今回は再結晶について,教科書や辞典を見比べてみます。
再結晶という用語についてときどき分からなくなるのが,水に溶けている溶質を,溶媒を蒸発させて取り出す操作も含んでいるのかということです。
それでは,教科書を見比べてみましょう。
まず中学校からです。
東京書籍
『固体の物質をいったん水にとかし,溶解度の差を利用して,再び結晶として取り出すこと』
蒸発を含んでいるようには読み取れません。
しかし,水を蒸発させることで水の量が減れば,溶けることのできる溶質の量が減るので,溶解度の差を利用しているともいえなくもありません。
啓林館
『物質をいったん水などの溶媒にとかし,温度を下げたり溶媒を蒸発させたりしてふたたび結晶としてとり出す操作』
明らかに蒸発させる操作も含めて再結晶と言っています。
大日本図書
『実験6のように,一度溶かした物質を再び結晶としてとり出すこと』
実験6では,冷却によってとり出す方法と,蒸発させてとり出す方法の2種類があるので,蒸発させる操作も含めて再結晶といっていると読み取れます。
では,高校の教科書です。
東京書籍
『溶媒に溶ける物質の量が温度によって変化することを利用し,目的とする物質を析出させて不純物を除く操作』
温度による溶解度の差なので,蒸発させる操作は関係ないように読み取れます。
例として示されているのも,冷却による操作だけです。
啓林館
『固体を溶媒に溶かし,溶解度の差を利用して分離,精製する方法』
例として示されているのが冷却による操作なので,蒸発による操作は関係ないように読み取れます。
また,『分離,精製する操作』と書いてあります。
蒸発による操作では,水に溶ける2種類以上の混合物からなる水溶液から特定の溶質をとり出すことはできません。
そのようのな意味でも,蒸発による操作は再結晶という言葉の中には含まれないと読み取れます。
実教出版
『不純物が混じった固体を熱水などに溶かし,冷却するとほぼ純粋な結晶をとり出すことができる。この操作を再結晶という。』
また,再結晶は『混合物から純物質を分離・精製する』方法の一つだともいっています。
蒸発による操作ではそれができません。
よって,蒸発による操作は再結晶という言葉には含まれていないと読み取れます。
続いて,辞典を見てみます。
岩波書店 理化学辞典
『…温度による溶解度の相違を利用…とか,溶媒を蒸発させて濃縮するとか,溶液に他の適当な溶媒を加えて溶解度を現象させる…』
蒸発による操作も含めています。
東京化学同人 化学辞典
『…適当な溶媒に溶解し,温度による溶解度の差や,溶液の濃縮や他の溶媒の添加などによる溶解度の減少あるいは共通イオン効果を利用し,…』
蒸発による操作は含まれていません。
多数決でいくと,
・蒸発による操作を含む(3票)
中学大日,中学啓林,理化学辞典
・蒸発による操作を含まない(5票)
中学東書,高校東書,高校啓林,高校実教,化学辞典
ということで,蒸発による操作は含まないとなります。
しかし,少々強引ですね。
どっちが正しいというわけではなさそうですが,私の見解としては,「不純物から純度の高い物質をとり出す」ということまで考えると,蒸発による操作は含まないとしたいところです。
正確な情報を知っている方がいらっしゃいましたら,教えていただければ幸いです。