腺から分泌される栄養液だそうです。

また,幼虫が成長しきる前は,糖質を含む花蜜や樹液なども吸っているようです。

いずれにしても成虫は肉食ではないようなので,問題を作成する際や校正する際は注意が必要でしょう。

なぜ小学校教師は「理科嫌い」なのか【産経ニュース】

一つ前の話の続きですが,同じく総合初等教育研究所の研究発表に関する記事で,『なぜ小学校教師は「理科嫌い」なのか』というのがありました。

http://sankei.jp.msn.com/life/education/100205/edc1002052130007-n1.htm

この記事の最後に,『教科書についても「理科指導を得意とする玄人好みの作りで、実験上の安全対策の記述も薄い。』と書かれています。

確かに,小学校の教科書は文章も少なく,子どもたちが教科書を読んで理解できたり,先生方が教科書だけで指導をするのは難しいかと思います。

ただし,先生のためには指導書もありますし,それも不十分だと思う先生は,自分で調べたらよいのではないかと私は思います。

先生方が理科だけに時間をとれるわけでもなく,すごい大変な仕事だということは十分にわかってはいます。

しかしそれでも,科学に対する興味を自分から持っていただいて,少しでも子どもたちに科学の面白さを伝えて欲しいと思うのは理系出身者だからでしょうか。


また,この記事から教材制作をする立場として思うのは,今は子どもたちだけでなく先生方も理科に興味をもっていただけるようにしなければならないのだということです。

そうすることで,科学好きになる可能性のある子供を少しでも多くすることができればと思います。

科学用語が苦手な小学生【産経ニュース】

「科学用語が苦手な小学生」という記事がありました。

詳細は以下のURLよりご覧ください。

http://sankei.jp.msn.com/life/education/100205/edc1002052048006-n1.htm

同記事では,『正答率の低い項目は「実験や観察の体験不足」や「科学用語や概念そのものの習得不足」に関係していた。』と述べています。

最近よくブログに書いていることに少し共通しますが,教材自身も結局は紙面上での理科ですので,本当の意味での理科は教えることができません。

教材を制作する立場として,少しでもそのギャップを埋められるようになれればと,このような記事を読むとよく感じてしまいます。

2010年2月5日金曜日

成長点

かつて,根の先端で細胞分裂がさかんなところを,成長点と言っていました。

いまでも教材の一部には,成長点と記し続けているものがあります。

しかし現在の中学・高校の教科書では,成長点という言葉を見かけません。

中学校の教科書では「根の先端付近で細胞分裂がさかんに行われる」といった表現にとどまり,その部分の用語は示されていません。

対して高校の教科書では,根端分裂組織と示しています。

なお,根の先端の細胞分裂がさかんに起こっているところを根端分裂組織と示しているのに対して,茎の先端の細胞分裂がさかんに起こっているところを茎頂分裂組織と示しています。

また,根端分裂組織と茎頂分裂組織を合わせて,頂端分裂組織とも示されています。


このように,最近は成長点という言葉を使用しなくなっているのですが,教材ではいまだに成長点という言葉を見かけます。

もう少し,時代にあった用語を使うことに意識を向けることも大事かと思います。

2010年2月3日水曜日

震源距離と震度

先日の地震の話題に続けて,間違いやすい地震の内容についてです。

震源距離と初期微動継続時間は,大森公式 dkT からも比例していることがわかります。

この事実をもとに,2地点の地震計の記録を読み取って,地震の発生した時刻を求めたり,震源距離を求めたりといった問題が出題されます。

しかし,震度と震源距離は,必ずしも比例するとは限りません。

いっぱんに,小規模的な震度と震源距離の関係をみると,震源距離が遠いほうが震度が小さく,震源距離が近いほうが震度が大きくなります。

ただし,それは必ず比例しているというわけではなく,震源距離が近くても震度が小さかったり,震源距離が遠くても震度が大きかったりすることもあります。

それは,地震計が置かれた環境であったり,地盤のかたさであったりといった,地震そのもの以外のものが震度には影響するからです。

そのため,震源距離と震度の関係を用いた問題というのは,正確には答えられない(正しくない)ということになります。

いっけん正しそうにみえてしまうため校正漏れしそうになりますので,注意が必要です。

2010年2月2日火曜日

P波とS波

P波とS波が伝わる速度を求める問題がときどき出題されます。

実際の地震によるデータを用いた問題であればよいのですが,ときどき架空の地震を想定したオリジナルデータを用いて問題が作られることもあります。

そんなとき注意したいのが,P波とS波の伝わる速度です。

物理的に起こっている縦波(P波)と横波(S波)なので,起こりえない速度であってはいけません。

いっぱんに,地表付近の岩石中を伝わるP波の速度は5~7km/s,S波の速度は3~4km/sと教科書には記されています。

なお,この「地表付近」というところが重要で,深くなると速度が変わるので注意が必要です。

また,P波は固体・液体・気体中を伝わりますが,S波は固体中しか伝わりません。

そのため,液体である外核にはS波は伝わりませんし,固体のマントルから液体の外核に変わることでP波の速度も変わり,速度が遅くなります。

これがモホロビチッチ不連続面です。中学では扱いませんが,このような変化が起こるので仮想設定をする際は注意が必要ですし,できればというか基本的には無理な仮想設定はしないほうがよいでしょう。

また,マントル中であっても,先にも述べましたように深いほど波の伝わる速度が速くなるので,震源地と観測地点が極端に遠いような問題設定には無理が生じやすいので,気をつけましょう。

といっても,中学では日本近辺のみでの設定しか用いないと思うので,そこまで気にする必要はありませんが…。

なお,震央距離が100~600km程度の地震に対しては,初期微動継続時間〔s〕と震源までの距離d〔km〕の間には,dkT (ただし,k は比例定数で,いっぱんに k=6~8km/s)の関係があります。

これを大森公式といいますが,校正での条件設定確認等で用いることができるので,知っておくとよいかと思います。